二人のブレス

ビッキー

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第三十五話 驚愕!レベルファイブの力

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 第三十五話 驚愕!レベルファイブの力

ヴァンは驚愕した。
それは男の意外な発言に・・・
というより、男のスケールのデカさに・・・

「そろそろ種明かしをしようか?イプシロンから、君には我の力が必要だと言われてきたんだろ?それは我もそう思うよ。でもさ、魔界三王臣の一人である、このアルファには到底及ばないのも事実だ。」
「ア・アルファだって?師匠の名前とほぼ同じじゃねぇか!師匠とあんたは何かつながりがあるのか?それに魔界三王臣って、何なんだよ!」
「まぁ、驚くのも無理はない。まずは魔界三王臣から説明してあげるよ。魔界三王臣とは、覚醒魔人の中から抜粋されたアルティメット奥義を持つ者三人を指す。イプシロン、ミユー、それに我アルファだ。」
「アルティメット奥義って、究極ってことなのか?もしかして、さっき俺サマが吹っ飛ばされたのもその奥義なのかよ。ん?それにミユーってどっかで聴いたことがあるぞ・・・思い出せねぇが・・・」
ヴァンは驚きの情報オンパレードで頭が混乱していた。
それも無理はない。
俺やゲンなら、情報を整理して対策出来ることもヴァンにそれを求めるのは酷である。
「さっきお前が吹っ飛んだのは、アルティメット奥義ではない。大自然の力の<レベルスリー>だ。まぁ、これは後で説明してあげるよ。先に我と君の師匠のアルファスの名前についてだね。」
「あぁ、そうだ。師匠は人間だった。それもあんたとは違って、気のいいおっさんだった。でも、一文字違いで二人が大自然の力を使えるって偶然にしては出来過ぎだろ。」
「そうだよね。そう思うだろ?実は、アルファスは我の分身体だ。我の体の一部を人間化したんだよ。だから、年も取るし我と同じく大自然の力を使える。あの落石事故で君と出会ったのも偶然ではないし、アルファスが見たもの、聴いたものは我に情報として全て入る。君にこの力をマスターして欲しかったから、アルファスを使ってキッカケを作った。そういうことだ。」
何てこった!師匠が覚醒魔人、しかも魔界三王臣ってやつの分身体だっていうのか?
あの優しかったおっさんが・・・
ヴァンは苦悩の表情をしていた。
心中を察したリンやグリフォン、デルタにブラール皆、ヴァンにかける言葉が見つからなかった。
「我はアルファスを使ってキッカケを作ってやった。ヒントもやったよね?君はそのヒントを見事に具現化した。それがさっき言ったレベルツーのスキルだ。でも、大自然の力はレベルファイブまであるんだよ。つまり、君にはまだ可能性が三つもある。言い換えれば、君はヒント以外考えつかなかった。残念だけどね。我のシナリオでは君は独自にレベルスリーまでイケるんじゃないかな?って思っていたんだが。」
そうか、これがこいつのシナリオ・・・
俺サマはこいつに踊らされていたっていうのか?
ふざけるなよ・・・ふざけるな!!!
ヴァンは怒りが込み上げてきた。
そして、無意識にアルファに向かって攻撃を仕掛けていく。
「ヒートトルネード!」
ヴァンは、必殺のヒートトルネードをアルファに対して行った。
それは無意識で行ったことであったが、意外な収穫もあったのだった。

