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一章
断罪
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物音一つ立てずに、一瞬でオークの背後に現れた僕達は、然程労する事なくオークの急所へ一撃を浴びせた。
ノワールは斧使いへ向かっていたオークへ。僕はデライラを吹き飛ばしたオークへ。
彼女はジャンプしての後頭部へ回し蹴り。僕もこっそり身体強化魔法を掛けて、背中からオークの心臓を短槍で一突き。
ノワールの蹴りでオークの首は折れ、僕の突きでオークは吐血しながら倒れ伏す。
一撃で仕留めた手応えを感じたのか、ノワールは振り返る事なく最後の一体のオークへと走り、臆病者の僕はしっかりと倒れたオークにトドメを刺した。
「ショーン……?」
突然目の前のオークが倒れた事で、ポカンと立ちすくむデライラ。
「助けはいらなかったかい?」
「ううん……ありがとう」
二本の短剣で交差させるように斬撃をくらわし、オークを仕留めていたノワールにチラリと視線を流しながら、デライラがホッとした表情で礼を言ってきた。
さて、ここからが本番だね。
「ところで……」
僕は他のパーティメンバーに次々と視線を投げかけながら言った。
「どうしてあなた方がここにいるんですか? ブロンズランクのパーティは上層階の攻略だったはずですが」
「そ、それは! アレだ、お前らの事が心配で……」
「オーク一匹倒せないウデでですか?」
「ぐ……」
僕が斧使いの男と話している間、弓使いの男がデライラの元へと移動していく。ふん、彼女を人質にするつもりかな?
でもそんな事は織り込み済み。いつの間にか、ノワールが弓使いの影に潜り込み、一緒に移動しているようだ。
「ふぅ……皆さん、そんなに僕が邪魔ですか?」
そんな僕の質問に、みんなは一瞬唖然とするが、すぐに下卑た笑みを浮かべ始める。
「はっ……分かってんなら話は早え。てめえがいるとよぉ、デライラの調子が出なくて俺達も困ってんだよ」
「そうそう、だからてめえはここで大人しく死んでくんねえ?」
斧使いと双剣使いが武器を構えながら僕に近付いてくる。この人達は真性のバカなのかな?
ポーターの二人が証人になる訳で、これがギルドに知られれば彼等の人生はジ・エンドになるんだけど。ま、いいか。どうせ彼等はこの場で終わるんだし。
「えーと、ポーターの君達。ここで起こる事をしっかり覚えておいてね? それでギルドにしっかり報告する事。僕がこれからする事は、自分の身を守る為に必要な事だった。いいね?」
斧使いや双剣使いの台詞から、今ここで起ころうとしている事がとんでもなく不穏な事を察して、緊張した面持ちのポーター二人。
ここから逃げ出そうにも、彼等だけでこの地下三階層から地上へ戻るのは無理だろうから、ある意味彼等も詰んでいる。まあ、それは後で考えるか。
僕がポーター達に話しかけたところで、連中がチッと舌打ちした。本気で彼等の事を忘れていたっぽいな。呆れた奴らだね。
「待って! あんた達、本気なの? ショーン達はオークを瞬殺したのよ!? 勝てる訳がない! やめなさい!」
へえ?
デライラは意外と冷静に状況を分析出来てたみたいだ。うん。彼女の言う通り、僕らが負ける要素なんて一パーセントもない。
「ところがそうでもないんだよ!」
「えっ!?」
デライラの後ろに回っていた弓使いが、彼女の背中にナイフを突き付ける。デライラも、まさか自分のパーティメンバーがこのような蛮行に及ぶとは思いもしなかったようで、完全に油断していた。
「まあ、こういう訳だ。どうだ? 幼馴染を人質に取られたら、テメエも手出し出来ねえだろ? それから、あの黒い女はどこだ?」
斧使いが勝ち誇ったようにそう言う。
「ああ、彼女なら、ほら」
僕は弓使いの方に目を向けた。釣られて斧使いと双剣使いも彼の方に視線を動かした。そこには、ノワールに蹴り飛ばされて昏倒している弓使いの姿があった。
なにせ、オークの首を一撃でへし折る蹴りだからね。まだ生きてるかな?
