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西国編
妖狐の保護者になる
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エスプリの尻尾から出て来た金色の子狐は頭の中に話し掛けて来た。念話が出来る時点で既に普通じゃないんだけどな。
『あの決戦のあと、全ての妖気を抜き取られたこやつは霊体となって彷徨っておったらしい。そして依り代となるこの子狐に入り込み力を蓄えておった。しかし妖気を抜き取られすっかり浄化されてしまったこやつは見ての通り幼児に退行してしまったかのようでな。今のこやつは生まれたての狐狸精と言ったところだろう。』
ふうん?狐狸精ね。
『ご主人様。この子がただの狐狸精だと言うのであれば霊格はケットシーであるビートとほぼ同等、ご主人様をどうにか出来る存在ではありません。』
俺達の世界では人を化かす存在だったりお稲荷さんとして信仰の対象だったりと二極化してる気がするけど。しかも長年生きれば俺を瀕死にするくらいは強力に成長する可能性もあるんだよな。
『主の主人よ。』
「ややこしいからカズトでいい。」
『そうか、ならばカズト殿。我は何か上位の存在から啓示を受けたのだ。バンドーで彷徨っている妖狐の幼生体を探して保護し躾よ、と。そしてカズト殿に引き渡しせ、と。引き受けて貰えるか?』
何言ってんだ?十中八九、いや完全に神様の仕業だろうがなんでコイツの保護者にならにゃいかん。
「でもかずと。あの神様がここまではっきりとした行動指針を示した事ってないよね?これは絶対にこの子を連れて行かなきゃダメな流れだと思うんだ。」
そういやそうか。直接干渉してくるタイプじゃねえもんな。ただ、気になるのはこいつの反応が赤でも青でもなく、中立を示す白でもない。《紫》。謎だな。
「まあいいや。お前、悪さしねえなら連れて行くけど一緒に来るか?この怖い狼のおじさんも一緒だけどな。」
『おじさん…?フェンリルのおじさん、こわくない。あーし、いいこにする。』
『む、我はおじさんでは…と言うか、我を連れて何処ぞへと旅立つのか?』
エスプリにこれまでの経緯を掻い摘んで説明する。異国からチンゼイが侵攻を受けている事。それを受けて帝から各国へ勅令が届いている事。俺達はオーシュー、バンドー、エツリアの名代として帝に謁見する為にヘイアンまで行く事。異国の軍を駆逐するかどうかは帝の対応次第だが、一応はチンゼイ救援の為に向かうつもりである事。
『それで我を連れて行こうという訳か。確かに人間の兵を数千連れて行くよりも強大な戦力を持つメンバーではあるな。』
「そう言う事だ。ヘイアンへ行く前にジュリアとサーブ王に話を通して行くからエツリアから海岸沿いにヘイアンを目指すルートで行くから一緒に来い。」
こうして妖狐とエスプリを一行に追加してバンドー公都に到着する。最終決戦では然程被害を受けなかった公都だがここから西は壊滅状態なのでまだまだ復興にに向けて慌ただしい。あ、ちなみにバンドー皇国からバンドー公国に変わったから皇都じゃなくて公都な。
「まあ、カズト様!よくぞおいで下さいました!」
「テルさん!」
とまあ、双子のジュリアとジュリエッタが歓迎してくれるが他にもメンバーいるからな?
「…ええ、ヘイアンからは勅命ではなく援軍依頼という形で書状が届きましたが今のバンドーにはとてもそんな余力は…」
分かってる。分かってるって。だから深刻な顔すんない。
「そこで名案なんだが、テルは一応この国の貴族様だろ?テルを名代として出陣させるって事にするからなにかジュリア大公の名代の証くれ。」
「なるほど、では委任状を認めましょう。少々お待ちください。」
ジュリアがそう言うと侍女が別室からペンと紙を準備してくる。
「ですがカズト様。たったこれだけの人数で帝が納得されましょうか?もちろん今回出向く方々がそれぞれ一騎当千のつわものなのは他ならぬ私達が重々承知してはいるのですが…」
ジュリアが書状を書いている間にジュリエッタが心配そうに言う。
「うん、でも精霊王が2人、地竜にフェンリル、ケットシーにバイコーン、ユニコーン。そして全員が異世界人。この戦力で不満があるなら俺は知らん。まあ、西が異国に侵略されてバンドーやエツリア、そしてオーシューに害が及ぶようになるなら全力で撃退するがな。」
話しながら俺はかつて黒髪黒目の先住民族を守る為に戦った英雄の記憶を呼び起こされていた。
「歴史は繰り返されるのか、な…」
ぽつりとつぶやいたライムの言葉。