ヴァンの攻撃は、またもや弾き返されてしまう。
よろけながら立ち上がるヴァン・・・
「今ので、あんたが言っていたレベルスリーってやつの正体が解ったぜ。」
それはハッタリでもなんでもなく、真実であった。
ヴァンが仕掛けたヒートトルネードは、長時間相手と接触するスキルである。
故にアルファとの接触中に感じ得た何かがヴァンにはあったのだ。
「ほぉ~こいつは驚きだ。今の一撃で一体何が解ったっていうんだい?」
「今度は、あんたから攻撃してくればいい。それで証明してやるぜ。」
「フッ!おもしろいねぇ~君は!」
間髪入れずに、アルファは攻撃を仕掛けてくる。
勿論、大自然の力を使った一撃で・・・
ヴァンはそれに対して体で受け止めるのであった。
ガッキーンンンンンンン!
またしても、金属と金属が衝突したかのような音が周囲にこだまする。
今度はヴァンもアルファも吹っ飛ぶことはなく、何事もなかったように立っていた。
「ほぉ~やるじゃない。レベルスリーを自らの力だけで解析して即実践で使えるとは、正直驚いたよ。」
「さっきのヒートトルネードで長時間、あんたと接していたからな・・・解ったんだよ。レベルスリーって防御なんだろ?大自然の力は防御にも使える。あんたの攻撃が当たる直前で力を開放し防御だけにあてたんだ。だから、さっきはクランチインパクトやヒートナックル・改MAXは力で相殺されてしまった。
しかも、防御の方がしっかりと地に足がついていて安定しているから、パワーを活かすことが出来る。今のであんたが吹っ飛ばなかったのは、単純にあんたのパワーの方が俺サマよりも上だって証にもなったしな。」
ヴァンの話を聞いたアルファは言葉こそ発しなかったが、ヴァンから少し距離を取り柔軟体操を始める。
「なぁ、次のレベルフォーってやつを見せてくれよ。あんたは強い!イプシロンよりも強いって感じるぜ。まぁ、イプシロンは防御に関しては完璧だけどよ、攻撃面ではあんたの方が段違いに強いよな。」
「随分と調子にのってくれるよね。レベルフォーが見たい?いいのかい?君は只じゃ済まなくなるよ。」
「あぁ、俺サマはレベルファイブまで知りたいんだ。頼む!あんたの期待には応えられないかもしれないが、スティール星を守るためにはもっと力が必要なんだよ。」
「ほぅ~随分と崇高な考えを持っているみたいだけど、じゃあ遠慮なく!」
言葉短めにアルファは、攻撃を開始する。
それに対して、防御専門で受け止めようとするヴァン。
アルファの攻撃が当たったと思いきや、今度は金属音の音は響かずにヴァンは倒れ込んでしまう。
<<ヴァン!ヴァン!しっかりしなよ!一体どうしちまったんだい?>>
<<拙者にも解らなかった。奴の攻撃に対してヴァンは、大自然の力を開放して防御にあてたハズだが・・・>>
ヴァンの目の前に立ち塞がるアルファ・・・その表情は、やっぱりねとでもいうように余裕をかましている。
ヴァンが再び立ち上がるのを待っていたアルファは、待ちくたびれたのかヴァンに対して手をかざす。
<<チョッと!あんた何してるのさ!ウチのヴァンに変なことしないでよ!>>
リンは今、ブレス内にいる為に念波でしか話が出来なかった。
しかし、アルファには伝わっていたと思う。
さっきは、デルタの念波を察知出来たのだから・・・
しばらくして立ち上がるヴァン・・・
「ん?どうなったんだ?俺サマは奴の攻撃を食らって倒れたんだよな?ダメージを受けたハズなのにその感じが無いぜ。」
「君がナカナカ立ち上がらなかったからさ、回復してあげたんだよ。我はアルファ波の放出が出来るからな。アルファ波はダメージ部位の覚醒、つまり回復させることが出来るんだ。感謝しなよ~。さぁ、続きをしようか!」
アルファは楽しそうに腕をグルグル回して、ヴァンの出方を待っていた。

