93 / 240
第二部 バンドー皇国編 3章
191.薄汚れた捨て犬を拾って来て洗ったらまさかの血統証付きの貴公子だったみたいな。
しおりを挟む
フェンリルに命乞いをされてちょっと困惑している私。
「姐さん、敵対しないってんならわざわざ無駄な殺生する事もねえんじゃないっすか?姐さんは知らないかも知れないっすけど、この山の主は魔物を駆除してくれる神狼としてそれなりに崇められてるんすよ。俺達を襲うってんならむざむざ喰われてやるつもりはないっすけどね。」
そうなのね。じゃあ勘弁してあげようかな。
「よし。じゃあ行ってよし!」
【は?】
「だから敵対しないのなら行ってよし!」
【済まぬ。感謝する。】
「あー、私達はまだここら辺で鍛錬するから邪魔しないようにね?」
【承知した。我が眷属にも伝えおこう。しかしそれ程の強さを持ちながら更に力を欲するのは何故か?】
うーん…
「守る為。生き残る為。敵を倒す為。かな?」
私はここに至るまでの経緯を詳細に話した。クローとしての前世の事。セリカに召喚された事。オーシューの革命の事。バンドーの暗躍の事。バンドーに入国した理由。ジュリアとジュリエッタとの出会い。この国の平民の惨状。そして関連各国の情勢。
そして何より大事なカズにぃの事。
みんなお利口におすわりしてて、なにこれ可愛い!
「そんな訳でね、この国の将軍の動向はちょっとおかしいと思うの。何か切り札を持っている気がする。だから強くなるためにやれる事はやっておく。私やカズにぃは負けるつもりはないけど、一般の人には被害が出るかも知れない。その時に被害を最小限に留める為にも強い戦力はいくらでもあった方がいいの。」
【…理解した。それにしてもカズトという男…ユニコーンにバイコーン、地竜の親子にケットシー、さらには精霊王まで支配下にあるとは…本当に人間か?】
「しっつれいね!多分まだ人間だよ!?」
【ライム…多分は余計ですわ。】
【ライム…なぜきっぱりと言い切れんかのぅ…】
「だからね、いくらカズにいが強くたって守れるのは精々視界の中にいる人くらいのもの。理想を言えば自分の命は自分で守れるくらい強くあった方がいい。」
【スルーしましたわね。】
【スルーじゃな。】
【うむ。それがよかろう。件の将軍とやらが関与しているかは知らんが南の方で大きな魔力のうねりを感じた。いや、魔力とは少し違うな。もっと禍々しい波動だった。用心するのがよいだろう。】
……新しい情報ゲットだよ。これはもっと詳しく調べた方がいいような気がする。
「情報ありがと。ちょっと対策を練る必要があるかも知れない。私達は戻るね!」
【待たれよ!】
「何かな?」
【我を眷属にして欲しい。】
「なぜ?」
【カズトという男に興味が尽きぬ。それに威圧で我を恐怖させたそなたに仕えるのなら本望だ。】
「私の指示に従ってもらうけどいいの?」
【出来れば理不尽は勘弁して欲しいが…】
「ふむ。では条件が有ります!」
私は左手を腰に当て右手の人差し指をビッと立ててフェンリルに突き出して言った。だって大事な事だもん!
「今から洗濯される事!そしてモフらせる事!」
【モフ!?】
「それでは洗いまーす。」
水魔法で出した大量の水をちょっと火魔法で加熱して人肌に。お湯になったところでフェンリルの体全体を包み込み、さらに風魔法で障壁を張ってお湯を球形に固定する。そして内部だけ水流を発生させてフェンリル洗濯機の完成だ。おお、目を細めて気持ち良さそう。汚れたら排水、そして給水を繰り返していくと…
「これは…すごいっすね。」
「おお…神々しい…」
「なんというか…美しいわね…」
「流石は神狼と言ったところか。」
そう、汚れを落としたフェンリルは皆が感嘆するほどに美しかった。
「こんな綺麗な銀色だったんだね、キミ。しかも手触りが極上だわ…」
【実に心地良かった。礼を言うぞ、ライム。】
ん?つぶらな瞳がこっちに集中している?そんなにキラキラした目で尻尾振らないで!
