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神域魔法 

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「ふぅ…………」

 俺は全身に流れている魔力を俺の根源である場所に一点に集める。
 魔力根源の隣には配下たちの契約の綱があるのだ。最初は糸のように細かった綱も今では俺の身体では収まりきらないほどの綱になっている。俺の全魔力を注がないと全ては発動できないだろう。

 さぁ俺の全身全霊を出す時が来た。
 これが成功すれば英雄。失敗すれば皆仲良くあの世行き。
 そう――俺にこの世界の命運がかかっているのだ。

「「「……………………」」」

 世界の三柱であるはずの三人は俺の行動を息をのんで見ている。

「絆の加護もとに。全配下の契約の繋がりを拡張し」

 まるで俺が台風の目のようになり、その周りを大量の濃縮された魔力が荒れ吹く。
 俺自身も今まで感じたことのないような魔力量。魔力の濃さ。

「生きとし生ける者よ。我の権限のもとに各地に広がれ」

 ――強くなりたい。
 今まで最弱と俺を罵った奴らを見返すために。
 ――この世界を救いたい。
 配下たちを守るため。大切な人たちを守るために。
 ――英雄になりたい。
 全てを救い、全てから救われる存在になるために。

「この魔力を媒体とし、我の命令を実行せよ」

 俺を中心に荒れていた魔力暴風は少しずつ俺の元へと凝縮されていく。
 
「な、なんだよ!? この魔力は!?」

 そんな俺を見てい神獣はありえないものを見ているような表情を浮かべる。
 その神獣の表情からは先ほどの諦めの笑みはなくなっていた。余裕がなくなったというべきか。

「おい、魔王。先ほどの良い息子を持ったな発言は撤回させてもらうよ…………これは本当に人間なのか?」
「アハハ…………多分?」

 勇者と魔王も俺を見て苦笑いしか出来ないようだ。
 まさかとうとう人間か否かなどと思われるとは思ってもいなかった。
 この戦争が終わったら出来るだけ自重しよう。

「……………………ふぅ」

 詠唱を完了させ、脳内で術式を構築し終えた俺は一度深呼吸をする。

 これが最弱テイマーとしての最後の仕事だ。
 今考えればこの三年間。本当に色々なことがあった。

 ゴブくんをテイムしたため一族に追放され、魔王の配下と勝手に契約して魔王城に突撃なんてこともした。
 そして魔王の息子となり、学園生活も送ることが出来た。
 また、南北戦争にも深く関わり、更にはこうして世界大戦規模の戦争の終止符を俺が打とうとしている。

 人類の中で俺より充実した人生を送っている者はいないだろう。
 そう思えるほど楽しい三年間だった。

 だから、これからの人生ももっと楽しく生きたい。
 もっと配下と仲良くしたい。皆に囲まれて、全種族笑って暮らせるような世界を作りたい。

 そんなことを願って俺は甲高く叫んだ。

「神域魔法!」

 俺は両眼を見開き、両腕を天に突き刺すようにあげる。

 これは最初で最後の魔法だ。 
 召喚魔法は先ほどサルバディに解除してもらった際に魔王の封印魔法も解除されている。
 そのため、全力で魔法を行使できるのだ。

 神ならざる者にしか使えない魔法。
 俺はその種の最高域に手をかける。

 俺は世界に響き渡るような声で魔法を行使した。

「【統率之神アレス】!」

 その瞬間、俺を中心に世界が眩い光に包まれたのだった。
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