オイオイ、まだ俺サマは頭の整理が出来てないぜ・・・
あいつの攻撃を食らう直前、俺サマは力を防御に全て充てたハズ。
それを無効化してきたっていうのか?
レベルフォーの正体は無効化なのか?
イヤ、何か違う気がするぜ。
思い出せ!思い出すんだ!
・・・あいつの攻撃が当たった直後、もう一撃食らった?
そんな感じがしたが、気のせいか?
大自然の力を大自然の力で相殺させた直後の攻撃って、どうなるんだ?
そもそも、力の二弾攻撃って可能なのか?
・・・イヤ相殺させたっていうなら、金属音がするハズだ。
でも、あの時はそれが無かった。
<<ヴァン、拙者思うのだが・・・>>
グリフォンがヴァンに念波で話しかける。
<<奴のさっきの一撃は、力を力で同調、つまり中和させたのではないか?奴はさっき、アルファ波を使っていた。故に同調させることは得意であると思われる。しかし、ヴァンにそれが出来るかどうかは解らんが・・・>>
同調、中和か・・・
イヤ、ムリだろ?そんなの急に出来る訳がない。
<<ウフフッ!私たちに任せなよ!>>
<<そうそう、もっと僕たちを頼らないと!>>
<<君は半人前なんだよ。解ってるの?>>
<<き・君たちは・・・俺サマに協力してくれるのか?あいつには協力しなくてもいいのか?>>
<<だって君、放置してると死んじゃいそうなんだもん。私たちに任せなよ。同調、中和はやってあげる。>>
<<そうそう、でも僕たちの役目はここまでだからね。>>
<<後は半人前の君が決めないと!>>
大自然の皆の声がヴァンを活性化させる。
俺サマには皆がいたんだった・・・
やれる!やれるぜ!レベルフォー!手段なんてどうでもいい!だって、俺サマは半人前なんだからな。
そういや以前、カイに言われたことがあったな・・・
「いいかヴァン、人には得手不得手がある。
お前に欠けている所は誰かがフォローしてくれる。誰かが困っていたら、お前がフォロー出来ることはしてやれよ。そうやって、人と人は支え合っているんだ。まぁ、もっとも俺が一番欠けまくっているんだけどな。それで、信頼や絆が生まれてくる。素晴らしいよな!それが人間ってやつのあるべき姿だ。」
大自然の皆との絆が、俺サマにはあったんだった。
その絆を大切にするんだ!
俺サマが出来る事・・・それは大自然を守ることだ!
ヴァンはアルファに突撃した。
ヴァンの攻撃が当たる瞬間に大自然の皆の力が同調、中和を作り出す。
そのタイミングを見計らって、ヴァンは力を開放する・・・
それは、どんなにアルファの力が偉大であっても、もはや「貫通」にしかならない。

ヴァンの一撃は貫通し、アルファの体内を破壊する。
「グッ!やってくれますねぇ・・・流石はイプシロンが目をつけた子だ。」
独り言をボソッと言い放ったアルファは、自らにアルファ波を照射して自己回復を行う。
「見事だ!ヴァン!よくぞ、レベルフォーまで到達したな。しかし、ここまでだろう。君にはレベルファイブはムリだと思う。」
「な・なんでだよ!俺サマは、まだレベルファイブってやつを知らないし、ギブアップもしたくない!何よりもあんたを俺サマは今や尊敬すらしている。師匠!あんたと同じ世界が見たい!あんたの分身体であるアルファスが師匠だったんだ。今やあんたが俺サマの師匠!そうだろ?そうだよな!あんたのシナリオも俺サマがレベルファイブまでマスターする所まであるんだよな!」
ヴァンは必死だった。
師匠と思っていた人物が、目の前の男の分身体であったことには正直ショックだったが、今やそんなことはどうでも良かった。
目の前の偉大なる覚醒魔人アルファ・・・
魔界三王臣でもある彼のアルティメット奥義をマスターしたい!
武闘家になると決めたあの日から、そしてリンと共に歩もうと決めたあの日から、究極の高みを目指すと心に誓ったのだ。
こんなゾクゾクするようなバトルを通じて、俺サマは確実に成長している。
もっとも、これがアルファの狙いかもしれないが、俺サマも<豪傑マン>となるのだ。