「はあ、疲れたわ…結局眷属の7匹も洗濯しちゃった。」
【なんというか…魔法の超高等技術の無駄遣いですわね。】
「なんだかねえ…でもワンちゃん達も綺麗になったしよかったんじゃない?」
【フェンリルの眷属をワンちゃん呼ばわりするのもどうかと思うのじゃが…】
眷属の狼たちも洗ってあげたら綺麗なグレー。黒っぽく汚れてゴワゴワしてた体毛が嘘みたいにフサフサに。
それで、レベリングの成果なんだけど、赤7人はすごく伸びた。アクア様の魔力で変質してしまった再生させた四肢や目。使いこなせば大化けするかも。突然水属性の魔法を使えるようになっちゃったから修練は必要だよね。しかも発動させられるのが欠損した部位だけとか特殊すぎるし。それはまあ、戻ってからも訓練するとして。
さて、それじゃあ儀式を始めようか。
「ではフェンリルさん。命名の儀式を始めます!」
【良き名を頼む。】
「ぽc【ライムッ!それは断固として阻止致しますわ!】
犬の名前は古来よr【犬扱いはお止めなさい!】
怒られちった。てへ。
「じゃあウルf【そのまんま過ぎるじゃろ!捻りが無さ過ぎて逆に面白いわ!】
ええー?私の好きなバイクのなm【ばいくが何かわからんのじゃ】
「ではっ!エスプリとかどうでしょう!?」
【【おお!】】
【それがいい!是非それで頼みたい!】
何故か必死な様子のフェンリルさん。
「じゃあ君は今から私の眷属『エスプリ』だよ!よろしくね!」
【うむ、宜しく頼む。】
「よし!それじゃあみんな!街に戻るよ!」
《おおー!》
【ガウ!】×7
えっ?
「姐さん、敵対しないってんならわざわざ無駄な殺生する事もねえんじゃないっすか?姐さんは知らないかも知れないっすけど、この山の主は魔物を駆除してくれる神狼としてそれなりに崇められてるんすよ。俺達を襲うってんならむざむざ喰われてやるつもりはないっすけどね。」
そうなのね。じゃあ勘弁してあげようかな。
「よし。じゃあ行ってよし!」
【は?】
「だから敵対しないのなら行ってよし!」
【済まぬ。感謝する。】
「あー、私達はまだここら辺で鍛錬するから邪魔しないようにね?」
【承知した。我が眷属にも伝えおこう。しかしそれ程の強さを持ちながら更に力を欲するのは何故か?】
うーん…
「守る為。生き残る為。敵を倒す為。かな?」
私はここに至るまでの経緯を詳細に話した。クローとしての前世の事。セリカに召喚された事。オーシューの革命の事。バンドーの暗躍の事。バンドーに入国した理由。ジュリアとジュリエッタとの出会い。この国の平民の惨状。そして関連各国の情勢。
そして何より大事なカズにぃの事。
みんなお利口におすわりしてて、なにこれ可愛い!
