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京がくれたもの
しおりを挟む次の日も
その次の日も
京は学校にこなかった。
翌日、学校に着くと私の上履きがなくなっていた。しょうがなく職員室で貸出用の上履きを借り、教室へ行くと明らかにみんなの目が違っていた。
自分の席に着いて机の中に紙切れがあったのがわかった。その紙には『神隠しの使者』の文字。
やがて、先生がやってきた。
また2人いなくなったらしい。
「神隠し、加速してるね。」
絆奈が私の方を見ていう。
なんでこんな事になったんだろう?
私の周りには誰1人寄って来ようとしなかった。こんな時京がいたら何もわからないまま「美空、泣いてるの?」と声をかけてくれるんだろうな。
廊下の方から舞が手招きしている。
「美空、ごめん。」
「うん。大丈夫だけど、なんでこんな事になっちゃったの?」
「美空が京くんの手引っ張ってでてった後、絆奈が『美空最近なんか変じゃない?』ってそれを絆奈と仲いい人たちがどんどん便乗しちゃって」
確かに絆奈はうちらとも仲が良かったけど別のグループとも一緒にいた。そのグループは割と女子から怖がられていて、誰も口にはしないが逆らうと悪い事がある感じだった。
「ごめん、美空。」
「いいよ、別に。」
「なんか、最近美空さ、京と仲いいじゃん。だからあんまり良く思ってない人も多いらしくて、、、なんで美空?ってなったらしいよ。」
それからと言うものの女子っぽいいじめが続く。
京がこないのもそれに拍車をかける。
「京くんこないねー。」
「美空あの日京くんに何言ったんだろう?」
絆奈の手下っぽい人たちが私に聞こえるようにいう。
トイレに行くとしばらくドアを押さえられるし
ある日は椅子がなくなり、机がなくなり。
どんどんエスカレートしていく。
その次の日も2人いなくなった。全員で6人。私がやった訳じゃないのに変な責任がついて回る。
「もう、限界。」
こんなはずじゃなかった。別に私から告白したわけじゃないし、神隠しなんて知らないし。理不尽なことだらけだ。
昼休み、京と一緒にきた非常階段に逃げ込む。
「もう、授業行かないでここにいよっかな。」
「ごめんね、美空。」
うつむいていた顔を見上げるとそこには京がいた、頬には涙がながれていた。
「なんで泣いてるの?」
「僕がいなくなってる間に美空が泣いてるから。」
「、、、、、美空っ、苦しいよ、」
気付いたら京の細くて華奢な体をぎゅっと抱きしめていた。
「しばらくこのままでもいい?」
「いいよ。」
無言のまま私は京を抱きしめ、京は私の頭を撫でながら泣いている私の背中をさする。
しばらくして京が私の事を離し肩に手を置く。
じっと私の眼をみる。
「美空、大丈夫だから。これから美空の周りにはいい事がいっぱい起こるから。僕が約束する。」
そう言って頭を撫で非常階段のドアから出て行った。
僕が約束するって笑
そのまま私は授業を受けないまま帰る事にした。
次の日。
久しぶりに京が学校に来た。
その事もあったのか、前回と同じ人数がいなくなったからなのかいじめはピタッと止み、それまで何もなかったかのような扱いになる。
絆奈とも舞とも普段通りの会話をし、京もいつも通りマイペースさだった。
別に謝られた訳ではないが数日ぶりの楽しい学校生活に不思議な感じがした。現実じゃないみたい………。
そんな日はあっという間に過ぎ、また、京と一緒に帰ることにした。
赤い橋を渡りきった所でいつものように手を振ろうとすると京がなんかこっちに向かって言っている。
「今日の夜、12時。」
「どうしたの?」
「ここで会お!」
「なんで?」
「一緒に行きたい場所があるの!」
元気そうにそう言ったが目は無理やり笑っているような感じ。
これで会うのが最後かもしれない。
だけどもういいんだ。何があっても受け入れよう。星那姉ちゃんとも約束したんだ。
「うん!わかった。」
私はこれまでで一番の笑顔でそう答えたんだ。
夜中の12:00私は京の所へ行った。
『京の所に行ってきます』
そう書置きを残して。
次の日、いなくなった6人は何も変わらずに朝起きて、家から学校へ向かう。
私は決して家に戻ることはなかった。
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