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AD1189
15話 バトルマニア達
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「なるほど。双方から英雄と目されていたあんた達がこの場にいるのはなんとなく理解はできる。だが、あんた達だって神様んトコで話を聞いて、その上でここに来てるんだろう? それがなんで一騎打ちなんてしてるんだよ?」
三戸は本当に意味が分からなかった。関羽と張角の時とは事情が違う。彼等は手段が違うだけで、魔物の殲滅という目標は共通していた。敵対に近い形だったのは、張角の手段が非道に過ぎていた為だ。
しかしこの二人は何か違う。争う事を面白がっている様にも見える。
「フハハハハ! 若造! この獅子心王に向かってその不遜な物言い! 気に入ったぞ!」
『若造』の所でアンジーから殺気が漏れ出したが、三戸はそれを制する。これは三戸を見極める為のリチャード一世の釣りだ。三戸はそれを見抜いている。その証拠に、嘲るような視線がアンジーを制した所で感心したような視線に変わった。
「ほう……」
一方でサラディンの方は心底不思議そうな顔だ。
「お若いの。何もそう不思議な事ではあるまい。こやつと儂は生前は互いに認め合った好敵手。それがこうして再び相まみえたのだ。戦う以外の選択肢がどこにある?」
「はぁ……」
三戸は眉間を押さえて頭を振る。つまるところ、この二人はバトルマニアという奴なのだろう。
「うむ。余は元々信仰心は薄いのでな。十字軍遠征に従軍したのは、戦で存分に我が武を振るいたかったからなのだ。それに、エルサレム奪還というお題目に関係なく、利権に走る輩も多いのでな。余は余で勝手にやらせてもらった。そこで出会ったのがこの男よ」
「儂はこやつとは違って信仰の元戦っておった。じゃが、この男との戦は面白くてのお。聖地での攻防戦にてまみえたのがこの男で良かったと思っとる」
こういう脳筋タイプには基本的に力を示すのが一番手っ取り早いのだが、三戸の戦いは手加減できるものではない。一発発砲するだけで、相手は運が悪ければ即死、運が良くても重症は免れない。共に魔物を倒すべき人物に重症を負わせる訳にもいかないだろう。
「ミト殿。この御仁たちの気持ち、それがしには理解できる。目の前に呂布や張遼が居たならそれがしも血が騒ぐであろうからな」
こっちにもいたか、と三戸は呆れてしまう。まさかの関羽の裏切りに肩を落とす三戸に、アンジーとジャンヌがポンポンと肩を叩き頭を振る。諦めろ、と。
「要するに、互いの武を競い合いたいんだよな、あんた達は?」
三戸は二人の目を見据えて言う。
「まぁ、そういう事だな。貴様もそうだろう? サラディンよ」
「そうじゃな。戦略や戦術にて競うのも悪くはないが、配下の能力次第で結果も変わる事もあるじゃろう? 一騎打ちならば分かり易く雌雄を決する事ができると言うものじゃ」
うむうむ、と頷く関羽を横目に、三戸は深く溜息を一つ。
「それなら、奴らを多く狩った方が勝ちって事でどうだ?」
アンジーのレーダーと同期化している情報が、三戸の網膜に流れてきている。魔物の群れが接近中だ。丁度いいタイミング。
「フハハハハ! よかろう、乗った!」
「うむ、ここはお若いの、お主の話に乗ってやろう」
「ここはひとつ、それがしも参戦させていただこう!」
「「「え?」」」
どうやら関羽は我慢ができなかったらしい。
△▼△
「やれやれ。武人ってのはみんなあんなのばっかりなのかねえ…」
「みっ、ミト! 私は違いますからね!?」
「私はマスターがあのお三方に引きずり込まれないか、心配です……」
「俺は別に戦闘種族じゃねえからな?強え奴見たってワクワクしねえからな?」
三戸は草原に胡坐をかき、頬杖をつきながら三人の戦闘を観戦している。両隣にアンジーとジャンヌが座っている格好だ。今の所、三人が魔物を圧倒しているため、呑気な会話が続いている。
「ミトは身体が若返ったと言っていましたが心はどうなのです? こうして接していると、大人の男性の落ち着きがあるようですが」
「ああ、基本的に心はおっさんのまんまだな」
「私は……マスターの様な大人の男性が好みです。ウフフフ♪」
このような緊張感の欠片も無い会話をしながらも、ニヨニヨしていたアンジーはレーダーから意識を外してはいないし、情報は三戸にもリンクさせている。
「マスター、増援ですね」
「そうだな。俺達も出るか」