「解った解った。君の望みを叶えてあげよう。でも、言っておくよ。レベルファイブを食らったら、我のアルファ波でも回復しきれないダメージを食らう。それでもいいのかい?」
「あぁ、師匠と同じ景色が見たい。今の望みはそれだけだ。だから、その痛みを知らなければ、そこには到達できない。頼むぜ。」
アルファは、師匠という言葉に反応しなかった。
それはヴァンを認めつつ、突き放すのも愛情だと知っていたからである。
一時経過し、無言放置されていたアルファは考えた末に行動を移す。
「ヴァン、いくぞ!レベルファイブ、これがアルティメット奥義だ!ギャラクシーインパクト!」
初めてアルファはスキルの名前を言った。
それまでの攻守に関して彼にとっては、前座に過ぎなかったのかもしれない。
ギャラクシーインパクトはヴァンの体を貫通し、体内で小爆発を起こす。
故に体内組織は機能しなくなり、生死をさまよう瀕死の重症となる・・・はずだった。
まさにアルティメット奥義と呼ぶに相応しいスキルだが、なんとヴァンは無傷であった。
「あれ?俺サマはどうしたんだ?ダメージが全くないぜ。確かに師匠のスキルが貫通していった感じはあったが・・・」
「バ・バカな!我のギャラクシーインパクトを食らって、無傷とは有り得ないよ。一体ナゼ・・・」

しばし、沈黙の時が過ぎる・・・
ヴァンもアルファスも起きた現象面を色々な角度から考えてみたが、その要因は全く見当もつかなかったのだ。
ヴァンの体を貫通した段階で、大自然の皆の力はヴァンを防御するという機能はしていない。
<<そろそろ、気付いてくれよ~!>>
ヴァンのブレスから一人の念波が発せられる。
「ん?お前なのか?ブラール。ま・まさかお前、俺サマの体内にブラール波を出したっていうのか?」
普段はおとなしく、発言も滅多にしないブラールであったが、ヴァンの窮地を救うべく颯爽と登場したのであった。
「なんなんだ?ブラール波っていうのは?」
流石のアルファも暗黒空間リアトリスの中にまでは行ったことがないようで、ブラールの存在は知らなかったのだ。
「ブラール波か?こんなのだぜ。」
ヴァンは目の前にブラール波を発生させ、足元の小石を数個そこに放り投げる。
小石はブラックホールの入り口であるブラール波に吸い込まれ、ブラール波は一時したら自然消滅するのであった。
「これがブラール波。これは魔人のスキルなのかい?我も魔界に長いこといるが、初めて観たよ。」
そんなにリアトリスって、隔離された空間だったのか。
まさに暗黒空間。
ブラールのブラール波は小規模ながら、ブラックホールの入り口を担っている。
光さえも飲み込むと言われているブラックホール。
小規模の為、デカい規模ものは吸い込めないが、今回のギャラクシーインパクトのように小規模であれば飲み込むことが可能だ。
しかし、それをヴァンの意識の元に行われずにブレスの魔動石を通じて、ブラールがスキルを発動させるというのが異常事態でもある。
「あのなブラール、確かにチームヴァンは自由に行動してもらっている。でもよ、俺サマの立場ってもんが無くなるわけよ。解るか?俺サマの意識の元でフォローしてくれるのは助かるが、全く関与していない状況で動かれても困るぜ。」
<<ヴァン、それはおかしいぞ。私は度々、勝手にお前の助太刀をしているではないか。それにリンにしても、お前の能力に応じてスキルを最大限に合わせているぞ。ならば、ブラールもフリーに行動しても問題あるまい。>>
デルタは、念波でヴァンに対して反発する。
ヴァンはデルタには、頭が上がらなかった。
そもそもデルタの強さや存在感、臨機応変な対応力はズバ抜けている。
こと戦闘に関して、デルタは優秀な参謀でもあるのだ。
そんなデルタの発言を無視する訳にはいかない。
「解った!そうだな!デルタの言う通りだ。ブラール、今後もチームヴァンとしてのフォローを頼む。今回は助かった。ありがとう。」
<<よせやい!オイラ、照れるじゃねぇか。>>
そんな、ワチャワチャした感じのやり取りが行われたが、まだアルファとのバトルは終わっていない。
「そろそろいいか~?ヴァン、君はいいメンバーに恵まれているな。だが、君はまだレベルファイブを使えていない。出来るのか?レベルファイブ?そもそも、どんなスキルだったのか分析は出来ているのか?」
アルファはもっともな意見を言ってきた。
確かに俺サマは一杯一杯で、レベルファイブがどんなスキルだったのか分析なんて出来ていない。
<<皆、解ったか?さっきの一撃で何か解った奴はいるか?>>
ギャラクシーインパクト・・・体を貫通させて体内で小規模な爆発が起きるそれは、解析など誰も出来やしなかった。
そう、一番間近に接していたブラールでさえも・・・

