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第二部 バンドー皇国編 3章

213.ユキの自由時間とディアスのアタック

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 さて。これでバンドーにおける戦力は集結した感があるな。これで俺達はセリカ達と合流する為にヤシューとブシューの境界あたりへ移動する事になる。しかしこのジョーシューの防衛も考えなくてはならない。中立を宣言した隣国コーシンが今一つ信用できない事と俺達が兵を引き連れて出て行くと如何にも戦力不足に陥る。

 そして指揮系統。今はエツリアの王太子ディアスが率いる(指揮権はテルが握っている)軍と行く行くはセリカのオーシュー軍、そしてヤシューやヒタチ領の軍も合流するだろう。編成作業が待っていると思うと頭が痛い。

 「どうしたのだ?カズト殿。珍しく眉間に皺が寄っているぞ?」

 珍しくユキが一人だ。って言うかね、俺だって頭使って悩む事くらいあるって。

 「いや、この先オーシューや近隣の領の軍が合流してくるだろ?編成とか指揮系統を考えるのが面倒でさ。」

 「なるほど。カズト殿は超人染みているからな。そういう面倒事もぱっと片付けているのかと思ったよ。ところで、カズト殿に折り入って相談したい事があるのだが後にした方がいいだろうか?」

 ん?テルじゃなくて俺にか?なんだろう?

 「ああ、丁度煮詰まってたトコだ。いいよ。聞こうか。」

 「済まない。実は昨日のライム殿の服の事なのだが…」

 昨日の服?ああ、メイド服の事か。なるほど。乙女だねえ。

 「あれはユキにも分かりやすく言うと…そうだな…南蛮の上流階級の家にいる侍女で、『メイド』という人達がいる。そのメイドの衣装だな。」

 「うむ。メイドの事は知っているのだが…昨日のライム殿の服はどこか違うと言うか…テルが反応したのだ!」

 「うん?普段はメイドを見ても反応しないテルがライムを見て照れてた、と。」

 ああ、そりゃアレだよ。スカート丈と絶対領域だろ。日本のサブカルが生み出したメイド服は男の妄想がぎっしり詰まっているからな。本来のメイド服ってスカートの丈が長くてきっちりしてるけど、昨日のライムのは可愛さを前面に押し出したミニスカ仕様だったからな。テルも男の子だったって事だ。いかん、つい顔がにやけてしまう。

 「か、カズト殿?顔が…」

 おっとイカン。

 「つまり、ユキもテルを誘惑したいと…そういう事だな?」

 「いや、違う、いや違わない?あーうー…」

 「ちょっと待ってくれ。今ライムを呼ぶから。」

 俺は通信ピアスに魔力を込めてライムを呼び出すとこの場をライムに任せる事にした。

 「詳しい話はライムに聞くといい。ああ、俺やテルが生きた時代の日本男児は昨日のライムのような恰好が大好きなヤツが結構いる。ユキも可愛いからな。きっとテルもイチコロだぞ?」

 顔を真っ赤にして頭から湯気を出しているユキをライムに任せ、気分転換に代官屋敷の庭をブラブラしてみる。以前俺が空けた大穴は修復されており綺麗な芝生が生い茂っている。そこでは2人の男が模擬戦をしていた。豪華な甲冑を身に着けた男と質の良いレザーアーマーの男。

 俺は暫く2人の攻防を眺めていた。甲冑の男が一方的に攻めているように見えるがレザーアーマーの男は全て躱すか受け流す。そして的確にカウンターを入れている。甲冑の男はそれなりに剣術の道を歩んで来ているのだろうが俺達の目から見れば隙だらけだ。レザーアーマーの男はそれを身を以て分からせているのだろう。レザーアーマーの男の束ねた後ろ髪がなびくと甲冑の男は芝生の上に転がり息を荒くしている。

 「また腕を上げたんじゃないか?」

 俺はレザーアーマーの男に声を掛けた。かなりの運動量の筈だが息は上がっておらずそれ程汗もかいていない。

 「あ、カズトさん。カズトさんに比べたらまだまだですから。」

 そこで甲冑の男が起き上がる。

 「何?カズトだと?テル殿!仲介を!」

 「カズトさん、こちらはエツリアの王太子、ディアス殿下です。」

 模擬戦をしていたのはテルとディアスだった。昨日ちらりと顔見せはしたがディアスとの接触はこれが初めてだ。

 「エツリアの王太子、ディアスだ。貴殿の高名はエツリアに於いても聞き及ぶ所だ。こうして共に戦えるの事を光栄に思う。よろしく頼む。」

 へえ?随分とまともになったモンだな。これなら心配ないか?

 「オーシュー王国の冒険者カズトです。協力を感謝します、王太子殿下。」

 当たり障りのない挨拶と握手を交わしたがディアスがなかなかに難易度の高い事を言い出した。

 「カズト殿はセリカ陛下やこの国の皇女殿下にも友人と接するように気安く振舞うと聞いている。どうだろう?私の事もディアスと呼び友諠を結んで貰えぬかな?」

 『看破』を掛けてみたが特に嘘は無いらしい。でもな…

 「ディアス殿下。友諠とはお互いの信頼関係が構築されてこそ成り立つものと俺は考えます。セリカも、ジュリアとジュリエッタの姉妹もその思いの強さと行動に心を打たれて助力をしました。その結果彼女達も俺を信頼してくれたのです。失礼ですが俺はディアス殿下をそれ程存じ上げません。」

 「なるほど、噂通り手厳しい。一国の王太子を相手にしても媚びる事なく己を貫く強さか。聞いていた通りだよ。私はそんな貴殿だからこそ、友人になりたいのだ。その、私のような立場では友人も少なくてな。遠慮せずに話して来る友というものに憧れている。」

 テルは苦笑している。同じような口説き文句を言われたか?

 「いいでしょう。今回の戦で殿下を見極めさせて頂きます。」

 なんだか妙な事になったけどこれはこれでアリか?
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