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一章
旅立ち
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グリペン侯爵からの褒賞とスタンピード鎮圧のボーナスを頂いて、僕等は領都グリフォバーグから拠点にしている街まで戻った。
街の冒険者ギルドではそれぞれが冒険者ランクの昇格が審議され、僕を除いた全員が昇格した。
プラチナランクに上がるために王都で昇格試験が必要な僕は別として、ノワールとアーテルは特例的にゴールドに昇格した。サマンサギルド長がグリペン侯爵に対し、内々に打診していたらしいね。
ゴールドランクへの昇格自体は特に領主の許可が必要という事ではないんだけど、この二人に関しては持っている力自体が既に天災クラスだ。それに加えて人間の常識にも疎いところがある上に、見た目もいい。当然、力尽くで我が物にしようとする馬鹿者はいるだろうね。そんな馬鹿者の末路がどうなるか、考えるだに恐ろしい。
元々僕以外に人間に対しては取るに足らない存在としか見ていない二人だからね。まさに歩くトラブルメーカーという訳だ。
ゴールドランカーと知って余計なちょっかいを掛けてくるヤツはほとんどいない。だから、これは余計な血が流れないための措置なんだ。
デライラ達はどうかというと、これも特例措置がなされた。
デライラはウッドからアイアンへ二階級特進。光の力を得た彼女の実力はそんなものじゃないけど、流石にウッドから、しかも問題を起こして降格した直後だったため、それ以上のランクアップは無理があると判断されたらしい。
そしてルークス。彼もウッドからアイアンへ。一応登録したてのグランツはブロンズからという事になった。見た目がお爺ちゃんのグランツが冒険者に再登録という事で周囲からは訝しむ声も聴かれたけど、貴族の道楽として押し通したみたいだ。いやあ、世界は嘘にまみれているね!
デライラ達は僕達のパーティから離脱し、新たに『シャイン』というパーティを作った。一応和解はしたつもりだし、光属性のルークスやグランツとも秘密を共有しているため、関係は良好と言ってもいい。いいんだけど。
「あんたと一緒だと、あんたの能力に頼っちゃうでしょ? あんたの能力ってそういうものだし」
そう、僕のバフの影響下にあると本当の実力が上がらないから。そういう理由で彼女から離脱する旨を告げられた。
口には出さなかったけど、自分も光属性の適正者として、この先強大な敵と戦わなければならない不安もあるんだろうね。
デライラが望む望まないに関わらず、恐らく巻き込まれていくんだろう。僕と同じように。だからこそ、彼女はより強くならなきゃいけないと考えているろう。
△▼△
王都へ旅立つ当日。僕達は冒険者ギルドへ挨拶をしにきている。ここは国境。王都は国の中心。かなりの長旅になるため、しばらく戻る事はできない。もしかすると、戻ってくる事もできないかもしれないしね。
「僕達はこれから王都へ向かう。君達も頑張ってね。ああ、ルークスとグランツはデライラに迷惑を掛けないようにね」
「ふ、分かっているよ。ショーン様こそ、闇属性の女性達を怒らせないようにな」
くっ……ルークスめ、イケメンがそんな事を言うんじゃない。
「ふぉふぉふぉ、お嬢のビンタは痛いのでな。あまり悪さはせんよ。安心して王都へ行くがよい。ただし、王都は魔窟ぞ。十分注意するのじゃ」
好々爺の表情が一変し、鋭い目つきになったグランツがそう言う。確かに二候四伯、グリペン侯爵家以外の五家の動向も気になるしね。
「うん、忠告ありがとう。僕も潰されないように頑張るよ」
「あたしも、すぐにあんたに追いつくからね!」
デライラがビシッと指を差して僕に言う。まあ、彼女ならすぐに昇ってくるだろう。それに、彼女にはグリペン侯爵家の庇護もある。かつてマジカル・ソードマンとして名を馳せ、敵を倒し味方を癒したという祖先に、デライラを重ねたのかもしれないね。
「あたしも領主様のご先祖様みたいに、魔法も剣も使いこなしてみせるから」
そう言うデライラの表情はすっかり険がとれた、年相応の可愛らしいものだった。
ギルドに行きサマンサギルド長、イヴァン副ギルド長に挨拶をする。駆け出しの苦しい頃から優しくしてくれた受付嬢のパトラさんはなんだか寂しそうにしていたな。
「それじゃあ行ってきます」
「おお、見事プラチナランカーになって帰ってこいよ!」
「ダンジョンを潰したから、この街の脅威もだいぶ少なくなったわ。安心して行ってきなさい」
「ショーンさん! 頑張ってくださいね!」
僕の出立の挨拶に、イヴァン副ギルド長、サマンサギルド長、パトラさんがそれぞれ励ましの言葉をかけてくれた。
「さあ、行こうか、ノワール、アーテル」
「はい!」
「うむ!」
見送りに来てくれた面々に軽く頭を下げ、僕達三人はこの街を後にする。さて、王都では何が待ち構えている事やら。
