82 / 240
第二部 バンドー皇国編 3章
180.それぞれの目的地へ向けて
しおりを挟む
私はジュリア。バンドー皇国の第一皇女。双子の妹のジュリエッタと共に皇都を脱出して来ました。途中、将軍配下の追手の兵を差し向けられましたが危機一髪のところでカズト様に救われました。そしてなんとバイコーンのラングラー様を貸して頂き、護衛の女性兵士と共にオーシュー王都に向かって飛ばしています。
【まだまだ飛ばす。しっかりと掴まっていろ。振り落とされても我は知らぬ。】
「は、はひいいいいいいいいいいっ!!!」
「ひっ姫様!!お気を確かに!!」
ムリムリ、怖すぎて速すぎます!地上にこんなスピードで走れる生き物がいるなんてぇぇ!
どうも、このラングラー様はオーシューまでの最短距離を走っているようで途中で止めようとするものや追手などもいたのですがまるで関係ありません。あまりのスピードに対応する事が出来ないようです。国境の関所も強行突破してオーシュー国内に入りました。
「あれ?ラングラー様、カズト様じゃないんですか?」
警備兵が尋ねます。
「すみません、少々事情がありましてカズト様よりお借りしてきたのです。申し訳ありませんがお水を一杯……ああ、すみません。ありがとうございます。 ふう。王都ライズミーのセリカ女王陛下に急ぎ会わねばなりません。」
「そうですか。ラングラー様があなたを乗せている事が何よりの証となりましょう。少し、お待ち下さい。」
そう言って警備兵は屯所に戻りすぐに戻って来ました。手には何か包みを持っています。
「粗末なものですが水と食事です。道中お召し上がり下さい。陛下にお会いしたいというならばやんごとなきご身分のお方とお見受けします。このような物しか準備できませんがどうかご容赦を。」
「いえ、ありがとうございます。ここでの施し、生涯胸に留め置きます。では、失礼致します。」
警備兵の気遣いに涙が零れそうになりましたが必死で堪えました。これがセリカ陛下の国なのですね。やはり、何が何でも会わねばなりませんね。
◇◇◇
ジュリエッタです。お姉様はオーシューへと向かいました。私はライム様からお借りしたチェロキー様の背にこの身を任せ、エツリアのサーブ王の元へ急いでいます。
「チェロキー様?こちらのルートは遠回りになるのでは?」
【ええ。しかしこちらの国境守備隊は我が主殿と面識があるのです。結果的にはこちらの方が早くエツリアに入国出来るでしょう。】
「そ、そうなのですか。」
それにしてもユニコーンとはここまでの脚力があるのですね。バンドー一の名馬と言えどもチェロキー様の前では駄馬同然でしょう。それにしても…速すぎて怖いです。私と共に乗っている護衛兵もさっきから一言も発しません。余程怖いのでしょう。
「とまれえぇーーー!」
国境守備隊の方が止まるよう促してきます。
「あれ?チェロキーさん?ライムさんはどうしたんで?」
【故あって我が主よりこの娘を託されている。一刻もはやくエツリア王の元へと急ぎたい。道中止められる事の無いよう取り計らって貰えるか?】
「あ、ちょっと待って下さいね!隊長!隊長ーー!!」
守備兵さんは隊長さんを呼びに行きました。程なくして隊長さんらしき方がやってきます。
「カズト殿の使いという事で宜しいですかな?」
正確には少し違いますがここはそういう事にしておくのがいいでしょう。
「ええ、この書状をサーブ陛下へ。」
「ならばこの木札をお持ち下さい。特急の伝令が持つ木札です。これがあれば城内までは入れるはずです。」
「これは…ありがとうございます。急ぎますのでこれで失礼します。」
なかなか話の分かる方でした。これもカズト様効果なのでしょうか。どういうお方なのでしょうね。もっと詳しく知りたいものです。
◇◇◇
「なあ、ライム。さっきさ、戦闘中の俺達を監視してた奴がいたんだ。」
「へえ?それで?」
「ロックオンしてマジックミサイルぶち込んだんだけど、逃げられた。」
「へっ?カズにぃから逃げた??」
俺は無言で頷く。今までで最強の敵かも知れない。同時に興味が湧く。
「ここにいたんだ。」
ロックオンしてマジックミサイルを撃ち込んだ場所だ。
「こんな離れてる場所から監視?何者だろうね?」
「まったくだ。相当な手練れだな。引き際も見事なもんだった。しかし…」
地面には血痕が残っていた。
「手傷は負ったようだな。」
「追える?」
「いや、無理だろうな。おそらくこういう裏仕事のプロだろ。この血痕以外の痕跡を残してるとは思えない。その辺は俺達素人だしな。」
「そうかぁ…強敵出現ってとこだね。気を引き締めなきゃ。」
「ああ、正面切っての戦闘ならともかく、こういう手合いはやり方が嫌らしいと思うんだ。十分気を付けて行こうぜ!」
「うん!」
俺達はショーナンに向けて南下している。そして俺はなぜかウフロンで出会った戦国時代からの転移者、ユキの事を思い出していた。
【まだまだ飛ばす。しっかりと掴まっていろ。振り落とされても我は知らぬ。】
「は、はひいいいいいいいいいいっ!!!」
「ひっ姫様!!お気を確かに!!」
ムリムリ、怖すぎて速すぎます!地上にこんなスピードで走れる生き物がいるなんてぇぇ!