「そんな訳でね、この国の将軍の動向はちょっとおかしいと思うの。何か切り札を持っている気がする。だから強くなるためにやれる事はやっておく。私やカズにぃは負けるつもりはないけど、一般の人には被害が出るかも知れない。その時に被害を最小限に留める為にも強い戦力はいくらでもあった方がいいの。」
【…理解した。それにしてもカズトという男…ユニコーンにバイコーン、地竜の親子にケットシー、さらには精霊王まで支配下にあるとは…本当に人間か?】
「しっつれいね!多分まだ人間だよ!?」
【ライム…多分は余計ですわ。】
【ライム…なぜきっぱりと言い切れんかのぅ…】
「だからね、いくらカズにいが強くたって守れるのは精々視界の中にいる人くらいのもの。理想を言えば自分の命は自分で守れるくらい強くあった方がいい。」
【スルーしましたわね。】
【スルーじゃな。】
【うむ。それがよかろう。件の将軍とやらが関与しているかは知らんが南の方で大きな魔力のうねりを感じた。いや、魔力とは少し違うな。もっと禍々しい波動だった。用心するのがよいだろう。】
……新しい情報ゲットだよ。これはもっと詳しく調べた方がいいような気がする。
「情報ありがと。ちょっと対策を練る必要があるかも知れない。私達は戻るね!」
【待たれよ!】
「何かな?」
【我を眷属にして欲しい。】
「なぜ?」
【カズトという男に興味が尽きぬ。それに威圧で我を恐怖させたそなたに仕えるのなら本望だ。】
「私の指示に従ってもらうけどいいの?」
【出来れば理不尽は勘弁して欲しいが…】
「ふむ。では条件が有ります!」
私は左手を腰に当て右手の人差し指をビッと立ててフェンリルに突き出して言った。だって大事な事だもん!
「今から洗濯される事!そしてモフらせる事!」
【モフ!?】
「それでは洗いまーす。」
水魔法で出した大量の水をちょっと火魔法で加熱して人肌に。お湯になったところでフェンリルの体全体を包み込み、さらに風魔法で障壁を張ってお湯を球形に固定する。そして内部だけ水流を発生させてフェンリル洗濯機の完成だ。おお、目を細めて気持ち良さそう。汚れたら排水、そして給水を繰り返していくと…
「これは…すごいっすね。」
「おお…神々しい…」
「なんというか…美しいわね…」
「流石は神狼と言ったところか。」
そう、汚れを落としたフェンリルは皆が感嘆するほどに美しかった。
「こんな綺麗な銀色だったんだね、キミ。しかも手触りが極上だわ…」
【実に心地良かった。礼を言うぞ、ライム。】
ん?つぶらな瞳がこっちに集中している?そんなにキラキラした目で尻尾振らないで!
「はあ、疲れたわ…結局眷属の7匹も洗濯しちゃった。」
【なんというか…魔法の超高等技術の無駄遣いですわね。】
「なんだかねえ…でもワンちゃん達も綺麗になったしよかったんじゃない?」
【フェンリルの眷属をワンちゃん呼ばわりするのもどうかと思うのじゃが…】
眷属の狼たちも洗ってあげたら綺麗なグレー。黒っぽく汚れてゴワゴワしてた体毛が嘘みたいにフサフサに。
それで、レベリングの成果なんだけど、赤7人はすごく伸びた。アクア様の魔力で変質してしまった再生させた四肢や目。使いこなせば大化けするかも。突然水属性の魔法を使えるようになっちゃったから修練は必要だよね。しかも発動させられるのが欠損した部位だけとか特殊すぎるし。それはまあ、戻ってからも訓練するとして。
さて、それじゃあ儀式を始めようか。
「ではフェンリルさん。命名の儀式を始めます!」
【良き名を頼む。】
「ぽc【ライムッ!それは断固として阻止致しますわ!】
犬の名前は古来よr【犬扱いはお止めなさい!】
怒られちった。てへ。
「じゃあウルf【そのまんま過ぎるじゃろ!捻りが無さ過ぎて逆に面白いわ!】
ええー?私の好きなバイクのなm【ばいくが何かわからんのじゃ】
「ではっ!エスプリとかどうでしょう!?」
【【おお!】】
【それがいい!是非それで頼みたい!】
何故か必死な様子のフェンリルさん。
「じゃあ君は今から私の眷属『エスプリ』だよ!よろしくね!」
【うむ、宜しく頼む。】
「よし!それじゃあみんな!街に戻るよ!」
《おおー!》
【ガウ!】×7
えっ?
0
お気に入りに追加
5,673
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
私ではありませんから
三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」
はじめて書いた婚約破棄もの。
カクヨムでも公開しています。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく
しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ
おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。