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三章

王都

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 麗らかな日差しを浴びながら、僕達一行は王都に向けて街道を進んでいる。例によって馬車にはタッカーさんとケルナーさん、そして僕とノワールとアーテル。
 護衛の歩兵は後続の馬車に、さらに馬車の前後を騎馬隊が守りながら進んでいる。デライラとルークスはそれぞれ馬上だ。グランツはむさくるしい男達が詰め込まれた後続の馬車の中だね。
 
 タッカーさんもケルナーさんも、オスト公の屋敷での一件で僕やデライラの特異性は理解したはずなんだけど、今までと変わらずに接してくれている。流石に護衛の兵達には闇と光の属性の話はしていないようだけどね。

「で、君はどうして僕達と一緒に来るのさ」
「弱体化している今、ヤツに抗う力はない。闇の中で回復を待つのが安全だろう?」

 僕が話しかけているのは風の精霊王シルフだ。彼、いや彼女かな? とにかくシルフが味方に付いた事で、僕は風属性の魔法を使いこなす事が出来るようになったし、デライラも魔法剣を扱えるようになった。王都のギルドに行けば、もしかしたら上級職の魔法剣士マジカル・ソードマンにジョブチェンジするかも知れないね。
 現在の彼女のジョブは剣士ソードファイターだけど、そのまま剣の道を極めると剣聖ソードマスターという上級ジョブがある。これもかなり希少なジョブだけど、魔法剣士も負けず劣らずだ。見栄えのする彼女にはお似合いのジョブだと思う。

「まさかとは思ったが、王都までの殆どの中継地点にブンドルが手を回していたとはなあ」

 タッカーさんが呆れたようにそう言う。
 オスト公の屋敷を立ってから二か所程公爵の寄子の貴族が治める街に立ち寄ったけど、その都度襲撃を受けた。いずれも宿を狙った夜襲。
 幸い、寄子の貴族達はオスト公の厳しい性格を知っているのでブンドルの甘言には乗らなかったらしいが、それでもブンドルが雇ったならず者や私兵を取り締まる事はしなかった。
 まあ、僕にとってはそれでも十分ギルティなので、襲撃者の遺体を屋敷の前に積み重ね、グリペン侯爵とオスト公爵の書状を見せつけ必要以上に脅しておいた。特にオスト公の書状の内容はブンドルの不正の告発なので、寄子の貴族は真っ青だったね。

 そしていよいよ王都が見えてきた。
 ルーブリム王国の王都、ルーバー。
 広い平野の中にある王都は、街全体が防壁に囲まれている。街が発展するに従って外周に防壁が造設されていったんだろうね。王城に辿り着くまでには三つの防壁を通過しなければならない。それぞれに門があり、厳しいチェックが入る。
 当然手続きを待つ人達で行列が出来ている。でも貴族に準ずるタッカーさんは、その行列に並ぶ事なく貴族専用の門から入る事が出来るみたいだ。護衛として雇われている僕等も当然同行だ。
 門の衛兵がブンドルに買収されてたら面倒な事になってただろうから、これはラッキーだったね。

「ギルド本部なんかの重要施設は全て第一区画にある。そこまでは一緒に行ってやれるが、そこから先は俺達は王城に行く事になるんでな」

 タッカーさんが気遣うように話しかけてきた。確かに貴族と同行している僕等に絡んでくるヤツはあんまりいないと思うけど、そこから先は注意しろって事だよね。
 ちなみに王城を中心とした区画が第一区画。そして防壁を超えて第二区画。さらに防壁を超えて第三区画。第一区画は一番古い街並みで、貴族の屋敷や様々な組織の中心的な建物が集中している。宿や各種店舗なども高級志向なので、一般市民が買い物にくるなんて事は殆どないらしい。
 第二区画は所謂軍人さん達が多いんだって。王城の喉元を押さえられる前に、第二防壁で食い止める目的なんだろうね。
 一番外側の第三区画は殆どが一般市民しかいない。一番賑わっているのがここだ。さらに第三区画の中でも東西南北にエリアが分割されていて、それぞれにお役所の分所みたいなものがあるらしい。

 さて、僕達は特にトラブルもなく第一区画の中に入る事が出来た。そして向かうはルーブリム王国冒険者ギルド本部。通称ルーバー本部。
 一行は五階建ての石造りの立派な建物に近付いていった。これがギルドの本部である事はすぐに分かった。大きな看板に『冒険者ギルドルーバー本部』って書いてあるもんね。その両サイドには剣を交差させた意匠のエンブレムがある。

 そしてその建物の前で馬車を停車させると、タッカーさんが握手を求めてきた。

「ここまでありがとうよ。十分気を付けろよ? まあ、お前らの事だから大丈夫だろうが」

 そう言って笑う彼の握手に応じ、僕も返した。

「やだなあ。僕は何もされなかったら基本的に無害な人間ですよ」
「ははは。違いない。ランクアップ試験、頑張れよ!」
「ええ、タッカーさんも」

 こうしてタッカーさん一行に別れを告げ、僕等は馬車から降りた。外で騎乗しているデライラ、ルークス、グランツも僕達に同行する。
 そしてギルドルーバー本部の扉を開いた。
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