<ヴァン、助っ人してやろうか?>>
そ・その声はカイ!
「頼むぜ!俺サマには師匠のアルティメット奥義の秘密なんか、さっぱり解らない。ましてや、それを俺サマが再現するなんてことは出来っこない。知らないことが出来ないのは当然だ!」
訳の解らない自論を自信タップリと言い放つヴァン。
まぁ、確かにその通りなんだが、言い方を変えれば開き直りとも言うんだよね・・・
<<ヴァン、そしてチームヴァンの皆、よく聴けよ。アルファのレベルファイブは、体を貫通させて体内で小爆発を起こすスキルだ。何でこんなことが解るのかって言うと、俺はブレスを通じてヴァンの体内の状態が見えるようになったんだ。>>
「チョッと待ってくれよ。俺サマには、ブレスを通じてカイの体の状態なんか解らないぞ。お前だけ特別な何かに目覚めたっていうのか?」
<<俺にはパルスの音の力がある。だから、特殊な超音波が色々と出せる。そこで、状況把握が可能なレベルの超音波を発見したんで、出し続けていたんだ。そしたらさ、ヴァンとゲンの体内状況が解るようになってきたんだ。どうだ、スゴイだろ?>>
俺はサラリと説明をしたが、ヴァンにとってはとんでもないことだったようだ。
「お前のやることは俺サマの考えのレベルから、いつもかなりはみ出している。今更、一々驚くのも何だしな・・・で、アルティメット奥義の秘密を教えてくれ。出来るだけ簡単にな!」
<<チョっとは驚いてくれよな~。ま、それはさておき・・・アルファはヴァンの体内で、小爆発を起こすスキルを発動していたよ。爆発っていうのはな、酸素がある状態でなら瞬間的に圧力を変化させれば起きるものだ。人の体内には酸素はあるからな。ましてや、体内では気を激しく使っていて燃焼ガスが非常に多い。その状態は体積が大きくなり、高い圧力を生み出しているんだ。そこに、アルファの圧縮された膨大な気が一気に流れ込み解放されたんだ。まさに爆発には理想の条件が揃っているよな。>>
そ・そうか・・・カイの説明を聞いて、やっと俺サマでも理解出来たぜ。
っていうか、そんなことを考え付くなんてスキルだけスゴいんじゃなくて、師匠は頭脳も優秀ってことじゃねぇか。
しかし、俺サマの気を一気に師匠の体内に開放しても小爆発が起こるという保証は何もない。
気に関しては、師匠の方が段違いにデカイことに間違いはないからな・・・
<<ヴァン、ここは参謀の私に任せるんだな。お前は、レベルフォーまで段取りしてくれ。
レベルフォーからレベルファイブへの切り替えは、何とかするからな!>>
デルタは参謀らしく、何やら策があるらしい。
ヴァンはデルタの言うままに、レベルフォーをアルファに撃ち放つ。
「貫けー!!!ファイナルインパクト!」
とっさに出た、スキル名ファイナルインパクト・・・
何故、その名が出たのかはヴァンにも解っていなかった。
拳を繰り出す瞬間に、頭をよぎった言葉にしかすぎないが、大自然の力をフルに使ってのスキルなので妥当なのかもしれない。
ヴァンの拳がアルファに接触する。
そこで大自然の力がフォローをし、同調と中和を行う。
ヴァンのパワーは弾き返されることなく、見事にアルファの体を貫通した。
そして、その瞬間を見極めたデルタがゴーサインを発令する。
<<今だ!ブラール!リン!>>
デルタ、ブラール、リンはどうやら打ち合わせをしていたようで、阿吽の呼吸で三人のスキルが融合する。
それは、敢えて言葉を発しなくても見事に調和した。
デルタは太陽風のパワーを・・・
ブラールはヴァンも知らないホワイトホールのパワーを・・・
リンはヴァンに過度な負荷がいかないギリギリの炎を・・・
圧縮された三つのパワーは見事に調和し、一気にアルファの体内に流れ込み解放されるのであった。
それはアルファの騎気と同レベルのパワーとなり、アルファの体内で小爆発を起こすのであった。

