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西国編
さて。
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「ほっほっほ。抗うでないぞ?貴様らが騒げば帝が巻き込まれてしまうやも知れぬなぁ?」
あん?なんだこいつ?急に思い出したように勝ち誇った顔しやがって。糸目にいやらしい笑いって嵌りすぎてこっちが笑えるわ。大体、騒ぎに乗じて帝をやるつもりならもう手遅れなんだが。今頃は竜車の中でまったりしてるって。
「はっはっは。帝ならもう脱出しているんだな、これが?どうする?ん?」
ポンティアックが《は?》っていう表情で固まる。中々間抜けで面白い。スマホで写真撮っておこう。
「は、はっはは…そんな訳があるまい?帝は確かに牢の中に…」
はい、ゲロしました。
「へえ?何でまた帝が牢に入ってたんだろうな? まあそれは帝本人から聞くか。ところで、お前の手勢の1000人はどうした?随分時間が掛かるじゃないか?」
実を言うと、俺はこの部屋に案内されるまでの廊下の天井に無数のマジックミサイルを仕掛けて置いていた。この部屋に向かって来ていた兵共はすでに全滅している。反応が赤くなった奴らはロックオンしてたし、後は仕掛けたマジックミサイルがロックオンした奴らを追尾してボン!だ。一応、厩舎を押さえに行った兵共はサンタナ達に残してある。200程だ。
「うぬ?そう言えば…奴らは何をしておるのだ…」
「その扉を開いて呼んでみろよ?」
「くっ!」
ダダッと扉に向かって駆けて行ったポンティアックは扉を開いて膝から崩れ落ちた。奴が扉を開いて目にした光景は。
「ば、バカな…何だこれは…? 全滅だと…?」
折り重なるように倒れている敵兵。既に事切れている者。虫の息だがまだ生きている者。命に別状はないが動けない者。とにかく戦闘可能な者は一人もいない。文字通りの全滅だ。
「厩舎に向かった連中もいる様だが早く止めねえとそっちも全滅すんぞ?」
「貴様は…貴様は一体何なのだ!?」
「オーシューの冒険者、カズトだよ。一応、人間だ。」
みんな、そんな疑問符を頭に浮かべながら俺を見るんじゃねえ。
「ま、まさか…天罰の噂は本当だったのか…単なる噂だとばかり…」
あー、まあ、そうだよな。実際目で見なきゃ信じられない事やってる自覚はある。普通の人間にゃ無理。それに噂って奴は尾ひれがついて話100倍くらいになってる事も珍しくないもんな。
「噂でも真実でもどっちでもいい。俺はこれからお前と帝の両方から話を聞いて誰が悪いのか判断するから。お前は少し眠ってろ。」
ポンティアックの額に指弾を撃ち込み気を失わせる。こいつ、鍛え方が足りねえな。ウチの女性陣は涙目になるけど耐えるぞ?
ともかく、ポンティアックの足首を掴んで厩舎まで移動しよう。時折〈ゴツン〉とか〈ゴン〉とか音がするけど気にしない気にしない。
◇◇◇
我はマセラティ。このキナイを治める女帝であった。情けなくも獅子身中の虫に実権を奪われ幽閉されておった。オーシュー、バンドー、エツリアの東国からの名代だと言う者の手引きで牢から救い出されて厩舎に来たのだが…
風の精霊王様がいらしただけでも肝を潰したのにこの地竜に二頭の馬。それに水の精霊王様まで。これらが全てカズトという男の眷属だと言う。一体どのような人物なのか興味が湧く。そして我を牢からここまで一瞬で運んだこのテルとユキ。現状、200の兵に囲まれておるのだが一切怯えを見せぬどころか余裕すらある。おかげで我も不思議とこの窮地を乗り切れる確信のようなものがある。
「カズトさん、わざと残してたな、こりゃ。俺達にも見せ場をって心遣いか?」
「ふふふっ。そうかもな。あの御仁らしいと言うか。」
「マセラティ、侍女と共に竜車の中へ。ランとチェロは力を解放なさい。アクアは竜車に結界をお願いしますね。スタリオン、あまり建物を壊さぬようにするのですよ?」
サンタナ様の指示に従い竜車の中へと入ったのだがその時視界に入ったものは。
「なんと……ユニコーンにバイコーンだと…?」
カズトという男、兵の類は連れて来ていない様だがとんだ食わせ者のようだ。一軍に匹敵する戦力を抱えておったようだな。その気になればヘイアンの都などすぐに制圧出来るのではないだろうか?じっくりと話をしてみたいものだ。
さて、そろそろ200の兵が殺到してくる頃だな。絶望的な状況の筈が、不思議と不安はない。竜車の背後に立ち塞がるテルとユキと申す二人も頼もしいが…この内裏全体を支配しているかの様なカズトの意思のようなもののせいかのう…
