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西国編

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 「ちーがーうー!あたしも外の世界を見たいのだ。だから…その…いい加減分かるのだ!」

 ま、そんな流れになるだろうとは思ってたけどな。

 「条件がいくつかある。俺の仲間は眷属だろうが人間だろうがエルフだろうがドワーフだろうが魔物だろうが一切上下関係はない。みんな平等な仲間だ。お前が精霊王の一人だからと言って特別な存在では無い事を理解しろ。」

 「うん。大丈夫!分かったのだ!」

 「それから、お前の分身体をここに置き、ダンジョンマスターとしての仕事を継続させろ。出来ればここに入る冒険者にとって有益となるダンジョンが望ましいがな。」

 「それは…努力するのだ…」

 なんでそこは自信無さげなんだよ…

 「そして最後に。俺は何かと戦いに巻き込まれる運命にあるらしい。俺の眷属となるなら当然お前も戦いの中に身を置く事になるだろう。その覚悟があるなら共に行こう。」

 「! わかったのだ!この大地の精霊王の力、存分に使うのがいいのだ!」

 キラッキラの瞳で見上げられると脊髄反射で頭にポンと手を置いてしまう。そしてしゃがんで目線の高さを同じくし…

 「今からお前の名前は『スプライト』だ。俺と眷属契約しろ、スプライト。」

 『スプライト』ってのは確か小さな妖精とか、そんな意味があった気がする。こいつは妖精どころか精霊王なんだけどイメージはピッタリじゃないかな?

 そう言って頭に置いた掌からゆっくりと魔力を流してやる。

 「ふわぁ~…あの二人が言ってた通りなのだ…こんな心地いい魔力は初めてなのだ…」

 そう言ってスプライトはうっとりと目を閉じる。

 「我が名はスプライト。カズトを我があるじと認めるのだ。あるじ、これからよろしくなのだ!」

 「ああ。こっちこそよろしくな。」

 さて、これでこのダンジョンでする事も無くなったな。

 「早速だけどスプライト。分身体作ってそっちにダンジョンの管理者権限を委譲してくれ。俺達はこれからでっかい喧嘩があるんだ。あんまりのんびりもしていられない。」

 「わかったのだ!分身を生み出すからちょっと向こうを向いて欲しいのだ!」

 たしか前にもあった気がするが、精霊王は分身を生み出す姿を見せたがらないんだよな。そのくせ何とも艶のある息遣いをするんだよ。

 「はぁ~、終わったのだ。もうこっちを向いてもいいのだ?」

 許可が下りたので振り返ってみると、ガイアのおっちゃんを小さくしたような妖精っぽいものがいた。その妖精っぽいものは俺達にペコリと頭を下げ、奥へと行ってしまった。恐らく向かった先にダンジョンコアがあるのだろう。

 「これでこのダンジョンの事は大丈夫なのだ。早速外の世界へれっつごーなのだー!」

◇◇◇

 「主よ。また途轍もないお方が眷属に加わった様なのですが?」
 「ご主人様は本当に規格外ですね。」
 「ごしゅじんさまー、またつよいおともだちふえたー?」

 ダンジョンをでて暫く街道を進み、人気の無いところで留守番をさせていたラングラー、チェロキー、スタリオンを呼び出す。で、この反応だ。今のスプライトは褐色の肌に茶褐色のふわっとしたウェーブが掛かった短めの髪。くりっとした瞳のなかなかの美少女の姿をしている。麦わら帽子が似合いそうな南国系元気娘だな。同じ褐色の肌でもしっとりした感じのビートとはまた違う雰囲気だ。

 「あるじはユニコーンやバイコーン、地竜までも眷属にしてる? 想像以上に凄い主なのだ!」

 「そこのフェンリルのエスプリはライムの眷属だが、それ以外は俺の眷属だよ。」

 「ふ~ん?そうなのかー。みんな、よろしくなのだ!大地の精霊王、ノーミードのスプライトなのだ!」

 これが切っ掛けでお互いに自己紹介が始まる。テルのリッケン、ユキのバッカーも顕現してなかなかに賑やかだ。天真爛漫と言える性格で、見た目も言動もほぼ10歳児くらいのスプライトはみんなに馴染むのも早く、マスコット的な可愛がられ方をしている。精神年齢が近い蘭丸とは特に仲良くなりそうだ。妖艶な美女と健康優良児的な美少女の組み合わせで同じレベルの会話をしているのは酷い違和感だが。

 「ところであるじー。これからどこへ行くのだ?」

 「ん、船大工のおっちゃんに船を頼んでるんだけどな、その船を受け取ったら海峡を渡ってチンゼイに向かう。今チンゼイは異国の軍に攻められてるからな。異国の軍勢を追っ払うんだ。」

 「そうなのかー。腕が鳴るぞー。」

 「おお。期待してるぞ。頑張ったら飴玉やるからな。」

 「うわ~い!」

 すっかり飴玉が好物になっちまったな、コイツ。

 「ところでご主人様。スプライトの話ではチンゼイにはサラマンダーがいるようなのですが。」
 「サラマンダーも従えて四大精霊完全制覇でも狙うかの?」

 サラマンダーか。火の精霊王だな。う~ん……面白そうではあるんだが。

 「それは今回の目的じゃないからな。積極的に接触する事はしないと思う。まあ、次いでに、っていう状況になれば考えるけどな。」

 一応、サンタナとアクアにはそう返したが。

 「それってもうフラグ立ってるよね、かずと?」

 「ライム、お前のその一言こそがイベント発動のフラグだと思うんだよ。」

 「ええ!?」

 今日も通常運転。西国の旅路はいい天気だ。

 
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