「なっ!?」
「いつの間に?」
突如姿を現したノワールの一撃で、一挙に形勢が逆転した事を悟った斧使いと双剣使いは、どうやら僕に標的を定めたようだ。
「僕がやるから」
すかさず僕の援護に入ろうとするノワールと、戸惑っているデライラを制し、僕は短槍を構えた。
「残滓のクセに生意気なんだよォォォ!」
先に仕掛けて来たのはスピードに勝る双剣使い。
「土の精霊よ、水の精霊よ。僕の命令を聞け」
縛の魔力を土の水の精霊に分け与えた。以前はいう事を聞いてくれなかった精霊達も、大精霊たるノワールの主人である僕には逆らう事ができない。精霊達は僕のイメージ通りに魔法を発動させた。
双剣使いの足下が、瞬時に泥沼のようになる。僕は魔法で地面を柔らかくした上で、たっぷりと水分を含ませた。結果出来上がるのが泥沼だ。
双剣使いは腰まで泥沼に浸かって身動きが出来なくなる。
「バカな! 残滓が魔法だと!?」
「クッソォ!」
双剣使いのピンチに、斧使いが僕に向かって突進してくる。彼は盾持ちの前衛だからね、正面切っての迎撃は下策。でも敢えて、面食らわせてやろう。
「火の精霊よ。ヤツを止めろ」
すると、僕の頭上に人間の頭程の大きさの火球が出現した。その内の一つが斧使いの正面から顔面目掛けてすっ飛んでいった。でも反応できないスピードじゃない。
「ふん! こんなモノ!」
ヤツは盾を構えてその火球を受ける。だけど、もう一つの火球は大きく弧を描いてヤツの後方に回り込み、そのまま背中に直撃した。
「ぐあああ! あちぃ! あちぃぃぃ!」
物理的な衝撃と、火による熱量のダメージ。死なない程度に威力は絞っているから、ヤツはその苦しみを継続的に受ける事になる。
せめて背中で燃えている火を消そうと、斧使いは双剣使いが嵌って抜け出せないでいる泥沼に転がり込んだ。
これで、全員無力化完了。
さて、これからじっくりと断罪していこうか。
ノワールは斧使いへ向かっていたオークへ。僕はデライラを吹き飛ばしたオークへ。
彼女はジャンプしての後頭部へ回し蹴り。僕もこっそり身体強化魔法を掛けて、背中からオークの心臓を短槍で一突き。
ノワールの蹴りでオークの首は折れ、僕の突きでオークは吐血しながら倒れ伏す。
一撃で仕留めた手応えを感じたのか、ノワールは振り返る事なく最後の一体のオークへと走り、臆病者の僕はしっかりと倒れたオークにトドメを刺した。
「ショーン……?」
突然目の前のオークが倒れた事で、ポカンと立ちすくむデライラ。
「助けはいらなかったかい?」
「ううん……ありがとう」
二本の短剣で交差させるように斬撃をくらわし、オークを仕留めていたノワールにチラリと視線を流しながら、デライラがホッとした表情で礼を言ってきた。
さて、ここからが本番だね。
「ところで……」
僕は他のパーティメンバーに次々と視線を投げかけながら言った。
「どうしてあなた方がここにいるんですか? ブロンズランクのパーティは上層階の攻略だったはずですが」
「そ、それは! アレだ、お前らの事が心配で……」
「オーク一匹倒せないウデでですか?」
「ぐ……」
僕が斧使いの男と話している間、弓使いの男がデライラの元へと移動していく。ふん、彼女を人質にするつもりかな?
でもそんな事は織り込み済み。いつの間にか、ノワールが弓使いの影に潜り込み、一緒に移動しているようだ。
「ふぅ……皆さん、そんなに僕が邪魔ですか?」
そんな僕の質問に、みんなは一瞬唖然とするが、すぐに下卑た笑みを浮かべ始める。
「はっ……分かってんなら話は早え。てめえがいるとよぉ、デライラの調子が出なくて俺達も困ってんだよ」
「そうそう、だからてめえはここで大人しく死んでくんねえ?」
斧使いと双剣使いが武器を構えながら僕に近付いてくる。この人達は真性のバカなのかな?