あん?なんだこいつ?急に思い出したように勝ち誇った顔しやがって。糸目にいやらしい笑いって嵌りすぎてこっちが笑えるわ。大体、騒ぎに乗じて帝をやるつもりならもう手遅れなんだが。今頃は竜車の中でまったりしてるって。
「はっはっは。帝ならもう脱出しているんだな、これが?どうする?ん?」
ポンティアックが《は?》っていう表情で固まる。中々間抜けで面白い。スマホで写真撮っておこう。
「は、はっはは…そんな訳があるまい?帝は確かに牢の中に…」
はい、ゲロしました。
「へえ?何でまた帝が牢に入ってたんだろうな? まあそれは帝本人から聞くか。ところで、お前の手勢の1000人はどうした?随分時間が掛かるじゃないか?」
実を言うと、俺はこの部屋に案内されるまでの廊下の天井に無数のマジックミサイルを仕掛けて置いていた。この部屋に向かって来ていた兵共はすでに全滅している。反応が赤くなった奴らはロックオンしてたし、後は仕掛けたマジックミサイルがロックオンした奴らを追尾してボン!だ。一応、厩舎を押さえに行った兵共はサンタナ達に残してある。200程だ。
「うぬ?そう言えば…奴らは何をしておるのだ…」
「その扉を開いて呼んでみろよ?」
「くっ!」
ダダッと扉に向かって駆けて行ったポンティアックは扉を開いて膝から崩れ落ちた。奴が扉を開いて目にした光景は。
「ば、バカな…何だこれは…? 全滅だと…?」
折り重なるように倒れている敵兵。既に事切れている者。虫の息だがまだ生きている者。命に別状はないが動けない者。とにかく戦闘可能な者は一人もいない。文字通りの全滅だ。
「厩舎に向かった連中もいる様だが早く止めねえとそっちも全滅すんぞ?」
「貴様は…貴様は一体何なのだ!?」
「オーシューの冒険者、カズトだよ。一応、人間だ。」
みんな、そんな疑問符を頭に浮かべながら俺を見るんじゃねえ。
「ま、まさか…天罰の噂は本当だったのか…単なる噂だとばかり…」
あー、まあ、そうだよな。実際目で見なきゃ信じられない事やってる自覚はある。普通の人間にゃ無理。それに噂って奴は尾ひれがついて話100倍くらいになってる事も珍しくないもんな。
「噂でも真実でもどっちでもいい。俺はこれからお前と帝の両方から話を聞いて誰が悪いのか判断するから。お前は少し眠ってろ。」
ポンティアックの額に指弾を撃ち込み気を失わせる。こいつ、鍛え方が足りねえな。ウチの女性陣は涙目になるけど耐えるぞ?
ともかく、ポンティアックの足首を掴んで厩舎まで移動しよう。時折〈ゴツン〉とか〈ゴン〉とか音がするけど気にしない気にしない。
◇◇◇
我はマセラティ。このキナイを治める女帝であった。情けなくも獅子身中の虫に実権を奪われ幽閉されておった。オーシュー、バンドー、エツリアの東国からの名代だと言う者の手引きで牢から救い出されて厩舎に来たのだが…
風の精霊王様がいらしただけでも肝を潰したのにこの地竜に二頭の馬。それに水の精霊王様まで。これらが全てカズトという男の眷属だと言う。一体どのような人物なのか興味が湧く。そして我を牢からここまで一瞬で運んだこのテルとユキ。現状、200の兵に囲まれておるのだが一切怯えを見せぬどころか余裕すらある。おかげで我も不思議とこの窮地を乗り切れる確信のようなものがある。
「カズトさん、わざと残してたな、こりゃ。俺達にも見せ場をって心遣いか?」
「ふふふっ。そうかもな。あの御仁らしいと言うか。」
「マセラティ、侍女と共に竜車の中へ。ランとチェロは力を解放なさい。アクアは竜車に結界をお願いしますね。スタリオン、あまり建物を壊さぬようにするのですよ?」
サンタナ様の指示に従い竜車の中へと入ったのだがその時視界に入ったものは。
「なんと……ユニコーンにバイコーンだと…?」
カズトという男、兵の類は連れて来ていない様だがとんだ食わせ者のようだ。一軍に匹敵する戦力を抱えておったようだな。その気になればヘイアンの都などすぐに制圧出来るのではないだろうか?じっくりと話をしてみたいものだ。
さて、そろそろ200の兵が殺到してくる頃だな。絶望的な状況の筈が、不思議と不安はない。竜車の背後に立ち塞がるテルとユキと申す二人も頼もしいが…この内裏全体を支配しているかの様なカズトの意思のようなもののせいかのう…
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