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四章

新キャラ登場?

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 僕は固まってしまった侯爵とギルド長、副ギルド長が戻ってきたタイミングで、この綺麗なグリーンの人型をした霊体――とでも言ったらいいだろうか? とにかくシルフの説明に追われる事になった。

「サマンサ。儂はこのような報告は受けておらぬが?」

 グリペン侯爵がサマンサギルド長をじろりと横目で睨む。

「はっ、いえ! ですがギルド本部からの書状にもそのような事は……」

 ああ、ユーイングさん、わざと書かなかったのか書き忘れたのか。それともオスト公爵に気を遣ったのか。とにかくシルフの事は僕に任せられてしまった。相変わらずというか何と言うか。

「それにしても、まさか風の精霊王までも従えておるとは……」

 グリペン侯爵がそう言って深々とため息をついた。呆れているのか関心しているのか。でもそれについては訂正させてもらわなくちゃね。

「シルフは僕に従っている訳ではありませんよ。僕の、というかノワールの影の中で失った力の回復に努めているだけでして」
「うむ。こやつの影の中に潜んでおれば、邪魔も入らぬのでな」
「ですから、シルフが力を取り戻した際は僕から離れ、敵になる可能性もある訳です」

 シルフとは、精霊王達を唆した黒幕を倒すまで共闘関係を結んでいるだけだ。それが済めばまた敵同士になる事だってあり得る。だから僕とシルフはその事を侯爵に説明した。
 そうしないと、僕が精霊王まで従えているとんでもないヤツだって思われちゃうよ。

「ほう? 貴様、また我等とやり合うつもりか?」
「今度は二度と復活出来ないよう、可愛らしい小鳥にでも封印してあげましょうか?」

 だけど僕の言葉で、なぜかアーテルとノワールが殺気立つ。目が笑っていない冷たい笑顔でシルフを見据えながら、やるなら相手になるからいつでも来い、の空気を醸し出し始めた。
 そもそもノワールは四大精霊王に封印されてしまった過去があるからね。僕の手前大人しくしているだけで、別に仲良しこよしになってる訳じゃない。

「それは御免蒙るな。次に貴様等とやって負けるとまでは言わんが、それではショーンが悲しむのではないか? 我は貴様等が考えているより、この少年を気に入っているのだ」

 おっと。これは予想外だ。シルフとしても、万全の状態ではなかったとは言え一度は僕達に痛めつけられた訳で。リベンジの機会があれば狙っているものと思っていた。
 それがまさかの友好条約というか不戦条約というか。そんな感じになってきた。
 そんな一連のやり取りを見ていたグリペン侯爵は、一つ咳払いをして注目を集める。

「ショーンよ。貴公は今一つ分かっておらぬようだが、大精霊や精霊王とは、人間如きが制御できる存在ではないのだ。そこにいるアーテルとてそうだ。神獣が人間に付き従うなどありえん」
「はあ……」

 そんな事を言われても、ノワールは甘えん坊だしアーテルは食いしん坊だし。気の許せる仲間という感覚の方が遥かに強い。何なら、グランツに至ってはただのスケベ爺いと言っても過言じゃない。威厳も何もあったもんじゃないよね。
 だから僕は気の抜けた返事になってしまう。それを聞いたグリペン侯爵が心底呆れた顔をした。

「貴公は大精霊や精霊王、そして神獣を制御し得る、恐らく唯一の人間なのだ。貴公さえその気になれば、陛下とて国を譲り渡す事になろう」

 そういうものかな。でもそんなのいらないなあ。だから話を本題に戻そうか。

「そういうのは御免蒙ります。で、僕がドラケン侯爵の元へ向かえばいいのは分かりました。ですが閣下は一体何と戦われるおつもりなのでしょうか?」

 そう、グリペン侯爵は当初から武力の強化を目的としていたんだけど、肝心の敵が何者かが見えてこない。それ次第で、僕はこの人の敵になるかも知れないんだよね。

「そうさな。敵が誰かと問われれば儂にも分からぬよ。ただ、お主やデライラという失われた属性の適正者が現れたのであれば、光と闇を陥れた何者かが動くはずだ。儂はそれに備えておる」

 そうか。グリペン侯爵は比較的早い段階からグランツの調べ上げた情報を聞いていた節がある。それならばこういった準備をしているのも頷けるかな。

「では、当面は風を除く三人の精霊王とその加護を受けている公爵家が敵、という事になりますね。今女王陛下にはデライラが付いています。光の彼女がそこにいる事で、王家が攻撃対象になる事も考えられますので、僕達は急いだほうが良さそうです」
「うむ、そうしてくれるか」
「は。では僕達は早速……」

 そう言って立ち上がったところで、ドアをノックする音。
 
「父上、私です」
「うむ、入れ」

 部屋の外からの声は若い男のものだ。それに侯爵が入室の許可を出した。すると、入ってきたのは僕と同じくらいの年齢の少年だった。

「やあ、私はヨシュア・グリペン。グリペン家の次男坊さ!」

 ヨシュアと名乗った少年は、快活な笑顔を見せるのだった。
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