ポーターの二人が証人になる訳で、これがギルドに知られれば彼等の人生はジ・エンドになるんだけど。ま、いいか。どうせ彼等はこの場で終わるんだし。
「えーと、ポーターの君達。ここで起こる事をしっかり覚えておいてね? それでギルドにしっかり報告する事。僕がこれからする事は、自分の身を守る為に必要な事だった。いいね?」
斧使いや双剣使いの台詞から、今ここで起ころうとしている事がとんでもなく不穏な事を察して、緊張した面持ちのポーター二人。
ここから逃げ出そうにも、彼等だけでこの地下三階層から地上へ戻るのは無理だろうから、ある意味彼等も詰んでいる。まあ、それは後で考えるか。
僕がポーター達に話しかけたところで、連中がチッと舌打ちした。本気で彼等の事を忘れていたっぽいな。呆れた奴らだね。
「待って! あんた達、本気なの? ショーン達はオークを瞬殺したのよ!? 勝てる訳がない! やめなさい!」
へえ?
デライラは意外と冷静に状況を分析出来てたみたいだ。うん。彼女の言う通り、僕らが負ける要素なんて一パーセントもない。
「ところがそうでもないんだよ!」
「えっ!?」
デライラの後ろに回っていた弓使いが、彼女の背中にナイフを突き付ける。デライラも、まさか自分のパーティメンバーがこのような蛮行に及ぶとは思いもしなかったようで、完全に油断していた。
「まあ、こういう訳だ。どうだ? 幼馴染を人質に取られたら、テメエも手出し出来ねえだろ? それから、あの黒い女はどこだ?」
斧使いが勝ち誇ったようにそう言う。
「ああ、彼女なら、ほら」
僕は弓使いの方に目を向けた。釣られて斧使いと双剣使いも彼の方に視線を動かした。そこには、ノワールに蹴り飛ばされて昏倒している弓使いの姿があった。
なにせ、オークの首を一撃でへし折る蹴りだからね。まだ生きてるかな?
「なっ!?」
「いつの間に?」
突如姿を現したノワールの一撃で、一挙に形勢が逆転した事を悟った斧使いと双剣使いは、どうやら僕に標的を定めたようだ。
「僕がやるから」
すかさず僕の援護に入ろうとするノワールと、戸惑っているデライラを制し、僕は短槍を構えた。
「残滓のクセに生意気なんだよォォォ!」
先に仕掛けて来たのはスピードに勝る双剣使い。
「土の精霊よ、水の精霊よ。僕の命令を聞け」
縛の魔力を土の水の精霊に分け与えた。以前はいう事を聞いてくれなかった精霊達も、大精霊たるノワールの主人である僕には逆らう事ができない。精霊達は僕のイメージ通りに魔法を発動させた。
双剣使いの足下が、瞬時に泥沼のようになる。僕は魔法で地面を柔らかくした上で、たっぷりと水分を含ませた。結果出来上がるのが泥沼だ。
双剣使いは腰まで泥沼に浸かって身動きが出来なくなる。
「バカな! 残滓が魔法だと!?」
「クッソォ!」
双剣使いのピンチに、斧使いが僕に向かって突進してくる。彼は盾持ちの前衛だからね、正面切っての迎撃は下策。でも敢えて、面食らわせてやろう。
「火の精霊よ。ヤツを止めろ」
すると、僕の頭上に人間の頭程の大きさの火球が出現した。その内の一つが斧使いの正面から顔面目掛けてすっ飛んでいった。でも反応できないスピードじゃない。
「ふん! こんなモノ!」
ヤツは盾を構えてその火球を受ける。だけど、もう一つの火球は大きく弧を描いてヤツの後方に回り込み、そのまま背中に直撃した。
「ぐあああ! あちぃ! あちぃぃぃ!」
物理的な衝撃と、火による熱量のダメージ。死なない程度に威力は絞っているから、ヤツはその苦しみを継続的に受ける事になる。
せめて背中で燃えている火を消そうと、斧使いは双剣使いが嵌って抜け出せないでいる泥沼に転がり込んだ。
これで、全員無力化完了。
さて、これからじっくりと断罪していこうか。
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