――第一部・完――
街の冒険者ギルドではそれぞれが冒険者ランクの昇格が審議され、僕を除いた全員が昇格した。
プラチナランクに上がるために王都で昇格試験が必要な僕は別として、ノワールとアーテルは特例的にゴールドに昇格した。サマンサギルド長がグリペン侯爵に対し、内々に打診していたらしいね。
ゴールドランクへの昇格自体は特に領主の許可が必要という事ではないんだけど、この二人に関しては持っている力自体が既に天災クラスだ。それに加えて人間の常識にも疎いところがある上に、見た目もいい。当然、力尽くで我が物にしようとする馬鹿者はいるだろうね。そんな馬鹿者の末路がどうなるか、考えるだに恐ろしい。
元々僕以外に人間に対しては取るに足らない存在としか見ていない二人だからね。まさに歩くトラブルメーカーという訳だ。
ゴールドランカーと知って余計なちょっかいを掛けてくるヤツはほとんどいない。だから、これは余計な血が流れないための措置なんだ。
デライラ達はどうかというと、これも特例措置がなされた。
デライラはウッドからアイアンへ二階級特進。光の力を得た彼女の実力はそんなものじゃないけど、流石にウッドから、しかも問題を起こして降格した直後だったため、それ以上のランクアップは無理があると判断されたらしい。
そしてルークス。彼もウッドからアイアンへ。一応登録したてのグランツはブロンズからという事になった。見た目がお爺ちゃんのグランツが冒険者に再登録という事で周囲からは訝しむ声も聴かれたけど、貴族の道楽として押し通したみたいだ。いやあ、世界は嘘にまみれているね!
デライラ達は僕達のパーティから離脱し、新たに『シャイン』というパーティを作った。一応和解はしたつもりだし、光属性のルークスやグランツとも秘密を共有しているため、関係は良好と言ってもいい。いいんだけど。
「あんたと一緒だと、あんたの能力に頼っちゃうでしょ? あんたの能力ってそういうものだし」
そう、僕のバフの影響下にあると本当の実力が上がらないから。そういう理由で彼女から離脱する旨を告げられた。
口には出さなかったけど、自分も光属性の適正者として、この先強大な敵と戦わなければならない不安もあるんだろうね。
デライラが望む望まないに関わらず、恐らく巻き込まれていくんだろう。僕と同じように。だからこそ、彼女はより強くならなきゃいけないと考えているろう。
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王都へ旅立つ当日。僕達は冒険者ギルドへ挨拶をしにきている。ここは国境。王都は国の中心。かなりの長旅になるため、しばらく戻る事はできない。もしかすると、戻ってくる事もできないかもしれないしね。
「僕達はこれから王都へ向かう。君達も頑張ってね。ああ、ルークスとグランツはデライラに迷惑を掛けないようにね」
「ふ、分かっているよ。ショーン様こそ、闇属性の女性達を怒らせないようにな」
くっ……ルークスめ、イケメンがそんな事を言うんじゃない。
「ふぉふぉふぉ、お嬢のビンタは痛いのでな。あまり悪さはせんよ。安心して王都へ行くがよい。ただし、王都は魔窟ぞ。十分注意するのじゃ」
好々爺の表情が一変し、鋭い目つきになったグランツがそう言う。確かに二候四伯、グリペン侯爵家以外の五家の動向も気になるしね。
「うん、忠告ありがとう。僕も潰されないように頑張るよ」
「あたしも、すぐにあんたに追いつくからね!」
デライラがビシッと指を差して僕に言う。まあ、彼女ならすぐに昇ってくるだろう。それに、彼女にはグリペン侯爵家の庇護もある。かつてマジカル・ソードマンとして名を馳せ、敵を倒し味方を癒したという祖先に、デライラを重ねたのかもしれないね。
「あたしも領主様のご先祖様みたいに、魔法も剣も使いこなしてみせるから」
そう言うデライラの表情はすっかり険がとれた、年相応の可愛らしいものだった。
ギルドに行きサマンサギルド長、イヴァン副ギルド長に挨拶をする。駆け出しの苦しい頃から優しくしてくれた受付嬢のパトラさんはなんだか寂しそうにしていたな。
「それじゃあ行ってきます」
「おお、見事プラチナランカーになって帰ってこいよ!」
「ダンジョンを潰したから、この街の脅威もだいぶ少なくなったわ。安心して行ってきなさい」
「ショーンさん! 頑張ってくださいね!」
僕の出立の挨拶に、イヴァン副ギルド長、サマンサギルド長、パトラさんがそれぞれ励ましの言葉をかけてくれた。
「さあ、行こうか、ノワール、アーテル」
「はい!」
「うむ!」
見送りに来てくれた面々に軽く頭を下げ、僕達三人はこの街を後にする。さて、王都では何が待ち構えている事やら。
――第一部・完――
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