「何度も同じ轍は踏まねえさ。先住民族の英雄は考えが綺麗過ぎた。だが俺は守るべき奴らの為にはどんな手でも使う。」
だってカズトは英雄じゃないんだぞ。
『あの決戦のあと、全ての妖気を抜き取られたこやつは霊体となって彷徨っておったらしい。そして依り代となるこの子狐に入り込み力を蓄えておった。しかし妖気を抜き取られすっかり浄化されてしまったこやつは見ての通り幼児に退行してしまったかのようでな。今のこやつは生まれたての狐狸精と言ったところだろう。』
ふうん?狐狸精ね。
『ご主人様。この子がただの狐狸精だと言うのであれば霊格はケットシーであるビートとほぼ同等、ご主人様をどうにか出来る存在ではありません。』
俺達の世界では人を化かす存在だったりお稲荷さんとして信仰の対象だったりと二極化してる気がするけど。しかも長年生きれば俺を瀕死にするくらいは強力に成長する可能性もあるんだよな。
『主の主人よ。』
「ややこしいからカズトでいい。」
『そうか、ならばカズト殿。我は何か上位の存在から啓示を受けたのだ。バンドーで彷徨っている妖狐の幼生体を探して保護し躾よ、と。そしてカズト殿に引き渡しせ、と。引き受けて貰えるか?』
何言ってんだ?十中八九、いや完全に神様の仕業だろうがなんでコイツの保護者にならにゃいかん。
「でもかずと。あの神様がここまではっきりとした行動指針を示した事ってないよね?これは絶対にこの子を連れて行かなきゃダメな流れだと思うんだ。」
そういやそうか。直接干渉してくるタイプじゃねえもんな。ただ、気になるのはこいつの反応が赤でも青でもなく、中立を示す白でもない。《紫》。謎だな。
「まあいいや。お前、悪さしねえなら連れて行くけど一緒に来るか?この怖い狼のおじさんも一緒だけどな。」
『おじさん…?フェンリルのおじさん、こわくない。あーし、いいこにする。』
『む、我はおじさんでは…と言うか、我を連れて何処ぞへと旅立つのか?』
エスプリにこれまでの経緯を掻い摘んで説明する。異国からチンゼイが侵攻を受けている事。それを受けて帝から各国へ勅令が届いている事。俺達はオーシュー、バンドー、エツリアの名代として帝に謁見する為にヘイアンまで行く事。異国の軍を駆逐するかどうかは帝の対応次第だが、一応はチンゼイ救援の為に向かうつもりである事。
『それで我を連れて行こうという訳か。確かに人間の兵を数千連れて行くよりも強大な戦力を持つメンバーではあるな。』
「そう言う事だ。ヘイアンへ行く前にジュリアとサーブ王に話を通して行くからエツリアから海岸沿いにヘイアンを目指すルートで行くから一緒に来い。」
こうして妖狐とエスプリを一行に追加してバンドー公都に到着する。最終決戦では然程被害を受けなかった公都だがここから西は壊滅状態なのでまだまだ復興にに向けて慌ただしい。あ、ちなみにバンドー皇国からバンドー公国に変わったから皇都じゃなくて公都な。
「まあ、カズト様!よくぞおいで下さいました!」
「テルさん!」
とまあ、双子のジュリアとジュリエッタが歓迎してくれるが他にもメンバーいるからな?
「…ええ、ヘイアンからは勅命ではなく援軍依頼という形で書状が届きましたが今のバンドーにはとてもそんな余力は…」
分かってる。分かってるって。だから深刻な顔すんない。
「そこで名案なんだが、テルは一応この国の貴族様だろ?テルを名代として出陣させるって事にするからなにかジュリア大公の名代の証くれ。」
「なるほど、では委任状を認めましょう。少々お待ちください。」
ジュリアがそう言うと侍女が別室からペンと紙を準備してくる。
「ですがカズト様。たったこれだけの人数で帝が納得されましょうか?もちろん今回出向く方々がそれぞれ一騎当千のつわものなのは他ならぬ私達が重々承知してはいるのですが…」
ジュリアが書状を書いている間にジュリエッタが心配そうに言う。
「うん、でも精霊王が2人、地竜にフェンリル、ケットシーにバイコーン、ユニコーン。そして全員が異世界人。この戦力で不満があるなら俺は知らん。まあ、西が異国に侵略されてバンドーやエツリア、そしてオーシューに害が及ぶようになるなら全力で撃退するがな。」
話しながら俺はかつて黒髪黒目の先住民族を守る為に戦った英雄の記憶を呼び起こされていた。
「歴史は繰り返されるのか、な…」
ぽつりとつぶやいたライムの言葉。
「何度も同じ轍は踏まねえさ。先住民族の英雄は考えが綺麗過ぎた。だが俺は守るべき奴らの為にはどんな手でも使う。」
だってカズトは英雄じゃないんだぞ。
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