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本編
酒盛り 3
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「えーと、一応禰宜さんが後でとりなしてくれることになってるので、ここだけの話ということでお願いします」
そうして僕は、みんなに昨日の夜の出来事と今朝宮司室に呼ばれた時の話をした。
話し終えると、みな「それはひどい」と自分のことのように憤ってくれた。
「タイミングも悪かったな。
権宮司がインフルエンザで休んでなければ、話ぐらいは聞いてもらえただろうに」
「あー、そうかもしれませんね」
同じ神社の先輩の言葉に、僕もうなずいた。
他の人たちも次々に口を開く。
「俺、その宮司の娘と同級生だけど、あいつ、学生の頃から男関係のトラブル多いので有名だったんだよ。
中芝みたいに顔がいいやつは狙われるかもしれないから気をつけろと教えておいてやればよかったな」
「しかし中芝お前、また年上の女とトラブったのかよ。
大学の時のストーカーも年上だったし、付き合ってもないのに彼女だって言いふらされたのも年上だったよな。
研修先の神社で迫られたのも年上の巫女じゃなかったっけ?」
「うん……」
ちなみにみんなには言ってないが、高校の時に告白されて断ったら、その子の友達数人に囲まれて「なんで断るのよ」と責められた時も、相手は部の先輩だった。
なぜだかわからないが、僕は昔から年上の女性と恋愛関係の、しかも一方的に惚れられた上でのトラブルが多く、正直トラウマになりそうなレベルだ。
「やっぱ、中芝の顔がなー。
イケメンのわりにおとなしそうに見えるから、年下好きの女に狙われやすいんじゃないか?」
「えー……。
そんなこと言われても、顔はどうしようもありませんよ」
「お前はもうずっと蘭陵王の面でもかぶってろよ。
そうしたら年上の女にもなめられないですむから」
蘭陵王というのは舞楽の1つで、優しげな顔立ちの美男子だった蘭陵王が、敵になめられないように恐ろしい顔の面をかぶっていたという逸話が元になったとされている。
僕だってそれで本当にトラブルが防げるのなら、いっそのこと蘭陵王のように面をかぶって暮らしたいくらいだ。
「しかしお前、これからどうするんだ?
中芝は実家は和歌山だっけ?」
「あ、うん。
けど和歌山で神社やってるのは実家じゃなくて親戚の家だし、田舎の小さい神社だから、あっちに帰っても食べていけないと思う。
とりあえずは大学の就職課に連絡してみるつもりなんだけど」
「ああ、それが一番確実かもな。
まあ、俺たちも神主を募集している神社がないか、知り合いに聞いてみてやるから」
同級生たちとそんな話をしていると、この神社の宮司の先輩もこう言った。
「いいところがなければ、新卒の募集が出る頃まで待つと言う手もあるしな。
もしもそうなったら、和歌山には帰らずにこっちに残った方がいいぞ。
東京なら正職員は無理でも助勤のアルバイトなら雇ってくれるところ神社はあるから、再就職が決まるまではそれで食いつなげるからな。
住むところがなかったら、ここに置いてやるから」
「そうですね。
それじゃあ、もし助勤しか見つけられなかったら、その時はよろしくお願いします」
「おう、いいぞ。
その代わり毎朝境内を掃除してもらうけどな」
笑いながらそう言った先輩に、僕は「頼りにしてます」と言いながら酒をついだ。
先輩からもつぎ返されて飲み、そのまま話はうまい酒の銘柄の話へと移って言った。
そうして僕は、みんなに昨日の夜の出来事と今朝宮司室に呼ばれた時の話をした。
話し終えると、みな「それはひどい」と自分のことのように憤ってくれた。
「タイミングも悪かったな。
権宮司がインフルエンザで休んでなければ、話ぐらいは聞いてもらえただろうに」
「あー、そうかもしれませんね」
同じ神社の先輩の言葉に、僕もうなずいた。
他の人たちも次々に口を開く。
「俺、その宮司の娘と同級生だけど、あいつ、学生の頃から男関係のトラブル多いので有名だったんだよ。
中芝みたいに顔がいいやつは狙われるかもしれないから気をつけろと教えておいてやればよかったな」
「しかし中芝お前、また年上の女とトラブったのかよ。
大学の時のストーカーも年上だったし、付き合ってもないのに彼女だって言いふらされたのも年上だったよな。
研修先の神社で迫られたのも年上の巫女じゃなかったっけ?」
「うん……」
ちなみにみんなには言ってないが、高校の時に告白されて断ったら、その子の友達数人に囲まれて「なんで断るのよ」と責められた時も、相手は部の先輩だった。
なぜだかわからないが、僕は昔から年上の女性と恋愛関係の、しかも一方的に惚れられた上でのトラブルが多く、正直トラウマになりそうなレベルだ。
「やっぱ、中芝の顔がなー。
イケメンのわりにおとなしそうに見えるから、年下好きの女に狙われやすいんじゃないか?」
「えー……。
そんなこと言われても、顔はどうしようもありませんよ」
「お前はもうずっと蘭陵王の面でもかぶってろよ。
そうしたら年上の女にもなめられないですむから」
蘭陵王というのは舞楽の1つで、優しげな顔立ちの美男子だった蘭陵王が、敵になめられないように恐ろしい顔の面をかぶっていたという逸話が元になったとされている。
僕だってそれで本当にトラブルが防げるのなら、いっそのこと蘭陵王のように面をかぶって暮らしたいくらいだ。
「しかしお前、これからどうするんだ?
中芝は実家は和歌山だっけ?」
「あ、うん。
けど和歌山で神社やってるのは実家じゃなくて親戚の家だし、田舎の小さい神社だから、あっちに帰っても食べていけないと思う。
とりあえずは大学の就職課に連絡してみるつもりなんだけど」
「ああ、それが一番確実かもな。
まあ、俺たちも神主を募集している神社がないか、知り合いに聞いてみてやるから」
同級生たちとそんな話をしていると、この神社の宮司の先輩もこう言った。
「いいところがなければ、新卒の募集が出る頃まで待つと言う手もあるしな。
もしもそうなったら、和歌山には帰らずにこっちに残った方がいいぞ。
東京なら正職員は無理でも助勤のアルバイトなら雇ってくれるところ神社はあるから、再就職が決まるまではそれで食いつなげるからな。
住むところがなかったら、ここに置いてやるから」
「そうですね。
それじゃあ、もし助勤しか見つけられなかったら、その時はよろしくお願いします」
「おう、いいぞ。
その代わり毎朝境内を掃除してもらうけどな」
笑いながらそう言った先輩に、僕は「頼りにしてます」と言いながら酒をついだ。
先輩からもつぎ返されて飲み、そのまま話はうまい酒の銘柄の話へと移って言った。
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