俺とタロと小さな家

鳴神楓

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番外編

花見 2

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そうやって描き進めているうちに、ふいに隣からグーという音がした。

「あっ、すいません」

タロは慌ててお腹を押さえている。

「いやいや、俺こそ夢中になっちゃってごめんな。
 そろそろお弁当食べようか」
「はい!」

タロは元気よく返事をすると、リュックサックからお弁当を出してきた。
タロがお弁当の包みをほどいている間に、俺も自分のリュックから水筒を出して2人分のお茶を注ぐ。

「おっ、今年は巻き寿司か。
 うまそうだな。いただきます」
「はい、どうぞ。
 いただきます」

プラスチック容器に詰められた巻き寿司に2人同時に箸を伸ばす。
巻き寿司の具は定番の玉子焼き、かんぴょう、キュウリだったが、かんぴょうも玉子焼きもタロの手作りなので、地味に手間がかかっている。

「お、うまいな。
 さすがタロ」
「えへへ、ありがとうございます。
 おかずも食べてくださいね」
「うん」

タロに勧められて、俺は今度は唐揚げを食べる。
こちらも下味がしっかりついていて、冷めていてもおいしい。

「お弁当の唐揚げって、なんでこんなにおいしいんでしょうね」

タロも唐揚げを食べながら、そんなことを言う。

「不思議だよなー。
 味は揚げたての方がうまいに決まってるんだけど、弁当に入ってるのはまた別っていうか。
 やっぱり景色のいいところで食べるからかな?」
「そうかもしれませんね。
 あ、あと学さんと一緒に食べるからおいしいのかも」
「それはうちで食べる時も同じだろ?」
「あ、そうでした」
「うん、でもやっぱりタロと綺麗な景色が揃ってるからうまいのかもしれないないな」
「はいっ!」

そんなことを話しながら、俺たちは楽しく弁当を食べた。
食べ終えると、お腹がいっぱいになったタロがちょっと眠そうな顔になり始めたので、本格的に寝て犬に戻ってしまう前に、うちに帰ることにした。

「すいません……学さん、まだ絵が途中だったのに」
「いいよ、もうほとんど描けてたし。
 けどまあ、出来たらもう一回くらいは見に来たいかな。
 今度は散り始めの頃がいいな」
「じゃあ僕、次は寝ちゃっても大丈夫なように犬の姿で来ます!」

昼寝する気まんまんのタロの宣言に、俺はちょっと笑ってしまう。

「けどそれもいいかもな。
 今日もぽかぽかしてて気持ちよかったから、実は俺もちょっと昼寝したかった」
「じゃあ次はお昼寝の用意してきましょう。
 約束ですよ!」
「うん、約束な」

そんなささやかな約束をしつつ、俺たちはうちへと帰って行った。

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