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第二部 バンドー皇国編 3章
211.指揮官テルとカズト先生
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一晩明けてステイブル・ブリジ城の城門前には義勇軍300とエツリア軍2000が今まさに出陣しようとしていた。義勇軍とジュリエッタは『赤備え』である。カズトに絡んで心を入れ替えた情報通のヒャッハー3人組が義勇軍の中核を為していた。
「大将!大将はカズトの旦那とは親しいんすよね?」
3人組のうちの1人がテルに話し掛けてきた。
「ああ、とても世話になった人だ。今回の事で恩返しが出来ればいいんだけどな。」
「だが厄介な事にあの御仁は恩を売ったとはこれっぽっちも思っていないのだ。どこかの誰かさんと同じでな。」
答えたテルに対しチラリと視線を向けながらユキが続けるとテルの反対隣にいたジュリエッタがさらに被せてきた。
「本当にカズト様は命を助けたのに『大したことじゃない』みたいな感じですよね!テルもなんですか?」
「テルは、そうだな…頼まれて助けたのならば謝礼は受け取るだろうが自ら助けに入った時は謝礼は受けないかな。自分が好きでやった事だから礼を言われる事はしていない、とか言いそうだ。」
「ああ、わかります!でもそれって大概は頼まれる前に助けに入っちゃうんですよね!」
「む、ジュリエッタも随分テルを分かって来たようだな?」
「もちろんです!お友達ですから!それにしてもテルもカズトさんも素敵ですよね!」
「なんか話を聞いてると大将も旦那もホントかっこいいっすよね。見た目だけじゃなくて行動が男前っていうか器がデカいって言うか。すげえモテるんだろうなあ…」
そこへディアスがやって来た。
「我らも精進して追い付いてやろうではないか。」
「あ、これは王太子殿下!」
「テル殿、ジュリエッタ殿下。今部下たちと話し合って来たのだがな。やはり父の書状に従い全軍の指揮権をテル殿、貴殿に移譲する。」
「うえ?」
予想外のディアスの申し出に間抜けな声を出してしまったテル。
「いや、しかしそれでは軍が機能しないのではありませんか?」
「それがな、兵達の間では貴殿は有名だったよ。王宮にいる私などより庶民の方が耳が早いらしい。ウフロンの英雄、インテグラーレ公の懐刀、反魔法至上主義の象徴…例の事件も一般には好意的に受け止められている事もあり我が軍で貴殿の指揮下に入る事に異を唱える者は殆どいなかった。そういう訳だ。ここは私も貴殿の軍略を学ばせて頂こう。」
なんとも短慮な人物だと思っていたが一旦相手を認めてしまえば思いの他まともな人物らしい。
「しかし南に行って本隊と合流してしまえばカズトさん達の指揮下に組み込まれるかも知れませんよ?」
「それはそれで楽しみだな。仲介、頼んでもよいかな?」
「ええ、それは構いませんが。」
「うむ、ならば頼むよ。」
この後、ジュリエッタの兵を鼓舞する演説があり、テルの号令でジュリアの本隊へと合流すべくステイブル・ブリジ城を出立した。
◇◇◇
向こうも丸く治まったようなのでこっちの方も訓練に本腰を入れている。装備品の方も一段落付き、ローレルとガイアも訓練に参加だ。この2人と爺さん、千代ちゃん、ライム、ビートは他とは技量が隔絶しているので別枠で模擬戦を、俺はソレイユを一まとめにして相手をしている。
「おらー、お前らもう少し連携のバリエーション増やさねえとバレバレだぞー?」
エスプリは主人であるライムと共に連携しながら模擬戦をやっているが眷属の7匹はソレイユと一緒だ。例によって綺麗に並んでお座りしてこっちを見て話を聞いている。可愛いなあ、もう。
「いいか?お前らのは狼が先制で襲った所に止めを刺しに行くパターンばっかりだろ?ちょっとできる相手だと狼が返り討ちに遭う可能性もある。そうなるとお前らの戦術はガタガタだ。」
「確かにそうっすね…」
「エリーゼの場合は支援特化だからな、周辺警戒と援護射撃、相棒は護衛。これでいい。そうだな…例えばチョウシチ!」
「は!」
「お前の右足、踏み込む時に地面を凍らせてみろ。」
「こうでござるか?」
「まだだ。もっと相手の間合いに入る前に広範囲に!」
「ぬう!」
「そうだ!それで相手の足捌きは死ぬ。そこで相棒がガブリ、だ。」
「なるほど!これは相棒が襲い掛かる時の危険度が格段に下がるでござるな!」
「お前らは手に入れた力を敵を倒す事だけに使おうとしてるだろ?ああ、まあ気持ちは分かるよ。でもな、半端な威力の奴を乱発するよりも今のチョウシチみたいに相手の動きを阻害する方向に使った方が有効な場合もある。水魔法を撃てるヤツは威力を抑えて目つぶしに使うとかな。」
「流石にアニキは引き出しが多いっすね。でも身体強化しか出来ねえ場合はどんな手があるんすか?」
「ああ、足に強化かけて地面を思い切り蹴とばしてみろ。」
「土煙が凄いっす。これじゃお互いに見えないっすね。」
「そうだな。目だけに頼って戦ってるヤツはこれだけで行動が阻害される。だけどお前らには頼れる仲間がいるだろ?」
「!そうか、エリーゼの魔眼と狼の鼻!」
「正解だ。エリーゼにはさっき支援特化って言ったけど戦術次第じゃ主役になれる。結局、誰を主体にするかで攻撃方法も幅が出て来るからそういう事も考えながらやってみるといい。」
