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西国編

大地のダンジョンマスター

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 「あたしの傑作を壊したのはお前らか~!」

 強烈なプレッシャーと共に現れたちっこい娘っこが何やら激おこだ。しかしサンタナやアクアに気が付いたらしく少しばかり冷静になった様だ。だからと言って怒りが収まった訳では無いようだが。

 「……何故シルフィードとウンディーネがここにいる?その人間に力を与えたのはお前達か?」

 「ご冗談を。我々などこのお方に掛かれば塵芥のようなものですよ?」

 「そうじゃ。妾達はこのお方の眷属に過ぎぬ。」

 今までは精霊とか妖精とかいう存在は上位の者に対しては礼節を重んじるというか、あからさまに態度に出るケースが多かったが、このちっこいのがサンタナやアクアと対等に接している所を見るとこいつも精霊王の一角を占める存在なんだろうな。確かにそれを納得出来るだけの力は感じられる。そして俺を人間と侮って本当の力を見誤るのもいつも通りでちょっと笑える。

 「冗談を言うなー!あたし達は精霊の頂点に立つ存在だぞ?それが人間の眷属になっているなんて有り得るかー! そしてそこの人間!なにがおかしくて笑ってんだー!」

 やっぱりこいつは四大精霊の一人か。大地の精霊王ならノームか。いや、女の姿だとノーミードだっけ?まあとにかく、俺に対してお怒りのようだから構ってやろう。

 「まあまあ、そんなに怒るなって。ほら、飴玉やるからあ~んしてみ?」

 怒る大地の精霊王に近付いて目線を合わせて頭をポンポンしてやる。次いでにマジックポケットから飴玉を取り出すと素直に口をあ~んって開けたんで飴玉を放り込んだ。

 「あ~ん…わあい!おいしー!…ってちーがーうー!」

 おかしい。この飴玉はあっちの世界から持って来たヤツで、こっちの世界で纏わりついてくるガキンチョ共に大好評だったんだが。

 「こらー!あたしのゴーレムナイトを壊したのはお前かー! 傑作だったんだぞ!? オリハルコンを加工するの、大変だったんだぞー!?」

 「あー、うん。確かに壊したのは俺達だ。それにしても、見事な造形だったな。壊すのが勿体無かったくらいだ。」

 「えへへ~、そうだろう?デュフフフ…そうかー、やっぱり見事だと思っただろー? ……じゃなくて!よくも壊したなー!?」

 なんかね、コイツを構うの面白くなってきた。もう少し遊んでやろう。

 「あー、いや、こっちに攻撃してきたからな。仕方なかったんだよ。飴ちゃんもう一個やるから機嫌直せって。ほら、あ~ん?」

 「わーーい!あ~ん…モグモグ。うん、美味しいな!…って違うってば!」

 「…流石カズト様ですわね…精霊王様をあのように手玉に取るとは。」
 「全くだよ。俺はあれと戦って生き残る未来は見えないな。」
 「テル…カズト殿は普通の人間ではないのだ。仕方ないのだ…」

 ビートにテルにユキ、聞こえてるぞ?特にユキな。

 「ちっくしょー、もうおこったぞー!!」

 ふむ、飴ちゃんで懐柔作戦は上手く行かなかったか。ノーミード(仮称)はついに敵意を剥き出しにして攻撃してきた。手を振ると壁や地面、天井と、至る所から自由自在に岩の槍が突き出て来る。

 「ご主人様、我らがお仕置きしましょうか?」
 「うむ、マスターの手を煩わせる程の事はないぞ?」

 「いや、サンタナ、アクア。二人は皆を頼む。俺はちょっとコイツと遊んでやるから。」

 「承知致しました。」
 「うむ、任されよ。」

 四方八方から突き出て来る岩の槍を躱して躱してひたすら躱す。なるほど、このダンジョンの中は完全にヤツの土俵だな。サンタナもアクアもダンジョンの中で戦っている時は特に地の利は無かったもんな。地属性って地味に思うけど、俺達が大地に生きる以上は地味だなんてとんでもない。地面全てがヤツの武器になっちまう。

 「うにゅ~、なかなかやるのだ!これならどうだ!」

 おっと。岩の槍に加えて今度は岩を砲弾みたいに飛ばして来た。全方向から飛んで来るオールレンジ攻撃だ。流石に弾幕が厚すぎて避けるのは難しいか。仕方ない。ちょっとだけ気合を入れてやろう。

 「な、なんなのだその魔力は!」

 何だと言われてもな。2メートルくらいの魔力の塊を生み出してノーミード(仮称)にぶん投げた。こっちに召喚されて間もなくの頃、タカミの街で300の敵兵を一瞬で殲滅した『天罰』と同じくらいの魔力を込めてみた。仮にも精霊王、死ぬ事はないだろ。

 「う、うわっ!?」

 ノーミード(仮称)は慌てて地面から分厚い壁を作り出し防御する。俺の魔力弾は壁を突き破る事は出来なかった。うん、流石だ。大したもんだ。でもな。

 「甘い。」

 魔力弾を放つと同時にダッシュしていた俺は魔力弾を防いだ壁をカラクリで切り裂いた。

 「えっ!?」

 まあな。あの爆発から自分を守った壁がまさかバターの様に切り裂かれるとは思いもしなかったんだろう。両目が零れ落ちそうなくらい目を見開いて固まっている。さて。

 「お遊びはここまでだ。」

 縮地で一瞬のうちにノーミード(仮称)の背後に回った俺はそのまま膝の上にノーミード(仮称)をうつ伏せに横たえる。うん。お察しの通り、お尻ぺんぺんだな。

 「ご主人様が直接手を下すお仕置きって物凄く痛いのです。あのでこぴんはトラウマになりました。」

 「妾も往復ビンタを食らった時は首がもげると思ったぞ。」

 ははは。懐かしいな。だが話が聞こえているノーミード(仮称)は顔面蒼白になってるっぽい。

 「せ、精霊王であるお前達がそれほどに痛いのか…?」

 「だから最初に言ったではありませんか。このお方の眷属であると。私達より弱い者の眷属になる訳などないでしょう?」

 「うむ。うぬも数発食らってみるがいいぞ?マスターの恐ろしさを身を以て知る事になるわ。」

 ビタタタターーーン!

 「ぎゃああああああ!!!」

 前触れ無しにお仕置き開始!

 
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