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やっと気づく

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「…………ちっ! 胸糞悪ぃ技使いやがって!」

 既視感のある光景に神獣は反吐を出した。
 だが、俺にとってそんなことは関係ない。

契約憑依レゾナンス! ドラ!」

 俺は契約の繋がりからドラの強大な力を借りる。
 先ほどドラの顔を見たからだろうか。前回より断然に力が増幅している。

 飛ばされている俺に赤色の翼が生える。
 その翼を大きく広げて俺は空を自由に舞い始めた。

「【炎炎ボルケーノ】!」

 俺は飛んで追跡してきている神獣に向かってマグマのようなドロっとした熱物を放った。

 長くもってもドラとの契約憑依レゾナンスは五分程度だ。
 俺の配下は山ほどいるため、相手には困らないだろうが、流石にドラと同じレベルの配下はいない。
 リーシャとランドロフが頼みの綱であったが、あの状態で契約憑依レゾナンスなど自殺行為だ。

「【氷河アイスドオール】」

 神獣はマグマから身を守るために氷河の盾を生成する。
 【炎炎ボルケーノ】は魔王級の魔法だ。そんな準究極魔法をも神獣は呆気なく防ぎきる。
 
 本当なら詠唱の差でいつも優勢をとり、勝負を決めに行くという戦法だ。
 だが、神獣も無詠唱であるためその差がない。魔王級の上、魔神級はやはり格が違うのかもしれない。

「【火炎爆殺ボルケーノ・ボア】!」

 自意識過剰かもしれないが、この神獣と渡り合える者は俺だけだろう。
 準魔王級レベルではやはり戦いにならない。次元が違う。いても足手まといになるだけだ。
 だが、何か俺の中で引っかかる。

「【神風神殿エアロ・ベル】!」


 神獣は俺の、いや、ドラの最上級魔法を眉一つ動かさず排除した。
 本当なら国が一つ潰れるほどの魔法だ。そんなに簡単に防いでもらわないで欲しいものだね。

 ってか神獣様は幾つ属性を使えるんだよ。

 普通は一人一種属が鉄則。俺も契約憑依レゾナンスを使用する者の魔法だけしか使えない。

「ちっ! 時間が…………」

 あと、ドラの契約憑依レゾナンスが解除されるまで一分。
 絶対に神獣と渡り合うためには飛行は必須。
 となるとラークあたりになるだろうか。
 だが、何か心に違和感が残る。

「【氷河断罪アイスドカリバー】!」

 神獣は空気中の水分を凝縮させ巨大な一本の大剣を空中に出現させる。
 その剣はまるでおとぎ話で聞くような聖剣のようだった。

 一瞬で分かる。ヤバいと。

「【火炎爆殺ボルケーノ・ボア】【火炎爆殺ボルケーノ・ボア】【火炎爆殺ボルケーノ・ボア】!」

 俺はその大剣めがけて何度も究極魔法を放った。
 その魔法により俺の頭上に勢いよく振りかぶられた大剣の中心部が溶け砕ける。

 俺には運よく魔力切れということが起きない。なら使えるほど使っておこうという作戦だったが、上手く言ったようだ。
 一発程度では溶かしきれなかっただろう。

 地面は俺と神獣の魔法により抉れに抉れ、原形をとどめていない。
 後で魔王に頼んで修復してもらわなければ。

 まぁ今はそんなことより、目の前に事に集中しなければならない。

契約憑依レゾナンス ラーク!」

 赤い翼から金色の翼に生え変わる。
 その光景を見て神獣が違和感に気づいたような表情を浮かべた。

「おい…………その技は何だ?」
「…………え? 契約憑依レゾナンスって技だけど」

 今まで神獣の前で何度も使ったはずなのだが、距離が遠かったため技名まで聞き取れなかったのだろう。
 ってか何で俺はすんなりと秘術の名を敵に教えたのだろうか。

 その神獣の表情が、空気が、何か俺の心を動かしたのかもしれない。
 

「いや……そんなはずが…………もしかしてお前…………テイマー、、、、か?」
「そ、そうだけど」
「…………一つ聞く。お前の姓を教えろ」

 何故そこまで悲しい表情をするのだろうか。
 なんで何万の命を奪ったお前がそんな表情をするのだろうか。
 何故…………それを亡者に手向けることが出来ないんだ。

「俺の名はアレン…………ヴァ―リア、、、、、
「…………ッ! そうか。ヴァ―リアか」

 その言い慣れた神獣の言葉に俺は少し寒気がした。
 まるで知っているかのようなその言葉に。
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