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105話 名付け親って大変だ

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 三戸が仮説を語り終えたところで、更に三戸が締めくくる。

「まあ、いくら仮説を立てたところで、結局はアンジーの言った通りだよ。やる事は変わらねえ」

 そんな三戸の言葉に全員が同意する。極論を言えば、ここに骨を埋めるつもりでアダムとエヴァを守り切れば、目的を果たせる可能性だってある。

「ところで、こいつらの呼称とか、決めてあるのか?」

 三戸が四体のデーモンを見ながら、アスキーに問いかける。

「彼等をどう呼称するかという事なら、君とかキミとか、そう、……キミ達! とかだね! キラーン

 もはやキラーンという効果音が本当に聞こえてきそうなレベルで白い歯を輝かせるアスキーに、三戸は眉間を押さえながら首を振る。

「そりゃ非常に便利な呼称だがよ……ナイチンゲール。名前くらいつけてやったらどうだ?」
「……そうですね。ではデーモン一号、二号――」

 ――ドンドンドン!

 ナイチンゲールが言いかけている途中で、デーモン達が地団駄を踏み始めた。身長五メートルを超え、体重も数トンはあろうかという巨体が一斉に地団駄を踏むと、冗談抜きで地震のように大地が揺れる。

「……ナイチンゲール? 嫌だって言ってるんじゃねえか?」
「……すみません、ミト。名付け親になって下さい」

 ジト目で訴える三戸に、ナイチンゲールが恥ずかしそうにプイと横を向く。そして丸投げだ。
 普段はキリリとした才女がこのような表情を見せるのは珍しい。アスキーなどはこれはご褒美とばかりにガン見している。

「仕方ねえな……俺に任せたお前らのご主人様を恨めよ?」

 そう言って、三戸が近付いて行ったのは最初に改造オペを施された地上型のデーモン。地上型とは言っても背中に小さな翼があり、もしかしたら飛べるかもしれない。そんな事を考えながら三戸はデーモンを見上げる。

(っ!? なんでそんな期待に満ちた目でこっちを見るんだよ!)

 あまりにもキラキラと輝く瞳で見つめられ、三戸がちょっと引いてしまうが、デーモンはそれでも期待を込めて三戸を見つめる。

「お前はエレファントだ」

 エレファントと名付けられたデーモンは、両手を天に突きあげ全力で喜びを表現している。三戸が某空を飛ぶ子象を連想したのは秘密だ。
 残るのは飛行型のデーモン三体。全員が虎牢関で戦ったデーモンとよく似た、猛禽類が二足歩行しているような外見だ。ただし、翼とは別に両腕があるのが鳥とは違っている。
 そしてこの三体も、先程のエレファントと同じようにつぶらな瞳でステキな名前を待っている。

(こいつら猛禽類っぽいからな……)

「んじゃあ、左のお前から、イーグル、ホーク、ファルコンだ」

 三戸にそう名付けられた三体は、小躍りして喜んでいる。

(懐かれると猛獣でも可愛いと思えるっていうのは、ちょっと分かる気がするな)

 喜ぶデーモン達を見ながらそんな事を思う三戸だった。

*****

 命名の儀式を終えた三戸とアンジーは、リチャード達が設営した防壁や砲台などを確認しに来ている。細かい修正をする為に、リチャードと関羽も同行だ。

「滑走路防衛用にciwsを両サイドに並べて、城壁の砲台には速射砲でいい感じだな」
「はいっ! これはなかなかの防御力です!」

 防壁を破られた場合にはciwsがあるが、防壁外の対地上戦力に対しての火器は複数の速射砲のみ。やや汎用性に欠けるのではないかという懸念もありそうなものだが、この基地は森の中。つまり、関羽と青龍の独壇場だ。敵地上戦力は近付く事すら困難だろう。

 こうして次々と火器を設置していくアンジーだが、その後にふよふよと浮かびながらピッタリと付いていくミニチュアのファントムがいた。
 一基設置するごとに、アンジーから何かを受信しているような、そんな風に見える。火器管制の為のデータをインストールでもしているのだろうか。
 そんな光景はどこかほんわかとしていて、敵を滅ぼす兵器を起動させる為の準備だという事を忘れさせてしまう。

「マスター! ふぁむちゃんへのデータ移管、完了ですっ!」
「おう、ご苦労さん……ふぁむちゃん?」
「はいっ! ふぁんとむちゃん、略してふぁむちゃんです!」

 アンジーがふぁむちゃんを紹介している間、ふぁむちゃんはアンジーの背中に隠れたり、チラリと三戸を窺う素振りを見せたりと、形はデフォルメされた飛行機なのだが中々に表情豊かだ。

「そうか。基地の防衛は頼んだぞ、ふぁむちゃん」
「――!」

 三戸がそう声を掛けると、ふぁむちゃんはアンジーの背中から出てきて、三戸の周りを飛び回った。どうやら任せろと言っているらしい。

「アンジー、ふぁむちゃんの処理能力にまだ余裕はあるか?」
「そうですね……誘導兵器の類なら、まだ若干詰め込んでも行けそうです!」
「そうか。じゃあ、アレを設置しよう」

 そう言って三戸はリチャードに何やら説明を始めるのだった。
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