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第二部 バンドー皇国編 3章

180.それぞれの目的地へ向けて

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 私はジュリア。バンドー皇国の第一皇女。双子の妹のジュリエッタと共に皇都を脱出して来ました。途中、将軍配下の追手の兵を差し向けられましたが危機一髪のところでカズト様に救われました。そしてなんとバイコーンのラングラー様を貸して頂き、護衛の女性兵士と共にオーシュー王都に向かって飛ばしています。

 【まだまだ飛ばす。しっかりと掴まっていろ。振り落とされても我は知らぬ。】

 「は、はひいいいいいいいいいいっ!!!」
 「ひっ姫様!!お気を確かに!!」

 ムリムリ、怖すぎて速すぎます!地上にこんなスピードで走れる生き物がいるなんてぇぇ!

 どうも、このラングラー様はオーシューまでの最短距離を走っているようで途中で止めようとするものや追手などもいたのですがまるで関係ありません。あまりのスピードに対応する事が出来ないようです。国境の関所も強行突破してオーシュー国内に入りました。

 「あれ?ラングラー様、カズト様じゃないんですか?」

 警備兵が尋ねます。

 「すみません、少々事情がありましてカズト様よりお借りしてきたのです。申し訳ありませんがお水を一杯……ああ、すみません。ありがとうございます。 ふう。王都ライズミーのセリカ女王陛下に急ぎ会わねばなりません。」

 「そうですか。ラングラー様があなたを乗せている事が何よりの証となりましょう。少し、お待ち下さい。」

 そう言って警備兵は屯所に戻りすぐに戻って来ました。手には何か包みを持っています。

 「粗末なものですが水と食事です。道中お召し上がり下さい。陛下にお会いしたいというならばやんごとなきご身分のお方とお見受けします。このような物しか準備できませんがどうかご容赦を。」

 「いえ、ありがとうございます。ここでの施し、生涯胸に留め置きます。では、失礼致します。」

 警備兵の気遣いに涙が零れそうになりましたが必死で堪えました。これがセリカ陛下の国なのですね。やはり、何が何でも会わねばなりませんね。

◇◇◇

 ジュリエッタです。お姉様はオーシューへと向かいました。私はライム様からお借りしたチェロキー様の背にこの身を任せ、エツリアのサーブ王の元へ急いでいます。

 「チェロキー様?こちらのルートは遠回りになるのでは?」

 【ええ。しかしこちらの国境守備隊は我が主殿と面識があるのです。結果的にはこちらの方が早くエツリアに入国出来るでしょう。】

 「そ、そうなのですか。」

 それにしてもユニコーンとはここまでの脚力があるのですね。バンドー一の名馬と言えどもチェロキー様の前では駄馬同然でしょう。それにしても…速すぎて怖いです。私と共に乗っている護衛兵もさっきから一言も発しません。余程怖いのでしょう。

 「とまれえぇーーー!」

 国境守備隊の方が止まるよう促してきます。

 「あれ?チェロキーさん?ライムさんはどうしたんで?」

 【故あって我が主よりこの娘を託されている。一刻もはやくエツリア王の元へと急ぎたい。道中止められる事の無いよう取り計らって貰えるか?】

 「あ、ちょっと待って下さいね!隊長!隊長ーー!!」

 守備兵さんは隊長さんを呼びに行きました。程なくして隊長さんらしき方がやってきます。

 「カズト殿の使いという事で宜しいですかな?」

 正確には少し違いますがここはそういう事にしておくのがいいでしょう。

 「ええ、この書状をサーブ陛下へ。」

 「ならばこの木札をお持ち下さい。特急の伝令が持つ木札です。これがあれば城内までは入れるはずです。」

 「これは…ありがとうございます。急ぎますのでこれで失礼します。」

 なかなか話の分かる方でした。これもカズト様効果なのでしょうか。どういうお方なのでしょうね。もっと詳しく知りたいものです。

◇◇◇

 「なあ、ライム。さっきさ、戦闘中の俺達を監視してた奴がいたんだ。」

 「へえ?それで?」

 「ロックオンしてマジックミサイルぶち込んだんだけど、逃げられた。」

 「へっ?カズにぃから逃げた??」

 俺は無言で頷く。今までで最強の敵かも知れない。同時に興味が湧く。

 「ここにいたんだ。」

 ロックオンしてマジックミサイルを撃ち込んだ場所だ。

 「こんな離れてる場所から監視?何者だろうね?」

 「まったくだ。相当な手練れだな。引き際も見事なもんだった。しかし…」

 地面には血痕が残っていた。

 「手傷は負ったようだな。」

 「追える?」

 「いや、無理だろうな。おそらくこういう裏仕事のプロだろ。この血痕以外の痕跡を残してるとは思えない。その辺は俺達素人だしな。」

 「そうかぁ…強敵出現ってとこだね。気を引き締めなきゃ。」

 「ああ、正面切っての戦闘ならともかく、こういう手合いはやり方が嫌らしいと思うんだ。十分気を付けて行こうぜ!」

 「うん!」

 俺達はショーナンに向けて南下している。そして俺はなぜかウフロンで出会った戦国時代からの転移者、ユキの事を思い出していた。
 
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