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最終決戦

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「…………は?」

 神獣は俺を見て素っ頓狂な声を出す。

 俺はその光景に少し苦笑いを浮かべながら契約の繋がりを広げていく。
 誰か一人を大きくするのではない。皆平等に広げていくのだ。
 何万の…………何十万もの配下たちの繋がりを。

「…………全員オールフル!」

 その瞬間、俺の中で何かが爆発するように溢れかえった。
 魔力でも力でもない。感情だ。配下たちと一体化した歓喜と言ったところか。

「…………はああああああああぁぁぁぁぁ!? そ、そんなの反則だろ!?」
「いや、十分お前も反則だろ」

 俺はそんな驚愕している神獣に言い捨てた。
 だが、神獣の気持ちも分からんことはない。ってかよく分かるというまである。

 翼は竜神族の強靭な赤い翼。
 右腕は神狼族の筋骨隆々のがっしりとした腕。
 左腕は土竜族のドリルのような構造の口ばし。
 右足は紫電鳥の雷を纏った雷脚。
 左足は狐族のもふもふとした、それでも固く強靭な脚。
 尾は邪蛇族の禍々しく太い尾。
 そして脳は小鬼王のずる賢く、計算高き脳。

 何とかレンジャーのロボット合体みたいな容姿になってしまったではないか。
 容姿はそこまでまとまっているとは言えない。キメラみたいになっているほどだ。
 だが、魔力や力については分かる。圧倒的な力を手に入れたと。

 俺は微笑を浮かべながら神獣に突進する。

「はああああぁぁぁ!」
「…………くっ!」

 俺の右ストレートを神獣は両腕をクロスさせて防ぐ。

 だが、やはり先ほどよりも断然に攻撃力が上がっているのだろう。
 神獣の背後の雲は一瞬で雲散した。
 先ほどまで雲行きも怪しかったのにもかかわらず、俺と神獣の周りだけは快晴である。

「ちっ! 【完全獣化フルビースト】!」

 流石に通常形態では俺に敵わないと思ったのか神獣は奥の手を行使した。
 先ほどの【獣化】とは違って全身の筋肉が膨張し、最強の獣。そう脳が直接理解した。
 だが、俺だって負けてはいない。
 
 俺は頼りになる奴らに【念話リークス】をかける。

『……………………』
「…………分かった」

 この形態は俺への負担が大きいためそう長く行使することはでいない。
 だが、長くといっても数分も神獣と戦えれば十分だ。それまでに絶対に決着をつける。

「全ての加護のもとに…………」

 俺は配下から借りいてた四つの元素魔法を目の間に発現させる。

 火、水、風、土。

 俺はその四つの元素を限りなく凝縮させて濃厚にし、出来るだけ魔力を詰める。

「やらせるかあああああああああぁぁぁぁぁ!」

 神獣は契約憑依レゾナンス魔法封鎖アンチマジックで外れたのだと思っているのだろう。
 俺が魔法を行使できないにもかかわらず、術式を詠唱中に神獣は一瞬で距離を詰めてきた。
 
 今のままでは俺は魔法を行使できない。だが、代替法は考えてある。
 そのため、俺は何もしない。目の前の詠唱に集中するだけだ。

 ガキンッ!

「ちょっとぐらいは警戒したらどうだ、主様?」
「そうですよ。アレン様。私たちが来るのが分かっていたとしてもちょっと余裕を見せすぎです」

 そういって二人の影が俺の前に現れ、神獣の攻撃を二人がかりで止める。
 金髪さわやかあるイケメンに銀髪のワイルドなイケメン。

 そう。グレードとラークだ。

 神獣を食い止めていた二人は神獣を無理矢理俺の直線上から押し出した。
 そして、すぐにその場から離脱する。
 それはまるで後ろから砲撃を撃つためかのように…………

「どけぇ! おまらぁ!」
「さっきはアレンにフラれたけど僕も少しはお手伝いしないとね」

 ドラとランドロフが俺の背後から神獣めがけて巨大な魔力砲を放った。
 魔王級二人の砲撃だ。
 神獣も防御形態に入ったもののダメージは食らったようで全身から少量の出血をしている。
 まぁあの砲撃を受けて出血程度で済んでいる事態おかしいのだが。

「アレン君…………【解除】」
「あ、ありがとうございます。サルバディさん」

 俺は背後から近づいてきたサルバディに魔法封鎖アンチマジックを解除してもらう。
 あの魔王がサルバディをこんな戦場に出してくれるとは思っていかったので少し驚いてしまった。
 だが、魔族の中ではサルバディが一番、付与魔法に詳しい。解除できるのはサルバディだけだろう。

 俺は解除してくれたサルバディに頭を下げて、神獣の方を見る。
 ラークとグレード、ドラとランドロフの魔王級四人がかりでやっと足止めできる程度だ。

 この魔法でも到底神獣を鎮めることは出来ないだろう。
 しかし、まぁ最終決戦の火蓋としてはいいのではないだろうか。

 俺はにんまりと笑みを浮かべて配下たちから借り受けた魔力を放出する。

「【四属性混合爆発オールエレメンタルバスター】!」

 その瞬間――全てが無になった。
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