上 下
137 / 240
番外編

異世界への帰還

しおりを挟む
   「「ただいま。」」

   俺は元の世界に戻る際に神様から体内の妖気を浄化して貰った。結果魔王の様な容姿は元に戻り、セリカに召喚される直前の時間軸に戻ったようだ。戻された直後は異世界の記憶はどこか夢を見ていた様な曖昧な感じだったけど、全てが始まったあの自販機の前でライムと出会い、全てを思い出した。そして、また俺達は帰って来た。

   「カズト、ライム…」

   目の前にいたのは祈るような表情のセリカ。そしてサニー、グロリア、ローレル、ガイア。コロナさん。クノイチからはソアラ。お?爺さんに千代ちゃんもいる。ビート。サンタナとアクアも現出しているな。皆涙を浮かべていた。

   ひとりひとりハグを交わしていく。皆離れたがらないのには苦笑した。俺達からすれば離れていたのはほんの数分の感覚だ。でも。

   【魔法陣に魔力を充填するのに今回は3ヶ月掛かってしまったのじゃ。】

   【前回ご主人様を送還する際に使い果たした魔力を補填するのに時間が掛かってしまったのと…】

   【カズト様を送還した後は皆様任地に戻られましたの。まだまだバンドーも混乱していますし、長らく任地を放置も出来ないのですわ。】

   「そういう訳で、単純に人手が少なくなったというのもあるのですがね。」

   ふむ、なるほど。でもこの3か月の間の出来事も気になるけど、その前に俺達は言わなくちゃいけない事があるよな。俺はライムを引き寄せ隣に並ばせた。そして頭を下げる。

 「みんな、ありがとう。みんなのおかげで俺の体は元通りになりこうしてまたみんなと会う事ができた。今ここにいない連中にもしっかりお礼を言いに行かなくちゃならないな。」

 「うん、私からもありがとう。カズにぃが元に戻ってホントに嬉しい。みんなが力を貸してくれたおかげだよ。」

 俺達は心からの感謝の言葉を述べた。言葉にしてしまえばサラリとした感じだが、そこには大きな思いを込めたつもりだ。伝わってくれるといいんだが。

 だがセリカが静かに首を横に振りながら口を開く。

 「いいえ。カズト。それにライム。私達オーシューの民、いえ、バンドーやそれ以外の民も。あの金毛九尾の脅威から救われたという恩は計り知れません。この程度で恩を返せたとも思っていません。バンドーのジュリア大公やエツリアのディアス王太子、ジュリエッタ殿下も同様に思っていますよ?」

 「なにか色々と気になるフレーズもあったが…それでも俺達が有りがたいと思っている事には変わりないよ。だから、有難うだな。」

 「…そうですか。自分のやらかした事は棚に上げて自分の感謝だけ押し付けるとは流石カズトです。ところで、ここにいる皆が非常に気になっていると思うので聞いておきたいのですが、これからカズト達はどうするのです?」

 「そうだな、その前に俺とライムが新たに授かったスキルの事を言わなくちゃならない。実は今回の召喚のアレコレで『転移』っていうスキルを貰ったんだ。恐らくあっちの世界とこっちの世界を行き来出来る能力だと思う。それの能力を検証する必要も兼ねて一旦元の世界に戻って来ようと思うんだ。」

 俺の一言でライム以外の全員が硬直してしまった。それもそうか。せっかく3か月かけて俺達を召喚したのにすぐこれじゃあな。

 「いや、これに関しては済まないと思う。けど、こっちじゃ3か月経ったって話だけど向こうじゃ一切時間が進んでいなかったんだ。だから最初に召喚された時と全く同じ時間軸で呼ばれたんだよ。それで、結局ライムは両親にも会ってなくてさ。一度しっかりライムの両親には話しておかなきゃならないと思う。こっちの世界と行ったり来たり出来る事も含めて。」

 「……なるほど、そうでしたか。それでライムのご両親に婚約のご報告もする訳ですね?」

 「「!!!」」

 セリカの投下した爆弾に一同言葉を失ったが、俺としてはそれもアリだな、と思ってたりする。けど、なるべく顔色を変えずにさらりと流し、

 「まあ、折角再会出来たんだ。今日明日くらいは一緒に過ごしたいかな。」

 俺の一言でぱぁっと笑顔の花が咲き乱れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

このステータスプレート壊れてないですか?~壊れ数値の万能スキルで自由気ままな異世界生活~

夢幻の翼
ファンタジー
 典型的な社畜・ブラックバイトに翻弄される人生を送っていたラノベ好きの男が銀行強盗から女性行員を庇って撃たれた。  男は夢にまで見た異世界転生を果たしたが、ラノベのテンプレである神様からのお告げも貰えない状態に戸惑う。  それでも気を取り直して強く生きようと決めた矢先の事、国の方針により『ステータスプレート』を作成した際に数値異常となり改ざん容疑で捕縛され奴隷へ落とされる事になる。運の悪い男だったがチート能力により移送中に脱走し隣国へと逃れた。  一時は途方にくれた少年だったが神父に言われた『冒険者はステータスに関係なく出来る唯一の職業である』を胸に冒険者を目指す事にした。  持ち前の運の悪さもチート能力で回避し、自分の思う生き方を実現させる社畜転生者と自らも助けられ、少年に思いを寄せる美少女との恋愛、襲い来る盗賊の殲滅、新たな商売の開拓と現実では出来なかった夢を異世界で実現させる自由気ままな異世界生活が始まります。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。