遊び人の恋

猫原

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第二章

2-9

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縁側に立ち、慶ちゃんから薫からの手紙を受け取り、はやる気持ちで薫からの手紙を開いた。すると慶ちゃんは頭を撫でるよう催促するように鳴き、雪は頭を左手で撫でた。満足した表情をし、雪は両手を二回叩くと慶ちゃんは颯爽と飛び去っていく。雪はそれを見届けたあと、縁側に腰掛けると、わくわくしながら薫からの手紙を開いた。
薫は寺小屋の男の子と喧嘩をした、とあった。胸がでかい頭悪い女と叫ばれ、腹が立って殴ったらしい。大人に止められて決着は着かなかったが、あとでこっそり胸を触らせてあげたら、二度と暴言は吐かなくなり、大人しくなった。馬鹿な男には胸を触らせると効果覿面だ、とそこには書かれていた。

胸ってすごいなぁ。

雪は感心した。

胸を触らせると、男の人って大人しくなるって、なんだか凄い。
そういえば肇くんが、おっぱい好きだって言ってた。久賀様もどうやら好きらしい。

雪は晒しで巻かれた胸にそっと手をやった。晒しで潰しているせいか、胸の膨らみは成長を見せず寂しい感じだった。胸を押し潰されているせいか、息苦しく感じる事もあり、膨らみもないのなら、晒しを巻かなくても良いのでは、と久賀に提案した事もあったが、ひどく怒られた記憶がある。ひどくと言っても、ゆっくりと、悟るような口調で叱られただけではあるが。
もしかしたら、と雪は思った。
久賀からのお願いは、大好きだと言う胸に関してではないだろうか?

揉むのかな?
それって楽しいの?

雪は首を捻った。考えても考えてもどういう状況か全く掴めない。自分の胸を触っても面白くもなんともないのだ。
しかし、久賀から一向にお願いの話をされる事はなく、穏やかな日々が進んでいた。少し違うといえば、久賀は由希の元へ通う日数が減って、毎晩雪と寝ているくらいである。

喧嘩したのかな…。

雪の目から見て、二人は普通に接していた。

でも、前よりも冷えた空気が漂っているのは気のせいかな?

由希の久賀に対する接し方が前に比べて一線引いている気がしてならない。
しかし由希は変わらず雪に優しく、雪にとって優しいままの素敵なお姉さんのままだった。

僕の存在がそうさせていたら、どうしよう…。

自分の存在が二人の関係に影を落としていたら————。

雪は首を左右に振ると、雪は続きを読む為に手紙に視線を落とすと、後に続く文章に、目を見開いてしまった。

『明日、この神社で会えない?』

と神社の地図が書かれていた。
この神社で慶ちゃんからの手紙を初めて受け取った、とも書かれていた。
雪は思わず手紙を閉じて周りを見渡した。
久賀は隼馬の道場を手伝いに出ており、まだ帰ってきていない。帰ってくるにはまだ早いし、自分がこの手紙を読んで揺らいでいる事も今は悟られない。

明日…明日かぁ。

と手紙を胸に抱きしめながら、雪は縁側に転がった。
薫の手紙は常に面白かった。手紙から薫の性格が読み取れた。御転婆で活発、率直。大人しい雪とは正反対の性格である。
最初は恋人同士とは何をするのか聞き出して、気を使っている二人が本当は恋人同士なのだと確証を持ち、久賀から離れようとして始めた事だったが、今では純粋にこの手紙のやりとりが楽しくなっており、当初の目的を忘れつつあったが、自分の今を誰かに相談したい気持ちがあった。
薫は雪の事を手紙でしか知らないのに、薫は友達だと言ってくれるのが、非常に嬉しかった。

「手紙の相手とは会わない」

が久賀との約束だ。何かあったら心配だと言っていた。
それに、この神社の場所が、橋を渡った先にあるのだ。そこは禁止された地域だった。

「会ってお喋りしたいなぁ…」

会いたいと言う気持ちがどんどんと膨らんでくる。
会ったら絶対に楽しいだろうと確信できた。

でも久賀様との約束を破るわけには行かない。
でも、これを逃したら気まずくなって手紙の交流がなくなりそうで、それも嫌。

でも、でも、だってと縁側でゴロゴロと寝返りを何度もうった。
久賀は手紙のやりとりは一度目だけ目を通しただけで、二度目からは読んではいなかった。しかし気にはなるし、見えないところでのやりとりを基本許せない男である。今日の出来事や、雪から薫の手紙のやりとりをいつも聞き出していた。雪も不思議に思う事はなく素直に久賀に報告をしていた。
久賀にうんと甘やかされ、決められた場所で、制限付きで雪は久賀に従順に育てられていた。

やっぱり————久賀様には嘘吐けない…。

手紙を握り締めながら、考えを纏める事が出来ず天を仰いだまま、唇をぎゅっと結んだ。


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