倒れ込むアルファ・・・
魔界三王臣は、バトルに於いて未だかつて片ひざすらついたことがなかった。
しかし、その武勇伝もこの瞬間にピリオドを打つ。
ヴァンは何が起こったのか理解出来ていなかったが、アルファは体内でのダメージが尋常ではなかった。
ヴァンの目の前に倒れ込んだアルファを見て、デルタ、ブラール、リンは心のガッツポーズを決める。
<<アルティメット!>>
天からバカデカい声が鳴り響き、ヴァンのファイナルインパクトはアルティメット奥義として認められたのであった。

それでも驚異的な回復力を誇るアルファは、一時したら体内のダメージも回復し、この勝負の余韻に浸るのであった。

流石はイプシロンが目を付けた子だ・・・
我もシナリオを描き、楽しむことが出来た。
それにしても、カイといったな。
我のギャラクシーインパクトを見切り、念波でヴァンにそれを伝えてきた。
人間や魔人レベルではないスキルと感性。
彼らになら、未来を託せるかもしれんな。
あのお方が、危惧していたことが間近に迫りつつあるこのタイミング・・・
出会うべくして出会ったのかもしれんな・・・
アルファは遠くを見つめ、ヴァンの目前に歩み寄る。
「我の負けだ。君は我のシナリオ通りに、見事レベルファイブの力をマスターすることが出来た。おめでとう!それが、例え君のみの力で得たのもでなくても、決して否定する必要はない。それは、自分以外の協力を得られることも一つの才能だからだ。」
そこで、ヴァンは気付いてしまった。
俺サマたちは、イプシロンや師匠に踊らされていたんじゃねぇ!
二人の魔界三王臣によって、育成されていたんだと・・・
魔界の格式には序列が存在する。
魔人の上位は上位魔人、上位魔人の上には覚醒魔人、その更に上位に魔界三王臣。
魔界三王臣の上には魔王や大魔王が存在する。
その魔王や大魔王は、絶対神ゼウスを超えることが出来ない。
しかるにゼウスを倒す者が現れても、魔人から大魔王のステータスの者では、歯が立たないということだ。
だからこそ、俺サマたち人間にその役目を託そうと考えた。
その為には力不足の面を育成する必要がある・・・そういうことか。

カイもまた、覚醒魔王になるようにファイに促されていた。
精霊界や冥界の治安を守るために・・・
どちらの案件も人間界、魔界、精霊界、冥界、神界の全ての平和を守ることで、生態系が崩れるのを防ぐことにつながる。
ヴァンはこのことをブレスの念波グループに
伝えてくれた。
まぁ、もっとも俺とゲンは既にイプシロンの意図を読んでいたことではあったんだけどね。

