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最強VS最弱

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「見ろよ! あの子供。ただもんじゃねぇぞ!」
「何連勝してるの!? ヤバくない?」
「やっぱりXクラスが波に乗ってる理由ってこの子?」

 などと、ブースに入っているのにもかかわらず、そんな声が個人ランキング戦の会場に響き渡る。

 ちなみに今、俺のランキングは一〇九位。
 次の対戦で勝てば目標の二桁になる。先輩たちと同じ段階だ。

 最初の個人戦から八回ぐらい戦っただろうか。
 【テレポート】での背後移動、場外に落とされても【テレポート】で戻れる。そして、剣と剣の戦いになれば場外に【転送】させ、そこから追撃をする。

 ここまでの完璧な戦術を聞いて誰が負けるというのだろう?
 空間魔法系統しか使えない、魔術に関しては外れだと思っていた俺だが、案外空間魔法は強いのかもしれない。

 ピロン!

 そんなことを考えていると、またタブレットに対戦申請が来た。
 俺は少しにんまりと笑みを浮かべながらタブレットをのぞく。
 すると、

「エリーナって…………」

 覚えている。いや、忘れるなんてことあるはずがない。
 名前持ちネームドなんてこのランキング間では珍しくないがこの名前だけは一瞬で理解した。

「あの時の長耳族エルフだ」

 忘れるはずもない。
 この学園の入学式、俺が魔力ゼロと判定された隣で三六万を叩きだし、Sクラスに入った女性の生徒だ。
 
 今考えると俺の方が圧倒的に魔力があったという証拠であり、Xクラスにも入れたので、何とも思わないが、あの時のエリーナの同情の目は少しキツかった。

 だが、今はそんなことはどうだっていい。

「ランキング…………十一・・位」

 俺よりも百番以上、上にいるということだ。
 Sランクの新入生二人が活躍しているということは小耳にしていた。
 しかし、まさかグレー先輩を目前にしているとは。しかも、俺と同じ一年生のはずなのに。

「これは本気出さないとな!」

 俺はそう口にしながらタブレットの了承のボタンを押す。
 すると、いつものように転移魔法陣が光始めた。

 俺は何の躊躇もなくその魔法陣に乗る。
 そして、俺の視界は色を失い、真っ黒に染まった。





「お久しぶりです! アレン君!」
「久しぶり。エリーナさん」

 転送された瞬間、エリーナが満面の笑みで手を振りながら迎え入れてくれた。
 俺も笑みを作って反応する。

 そして、上空には魔道具であろう球体が飛んでいた。
 これで、今時間の注目戦闘を外にいる人たちに向けて生放送しているのだ。
 そう。俺たちの試合は今、何百人もの生徒に見られている。

「ってか…………進化しました?」
「あ、気づきました!? そうなんです! 先輩たちに毎日指導してもらっているので長耳族エルフから妖魔人エルロナという特異種に進化したんですよ!」

 それはそれは嬉しそうにエリーナは言った。

 リーシャの時のように進化した際に美貌になっている。
 しかし、それは付属品に過ぎない。

 前回の時よりも魔力は倍以上に成長しており、雰囲気もドラやラークたちよりになってきている。
 エリーナは三段階に到達しているということだ。

 すると、エリーナは俺を一生懸命観察しようと手で双眼鏡のようなものを作って俺を見てくる。
 そして、

「アレン君は…………進化してないんですか? 雰囲気は化け物並みなのに、容姿は変わってないんですね!」
「アハハハ。ちょっとね」

 俺は苦笑いしながらそう返す。

 いやね? 俺だってもうちょっとカッコいい悪魔族デーモンにしてって魔王に頼んだんだよ?
 でも、魔王が異様に断ってくるんだよ。俺みたいにカッコよくなるの早いとか何とかで。

 だから、現状、周りから一段階だと認識されてます。
 はい…………なんでしょうね。これ劣等感。
 まぁそうやって舐めてかかってくる敵を圧倒させるのはちょっとスカッとするけども。

『個人戦を始めます……………………レディーファイト!』

 そんなことを考えているとアナウンスの音声ともに大きなゴングが鳴った。
 そして、反対サイドにいるエリーナは長剣を鞘から抜きながら言う。

「では、行きます!」

 エリーナは俺に向かって笑みを浮かべながら突進し始めたのだった。
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