さて、かなりヒントとアドバイスもしたしちょっと揉んでやりますかね。
「おらー、お前ら個人で戦ってると思うな!7人と7匹で1人だと思ってやってみろ!」
こいつら絆が強い。このやり方で伸びる…と思う。
「アニキー!今の見てたっすかー!?ぐはっ!」
多分…大丈夫な筈だ…
「大将!大将はカズトの旦那とは親しいんすよね?」
3人組のうちの1人がテルに話し掛けてきた。
「ああ、とても世話になった人だ。今回の事で恩返しが出来ればいいんだけどな。」
「だが厄介な事にあの御仁は恩を売ったとはこれっぽっちも思っていないのだ。どこかの誰かさんと同じでな。」
答えたテルに対しチラリと視線を向けながらユキが続けるとテルの反対隣にいたジュリエッタがさらに被せてきた。
「本当にカズト様は命を助けたのに『大したことじゃない』みたいな感じですよね!テルもなんですか?」
「テルは、そうだな…頼まれて助けたのならば謝礼は受け取るだろうが自ら助けに入った時は謝礼は受けないかな。自分が好きでやった事だから礼を言われる事はしていない、とか言いそうだ。」
「ああ、わかります!でもそれって大概は頼まれる前に助けに入っちゃうんですよね!」
「む、ジュリエッタも随分テルを分かって来たようだな?」
「もちろんです!お友達ですから!それにしてもテルもカズトさんも素敵ですよね!」
「なんか話を聞いてると大将も旦那もホントかっこいいっすよね。見た目だけじゃなくて行動が男前っていうか器がデカいって言うか。すげえモテるんだろうなあ…」
そこへディアスがやって来た。
「我らも精進して追い付いてやろうではないか。」
「あ、これは王太子殿下!」
「テル殿、ジュリエッタ殿下。今部下たちと話し合って来たのだがな。やはり父の書状に従い全軍の指揮権をテル殿、貴殿に移譲する。」
「うえ?」
予想外のディアスの申し出に間抜けな声を出してしまったテル。
「いや、しかしそれでは軍が機能しないのではありませんか?」
「それがな、兵達の間では貴殿は有名だったよ。王宮にいる私などより庶民の方が耳が早いらしい。ウフロンの英雄、インテグラーレ公の懐刀、反魔法至上主義の象徴…例の事件も一般には好意的に受け止められている事もあり我が軍で貴殿の指揮下に入る事に異を唱える者は殆どいなかった。そういう訳だ。ここは私も貴殿の軍略を学ばせて頂こう。」
なんとも短慮な人物だと思っていたが一旦相手を認めてしまえば思いの他まともな人物らしい。
「しかし南に行って本隊と合流してしまえばカズトさん達の指揮下に組み込まれるかも知れませんよ?」
「それはそれで楽しみだな。仲介、頼んでもよいかな?」
「ええ、それは構いませんが。」
「うむ、ならば頼むよ。」
この後、ジュリエッタの兵を鼓舞する演説があり、テルの号令でジュリアの本隊へと合流すべくステイブル・ブリジ城を出立した。
◇◇◇
向こうも丸く治まったようなのでこっちの方も訓練に本腰を入れている。装備品の方も一段落付き、ローレルとガイアも訓練に参加だ。この2人と爺さん、千代ちゃん、ライム、ビートは他とは技量が隔絶しているので別枠で模擬戦を、俺はソレイユを一まとめにして相手をしている。
「おらー、お前らもう少し連携のバリエーション増やさねえとバレバレだぞー?」
エスプリは主人であるライムと共に連携しながら模擬戦をやっているが眷属の7匹はソレイユと一緒だ。例によって綺麗に並んでお座りしてこっちを見て話を聞いている。可愛いなあ、もう。
「いいか?お前らのは狼が先制で襲った所に止めを刺しに行くパターンばっかりだろ?ちょっとできる相手だと狼が返り討ちに遭う可能性もある。そうなるとお前らの戦術はガタガタだ。」
「確かにそうっすね…」
「エリーゼの場合は支援特化だからな、周辺警戒と援護射撃、相棒は護衛。これでいい。そうだな…例えばチョウシチ!」
「は!」
「お前の右足、踏み込む時に地面を凍らせてみろ。」
「こうでござるか?」
「まだだ。もっと相手の間合いに入る前に広範囲に!」
「ぬう!」
「そうだ!それで相手の足捌きは死ぬ。そこで相棒がガブリ、だ。」
「なるほど!これは相棒が襲い掛かる時の危険度が格段に下がるでござるな!」
「お前らは手に入れた力を敵を倒す事だけに使おうとしてるだろ?ああ、まあ気持ちは分かるよ。でもな、半端な威力の奴を乱発するよりも今のチョウシチみたいに相手の動きを阻害する方向に使った方が有効な場合もある。水魔法を撃てるヤツは威力を抑えて目つぶしに使うとかな。」
「流石にアニキは引き出しが多いっすね。でも身体強化しか出来ねえ場合はどんな手があるんすか?」
「ああ、足に強化かけて地面を思い切り蹴とばしてみろ。」
「土煙が凄いっす。これじゃお互いに見えないっすね。」
「そうだな。目だけに頼って戦ってるヤツはこれだけで行動が阻害される。だけどお前らには頼れる仲間がいるだろ?」
「!そうか、エリーゼの魔眼と狼の鼻!」
「正解だ。エリーゼにはさっき支援特化って言ったけど戦術次第じゃ主役になれる。結局、誰を主体にするかで攻撃方法も幅が出て来るからそういう事も考えながらやってみるといい。」
さて、かなりヒントとアドバイスもしたしちょっと揉んでやりますかね。
「おらー、お前ら個人で戦ってると思うな!7人と7匹で1人だと思ってやってみろ!」
こいつら絆が強い。このやり方で伸びる…と思う。
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