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第二部 バンドー皇国編 3章

191.薄汚れた捨て犬を拾って来て洗ったらまさかの血統証付きの貴公子だったみたいな。

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 フェンリルに命乞いをされてちょっと困惑している私。

 「姐さん、敵対しないってんならわざわざ無駄な殺生する事もねえんじゃないっすか?姐さんは知らないかも知れないっすけど、この山の主は魔物を駆除してくれる神狼としてそれなりに崇められてるんすよ。俺達を襲うってんならむざむざ喰われてやるつもりはないっすけどね。」

 そうなのね。じゃあ勘弁してあげようかな。

 「よし。じゃあ行ってよし!」

 【は?】

 「だから敵対しないのなら行ってよし!」

 【済まぬ。感謝する。】

 「あー、私達はまだここら辺で鍛錬するから邪魔しないようにね?」

 【承知した。我が眷属にも伝えおこう。しかしそれ程の強さを持ちながら更に力を欲するのは何故か?】

 うーん…

 「守る為。生き残る為。敵を倒す為。かな?」

 私はここに至るまでの経緯を詳細に話した。クローとしての前世の事。セリカに召喚された事。オーシューの革命の事。バンドーの暗躍の事。バンドーに入国した理由。ジュリアとジュリエッタとの出会い。この国の平民の惨状。そして関連各国の情勢。

 そして何より大事なカズにぃの事。

 みんなお利口におすわりしてて、なにこれ可愛い!

 「そんな訳でね、この国の将軍の動向はちょっとおかしいと思うの。何か切り札を持っている気がする。だから強くなるためにやれる事はやっておく。私やカズにぃは負けるつもりはないけど、一般の人には被害が出るかも知れない。その時に被害を最小限に留める為にも強い戦力はいくらでもあった方がいいの。」

 【…理解した。それにしてもカズトという男…ユニコーンにバイコーン、地竜の親子にケットシー、さらには精霊王まで支配下にあるとは…本当に人間か?】

 「しっつれいね!多分まだ人間だよ!?」

 【ライム…多分は余計ですわ。】

 【ライム…なぜきっぱりと言い切れんかのぅ…】

 「だからね、いくらカズにいが強くたって守れるのは精々視界の中にいる人くらいのもの。理想を言えば自分の命は自分で守れるくらい強くあった方がいい。」

 【スルーしましたわね。】
 【スルーじゃな。】

 【うむ。それがよかろう。件の将軍とやらが関与しているかは知らんが南の方で大きな魔力のうねりを感じた。いや、魔力とは少し違うな。もっと禍々しい波動だった。用心するのがよいだろう。】

 ……新しい情報ゲットだよ。これはもっと詳しく調べた方がいいような気がする。

 「情報ありがと。ちょっと対策を練る必要があるかも知れない。私達は戻るね!」

 【待たれよ!】

 「何かな?」

 【我を眷属にして欲しい。】

 「なぜ?」

 【カズトという男に興味が尽きぬ。それに威圧で我を恐怖させたそなたに仕えるのなら本望だ。】

 「私の指示に従ってもらうけどいいの?」

 【出来れば理不尽は勘弁して欲しいが…】

 「ふむ。では条件が有ります!」

 私は左手を腰に当て右手の人差し指をビッと立ててフェンリルに突き出して言った。だって大事な事だもん!

 「今から洗濯される事!そしてモフらせる事!」

 【モフ!?】

 「それでは洗いまーす。」
 
 水魔法で出した大量の水をちょっと火魔法で加熱して人肌に。お湯になったところでフェンリルの体全体を包み込み、さらに風魔法で障壁を張ってお湯を球形に固定する。そして内部だけ水流を発生させてフェンリル洗濯機の完成だ。おお、目を細めて気持ち良さそう。汚れたら排水、そして給水を繰り返していくと…

 「これは…すごいっすね。」

 「おお…神々しい…」

 「なんというか…美しいわね…」

 「流石は神狼と言ったところか。」

 そう、汚れを落としたフェンリルは皆が感嘆するほどに美しかった。

 「こんな綺麗な銀色だったんだね、キミ。しかも手触りが極上だわ…」

 【実に心地良かった。礼を言うぞ、ライム。】

 ん?つぶらな瞳がこっちに集中している?そんなにキラキラした目で尻尾振らないで!


 「はあ、疲れたわ…結局眷属の7匹も洗濯しちゃった。」

 【なんというか…魔法の超高等技術の無駄遣いですわね。】

 「なんだかねえ…でもワンちゃん達も綺麗になったしよかったんじゃない?」

 【フェンリルの眷属をワンちゃん呼ばわりするのもどうかと思うのじゃが…】

 眷属の狼たちも洗ってあげたら綺麗なグレー。黒っぽく汚れてゴワゴワしてた体毛が嘘みたいにフサフサに。

 それで、レベリングの成果なんだけど、赤7人はすごく伸びた。アクア様の魔力で変質してしまった再生させた四肢や目。使いこなせば大化けするかも。突然水属性の魔法を使えるようになっちゃったから修練は必要だよね。しかも発動させられるのが欠損した部位だけとか特殊すぎるし。それはまあ、戻ってからも訓練するとして。

 さて、それじゃあ儀式を始めようか。

 「ではフェンリルさん。命名の儀式を始めます!」

 【良き名を頼む。】

 「ぽc【ライムッ!それは断固として阻止致しますわ!】

 犬の名前は古来よr【犬扱いはお止めなさい!】

 怒られちった。てへ。

 「じゃあウルf【そのまんま過ぎるじゃろ!捻りが無さ過ぎて逆に面白いわ!】

 ええー?私の好きなバイクのなm【ばいくが何かわからんのじゃ】

 「ではっ!エスプリとかどうでしょう!?」

 【【おお!】】

 【それがいい!是非それで頼みたい!】

 何故か必死な様子のフェンリルさん。

 「じゃあ君は今から私の眷属『エスプリ』だよ!よろしくね!」

 【うむ、宜しく頼む。】

 「よし!それじゃあみんな!街に戻るよ!」

 《おおー!》
 【ガウ!】×7

 えっ?
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