レーダーに映る魔物の反応が多数。このままあの三人に任せようかとも思ったが、思う所があり三戸は出撃を選択した。
「今回は空中戦で行こうじゃないか」
三戸の唇が弧を描く。
三戸は本当に意味が分からなかった。関羽と張角の時とは事情が違う。彼等は手段が違うだけで、魔物の殲滅という目標は共通していた。敵対に近い形だったのは、張角の手段が非道に過ぎていた為だ。
しかしこの二人は何か違う。争う事を面白がっている様にも見える。
「フハハハハ! 若造! この獅子心王に向かってその不遜な物言い! 気に入ったぞ!」
『若造』の所でアンジーから殺気が漏れ出したが、三戸はそれを制する。これは三戸を見極める為のリチャード一世の釣りだ。三戸はそれを見抜いている。その証拠に、嘲るような視線がアンジーを制した所で感心したような視線に変わった。
「ほう……」
一方でサラディンの方は心底不思議そうな顔だ。
「お若いの。何もそう不思議な事ではあるまい。こやつと儂は生前は互いに認め合った好敵手。それがこうして再び相まみえたのだ。戦う以外の選択肢がどこにある?」
「はぁ……」
三戸は眉間を押さえて頭を振る。つまるところ、この二人はバトルマニアという奴なのだろう。
「うむ。余は元々信仰心は薄いのでな。十字軍遠征に従軍したのは、戦で存分に我が武を振るいたかったからなのだ。それに、エルサレム奪還というお題目に関係なく、利権に走る輩も多いのでな。余は余で勝手にやらせてもらった。そこで出会ったのがこの男よ」
「儂はこやつとは違って信仰の元戦っておった。じゃが、この男との戦は面白くてのお。聖地での攻防戦にてまみえたのがこの男で良かったと思っとる」
こういう脳筋タイプには基本的に力を示すのが一番手っ取り早いのだが、三戸の戦いは手加減できるものではない。一発発砲するだけで、相手は運が悪ければ即死、運が良くても重症は免れない。共に魔物を倒すべき人物に重症を負わせる訳にもいかないだろう。
「ミト殿。この御仁たちの気持ち、それがしには理解できる。目の前に呂布や張遼が居たならそれがしも血が騒ぐであろうからな」
こっちにもいたか、と三戸は呆れてしまう。まさかの関羽の裏切りに肩を落とす三戸に、アンジーとジャンヌがポンポンと肩を叩き頭を振る。諦めろ、と。
「要するに、互いの武を競い合いたいんだよな、あんた達は?」
三戸は二人の目を見据えて言う。
「まぁ、そういう事だな。貴様もそうだろう? サラディンよ」
「そうじゃな。戦略や戦術にて競うのも悪くはないが、配下の能力次第で結果も変わる事もあるじゃろう? 一騎打ちならば分かり易く雌雄を決する事ができると言うものじゃ」
うむうむ、と頷く関羽を横目に、三戸は深く溜息を一つ。
「それなら、奴らを多く狩った方が勝ちって事でどうだ?」
アンジーのレーダーと同期化している情報が、三戸の網膜に流れてきている。魔物の群れが接近中だ。丁度いいタイミング。
「フハハハハ! よかろう、乗った!」
「うむ、ここはお若いの、お主の話に乗ってやろう」
「ここはひとつ、それがしも参戦させていただこう!」
「「「え?」」」
どうやら関羽は我慢ができなかったらしい。
△▼△
「やれやれ。武人ってのはみんなあんなのばっかりなのかねえ…」
「みっ、ミト! 私は違いますからね!?」
「私はマスターがあのお三方に引きずり込まれないか、心配です……」
「俺は別に戦闘種族じゃねえからな?強え奴見たってワクワクしねえからな?」
三戸は草原に胡坐をかき、頬杖をつきながら三人の戦闘を観戦している。両隣にアンジーとジャンヌが座っている格好だ。今の所、三人が魔物を圧倒しているため、呑気な会話が続いている。
「ミトは身体が若返ったと言っていましたが心はどうなのです? こうして接していると、大人の男性の落ち着きがあるようですが」
「ああ、基本的に心はおっさんのまんまだな」
「私は……マスターの様な大人の男性が好みです。ウフフフ♪」
このような緊張感の欠片も無い会話をしながらも、ニヨニヨしていたアンジーはレーダーから意識を外してはいないし、情報は三戸にもリンクさせている。
「マスター、増援ですね」
「そうだな。俺達も出るか」
レーダーに映る魔物の反応が多数。このままあの三人に任せようかとも思ったが、思う所があり三戸は出撃を選択した。
「今回は空中戦で行こうじゃないか」
三戸の唇が弧を描く。
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