「ヴァン、これを受け取ると良い。豪傑の証である、豪傑の魔動石だ。これを誰かに託す日が来るとは思わなかったがな。」
「師匠!ありがとう!でもよ、レベルファイブまで使えるようになったら、この魔動石は必要ねぇんじゃないのか?」
アルファスは優しい笑みを浮かべながら、弟子であるヴァンに説明する。
「ヴァン、この魔動石をブレスにセットしてみよ。そうすれば、この石の偉大なる力が理解出来るぞ。」
ヴァンは黙って頷き、アルファの言う通りにブレスに豪傑の石をセットする。
その瞬間、新たなる視界が開け、目の前に数多くの妖精たちが見えるのであった。
「こ・これは・・・俺サマが感じていた声の主なのか?今までは声だけは聴こえていたが、その姿を見る事が出来なかった。それに、大自然の皆の力が既に体全体に充満している。これが師匠のいつもの状態なのか?」
「ヴァン、君は不老不死だがダメージは食らうだろ?アルファ波、有効に使うが良い。ダメージの修復や異常状態のリセット、まぁ他にも使い道はあるハズだから、自分なりに試してみてくれ。それにしても、我は疲れたよ。久々にギャラクシーインパクトを使ったしな。だが、今までに体験したことない楽しさを満喫出来た。感謝している。ヴァン・・・お前たちに未来を託したからな。この妖精たちも守ってやってくれ。」
ヴァンは嬉しかった。
師匠と同じ目線で大自然を感じることができたことに・・・
そして、自分たちに未来を託してくれたことに・・・
「やってやるぜ!リン!グリフォン!デルタ!ブラール!師匠!この勢いで熱風の力を持つシロッコの所に殴り込みだ!」
ヴァンは意気揚々と次の目的地を目指すのであった。

同刻、冥界・・・
ここでは死者の魂は浄化され、新たなる体へと転生される。
しかし、この世に圧倒的な未練や執着がある者は極まれに魂の浄化は無効化され、生前の想いを持ちながら転生されてしまう。

魔人ルーツ・・・俺に倒されたが、魔人の域を超えて魔王や魔剣の力も我が物とし、超魔人にまで進化した悪しき魔人である。
奴の怨念は冥界の魂浄化を無効化し、転生されてしまう。
新たなる闇を生み出す為に・・・

読者の皆様へ・・・
いつも、ご愛読頂きまして、誠にありがとうございます。
令和四年(2022年)に本作「二人のブレス」(通称「ふたブレ」)は書籍化されるよう、これから準備に入ります。
第三十六話以降はこれから執筆しますが、完結までの話は今後アップ致しません。
書籍が出るまでの間、楽しみにお待ちくださいませ。
書籍は全四巻(紙と電子書籍両方)の発売を予定しております。
また、詳細が決まりましたらお知らせ致しますので、どうぞ宜しくお願い致します。

                ビッキー







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感想 7

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みんなの感想(7件)

芋
2021.09.20

2話のティナがドラゴン!の所まで読んだけど、とても先が気になります、これから楽しみが増えてうれしいです、早く起きて続き読むぞ!

ビッキー
2021.09.21 ビッキー

ありがとうございます。読者の皆様がわくわくするような展開を考えていきます。皆様のご感想で執筆も楽しくやれます。感謝です。

解除
さよよ
2021.09.02 さよよ

とても、さくさく読めてあっという間に1話読み終わります。それぞれのキャラクターの個性が豊かで、読んでいて楽しいです♪挿し絵が見たくなるくらいです(o^∀^o)
書籍化されないかなぁ~( ´° ³°`)

ビッキー
2021.09.02 ビッキー

ご感想、ありがとうございます♪書籍化出来たら嬉しいですが、今は皆さんに読んで頂けるだけで光栄です♪これから、もっと盛り上がっていく展開になります。よろしくお願いします。

解除
カズポン
2021.08.29 カズポン

3話まで読ませて貰いました。テンポ良くて読みやすい♪バトルシーンや世界観がどんな感じで描かれるか楽しみです。ブレスがブレスレッドとドラゴンブレスに掛かっているのかな?続き待ってます♪

ビッキー
2021.08.29 ビッキー

ありがとうございます。皆さんが楽しめるワクワクするような作品にしていきますので、よろしくお願いします。

解除

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