どうも、このラングラー様はオーシューまでの最短距離を走っているようで途中で止めようとするものや追手などもいたのですがまるで関係ありません。あまりのスピードに対応する事が出来ないようです。国境の関所も強行突破してオーシュー国内に入りました。
「あれ?ラングラー様、カズト様じゃないんですか?」
警備兵が尋ねます。
「すみません、少々事情がありましてカズト様よりお借りしてきたのです。申し訳ありませんがお水を一杯……ああ、すみません。ありがとうございます。 ふう。王都ライズミーのセリカ女王陛下に急ぎ会わねばなりません。」
「そうですか。ラングラー様があなたを乗せている事が何よりの証となりましょう。少し、お待ち下さい。」
そう言って警備兵は屯所に戻りすぐに戻って来ました。手には何か包みを持っています。
「粗末なものですが水と食事です。道中お召し上がり下さい。陛下にお会いしたいというならばやんごとなきご身分のお方とお見受けします。このような物しか準備できませんがどうかご容赦を。」
「いえ、ありがとうございます。ここでの施し、生涯胸に留め置きます。では、失礼致します。」
警備兵の気遣いに涙が零れそうになりましたが必死で堪えました。これがセリカ陛下の国なのですね。やはり、何が何でも会わねばなりませんね。
◇◇◇
ジュリエッタです。お姉様はオーシューへと向かいました。私はライム様からお借りしたチェロキー様の背にこの身を任せ、エツリアのサーブ王の元へ急いでいます。
「チェロキー様?こちらのルートは遠回りになるのでは?」
【ええ。しかしこちらの国境守備隊は我が主殿と面識があるのです。結果的にはこちらの方が早くエツリアに入国出来るでしょう。】
「そ、そうなのですか。」
それにしてもユニコーンとはここまでの脚力があるのですね。バンドー一の名馬と言えどもチェロキー様の前では駄馬同然でしょう。それにしても…速すぎて怖いです。私と共に乗っている護衛兵もさっきから一言も発しません。余程怖いのでしょう。
「とまれえぇーーー!」
国境守備隊の方が止まるよう促してきます。
「あれ?チェロキーさん?ライムさんはどうしたんで?」
【故あって我が主よりこの娘を託されている。一刻もはやくエツリア王の元へと急ぎたい。道中止められる事の無いよう取り計らって貰えるか?】
「あ、ちょっと待って下さいね!隊長!隊長ーー!!」
守備兵さんは隊長さんを呼びに行きました。程なくして隊長さんらしき方がやってきます。
「カズト殿の使いという事で宜しいですかな?」
正確には少し違いますがここはそういう事にしておくのがいいでしょう。
「ええ、この書状をサーブ陛下へ。」
「ならばこの木札をお持ち下さい。特急の伝令が持つ木札です。これがあれば城内までは入れるはずです。」
「これは…ありがとうございます。急ぎますのでこれで失礼します。」
なかなか話の分かる方でした。これもカズト様効果なのでしょうか。どういうお方なのでしょうね。もっと詳しく知りたいものです。
◇◇◇
「なあ、ライム。さっきさ、戦闘中の俺達を監視してた奴がいたんだ。」
「へえ?それで?」
「ロックオンしてマジックミサイルぶち込んだんだけど、逃げられた。」
「へっ?カズにぃから逃げた??」
俺は無言で頷く。今までで最強の敵かも知れない。同時に興味が湧く。
「ここにいたんだ。」
ロックオンしてマジックミサイルを撃ち込んだ場所だ。
「こんな離れてる場所から監視?何者だろうね?」
「まったくだ。相当な手練れだな。引き際も見事なもんだった。しかし…」
地面には血痕が残っていた。
「手傷は負ったようだな。」
「追える?」
「いや、無理だろうな。おそらくこういう裏仕事のプロだろ。この血痕以外の痕跡を残してるとは思えない。その辺は俺達素人だしな。」
「そうかぁ…強敵出現ってとこだね。気を引き締めなきゃ。」
「ああ、正面切っての戦闘ならともかく、こういう手合いはやり方が嫌らしいと思うんだ。十分気を付けて行こうぜ!」
「うん!」
俺達はショーナンに向けて南下している。そして俺はなぜかウフロンで出会った戦国時代からの転移者、ユキの事を思い出していた。
0
お気に入りに追加
5,673
あなたにおすすめの小説
職業:冒険者。能力:サイキック。前世:日本人。
SHO
ファンタジー
彼は幼い頃から他人には無いある能力があった。彼は両親と共に出掛けた海外旅行の最中、彼の能力を気味悪がっていた両親に捨てられる。行き場のない彼は犯罪組織に攫われ傭兵団に売られ、気付いた時には一流の傭兵になっていた。しかし紛争地域での作戦で彼の所属していた外人部隊は見捨てられ全滅してしまう。
そして彼は前世の記憶と能力を持ったまま新たな生を受けるがそこでも彼は両親に疎まれる。
そんな彼が拾った1人の少女。彼女もまた特異な存在だった。
本作品は『いや、自由に生きろって言われても。』のスピンオフ的位置付けになっております。興味を持たれた方は『いや、自由…』の方もお読み頂けると作者が喜びます。
2017.2.26 完結しました。ご愛読ありがとうございました。
本作品は小説家になろうでも投稿されています。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。
暇野無学
ファンタジー
馬鹿の巻き添えで異世界へ、召喚した神様は予定外だと魔法も授けずにテイマー神に丸投げ。テイマー神もやる気無しで、最低限のことを伝えて地上に降ろされた。
テイマーとしての能力は最低の1だが、頼りは二柱の神の加護だけと思ったら、テイマーの能力にも加護が付いていた。
無責任に放り出された俺は、何時か帰れることを願って生き延びることに専念することに。
転生したら死にそうな孤児だった
佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。
保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。
やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。
悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。
世界は、意外と優しいのです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。