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四章

マザートレント戦、開幕!

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 ヨシュア君&シェラさんコンビ、ノワール、アーテル、そして僕でそれぞれサテライトトレントを一本ずつ倒し、残るはマザートレントのみ。
 ちなみに素材を取れない状態にしちゃった僕とヨシュア君達に成り代わって、ノワールとアーテルがそれぞれ希少な素材を手に入れてくれた。あとでいっぱいモフモフしてあげよう。

「さて主人よ、どう攻める?」
「さあ、どうしようかなあ……アーテルならどうする?」

 アーテルの質問にそのまま返す。あんまり答えは期待してないけどね。

「そんなもの、正面から突っ込んで殴ればいいだろう?」
「それが出来るのはこの中じゃ君とノワールだけだよ……」
「? 主人も出来るだろう?」

 そんな美人顔を不思議そうにするんじゃない。

「僕は一応魔法使いなんだよ。武闘派じゃない」
「「「「またまたぁ?」」」」」

 ちょっと!?
 ノワールやシェラさんまで!?

「その短双戟でソード盾剣士ソードディフェンダーの私を圧倒するのにかい?」
「それは身体強化における魔力操作の差さ。魔法使い故の技量という事」
「あら、それでしたら魔法使いは体術や剣術においても他のジョブを圧倒してしまいますわよ?」

 ヨシュア君とシェラさんに詰め寄られてしまう。う~む、確かに彼等の言う事ももっともではあるんだけど……
 よし、こうなったら魔法使いの本領を発揮してやろうじゃないか。闇の魔導士ダーク・アデプトとしてのね!

「僕が武闘派じゃない事を証明してあげよう!」

 僕が数歩踏み込むと、マザートレントが騒めく。

「むっ!?」

 すると、猛スピードで何かが僕に飛来してくる。

「木の実!?」

 そう、木の実だ。ただ、木の実とは言え当たったらただでは済まない勢いと質量だ。これは危険だと本能が告げる。咄嗟にそれを躱すが、躱した先を狙うように次が来る。偏差射撃というヤツか。弓矢での攻撃でも使われる手法なんだけど、まさかトレントの親玉が使ってくるとはね。

「ぐっ!?」

 手にした短双戟でそれを弾き返すけど、想像以上の衝撃だ。これは当たったらタダでは済まないね。

 ――ザワザワ、ザワザワ

 天を衝くような巨木は大きく枝が広がり、太陽の光さえ遮っている。その枝が震えた。それはまるで大気を揺らすようだ。

「なんだ?」

 その枝からボトボトと大量の何かが降ってくる。いや、あれはさっき僕を襲った木の実だ。人間の頭くらいはある巨大なものだ。その木の実は落下の加速と自重で地面に埋まってしまった。
 何だ? 
 何をしたいんだ?
 イヤな予感がする。
 僕は落下を続けている木の実を回収する為、地面に出来る限り影のエリアを広げていく。そして落下したものを次々と影収納に収めていった。
 その様子に業を煮やしたのか、マザートレントは無数の木の葉の刃を降らせようと更に枝を振動させた。
 うわあ、流石にちょっと厄介だね。

「燃やし尽くす」

 僕はストックしていた数万発の魔法の中から炎弾をマザートレントに放った。千発か二千発か、あるいはそれ以上か。全ての木の葉を焼き尽くすまで放ち続ける。

「どうだ!?」

 自分でもどれだけぶち込んだかは分からない。でもどうにか葉は全て焼き尽くしたはず。

「流石はご主人様です!」

 ノワールが目をキラキラさせて駆け寄って来る。ヨシュア君やシェラさんは今の火力に巻き込まれないように少し離れた場所で目を丸くし、口をあんぐりと開けていた。アーテルは腕を組んでうんうんと頷いている。その腕に胸が乗っている。なんて凶悪なんだ。

「でもまだだよ」

 僕はみんなに注意を促すため、視線をマザートレントに向けた。

「生意気な木ですね」

 僕の視線を先を追ったノワールが苦々しく呟いた。そう、マザートレントは葉こそ全部焼け落ちたものの、枝も幹も全くのノーダメージ。あれだけの炎弾を食らって、なんてヤツだ。
 その時、今度は地響きと共に大地が揺れる。

「ご主人様!」
「ああ……厄介だね」

 先程マザートレントが降らせた木の実が、なんと芽吹いたんだ。いや、そんな生易しいものじゃない。芽が出たかと思ったその数秒後には立派なトレントに成長してしまった。
 周囲はトレントに囲まれ、僕とノワールはまるでトレントの森に囚われてしまったかのようだ。

「ショーン君!」
「主人よ! 無事か!」

 ヨシュア君とアーテルの声があちこちから反射して聞こえる。どうやら完全に分断されたみたいだね。なにしろトレントは自力で移動するふざけた木だ。僕達の背後にもいつの間にか回り込んだらしい。

「アーテル! 二人を頼む! コイツは僕とノワールで何とかする!」
「くっ……承知した! ノワール! 主人を頼むぞ!」

 この数のトレントの中に突っ込んで来ても、ヨシュア君とシェラさんには荷が勝ちすぎる。アーテルだけなら合流してくれるかもしれないけど、彼女には二人を守ってもらおう。
 聞こえたアーテルの声が凄く悔し気で、それが余計に僕の魔力を刺激する。

「さあ、ノワール。力を貸してくれ。二人でコイツを倒そう」
「はいっ!」

 トレントが騒めく森の中、僕とノワールの魔力が高まった。
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