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長男キールの過去
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僕は昔、生きる意味を見失っていた。
『流石私の子! 神童だわ!』
『次期族長は絶対にキールくんだな!』
『もう、キールには勝てねぇわ』
僕は幼い頃から天才や神童、かのこのテイマー一族を生み出した伝説のテイマーの生まれ変わりなどともてはやされた。
そりゃあ最初は嬉しかった。
でも、それからは苦痛でしかなかった。
初めて獣と契約した時は僕だけ特例で五歳のころ。
今でもはっきりと覚えている。僕を利用しようと考えていた大人たちの汚い目を。
六歳で二体も獣を従え、契約魔法のほぼ全てを覚えた。
そこからは僕の行動一つ一つが偉業としてとられる。
そんな時、弟が生まれてくる。そう両親に言われた。
僕は嬉しかった。やっと、この苦痛が終わる。そう喜んでいたんだ。
しかし、そう現実は上手くいかない。
生まれた七歳年下の弟、リンクは平凡な子だった。
普通の子のように成長し、自由気ままに遊び、ぬくぬくと人生を送る。
だから、僕はそこまでリンクのことが好きではない。
実際リンクは神童の弟、として期待されていたのが重みになっていたかもしれないが、その頃の僕は子供だったため、そこまで気を利かせる余裕はなかった。
そして、僕が十三歳のころ、また、新たな弟が出来ると、両親に聞かされる。
もうこのころの僕が見る景色は全て灰色だった。
毎日毎日褒められ、敬われ、同世代の子たちにも友達としてではなく、次代の族長として扱われる。
これほど残酷なことはない。
新たに生まれた三男の弟、アレンは落ちこぼれだった。
どれだけ僕は運がないのだろう。
もう、死んでしまおうかと迷ったぐらい生きる理由を見失っていた。
しかし、
『兄にぃ! 見てこれ!』
あれはアレンが四歳のころ。
今はもう記憶はないだろうが、アレンは満面の笑みで僕にプレゼントを持ってきた。
『これは…………魔物の卵か⁉』
僕はそう気づいた瞬間、急いで集落の外に捨てに行った。
弟が忌み子だなんて信じられるはずがない。
しかし、
『兄にぃ! また、これ家の前にあったよ』
今でのあの衝撃は覚えている。
アレンはその魔物の卵と契約をしていたのだ。
だから何度捨てても元に戻ってきた。
その時の僕は魔物は獣に劣る。だから幼い落ちこぼれのアレンでも契約できたのだろう。そう考えていた。
なので、僕は試しに、集落の外でたまたま見つけた魔物に契約魔法をかけてみた。
『…………あれっ?』
僕が契約魔法を行使しようとした瞬間、僕は気を失ってしまう。
あの時は契約獣が守ってくれたから生き延びれたものの、実際、魔物の前で気を失うなど間一髪だった。
そして僕は、一週間意識不明の状態が続いた。
王都の宮廷治癒士が僕を治してくれたため生きることが出来たのだ。
症状は魔力欠乏症。
僕は治癒士に頼んで、ただの体調不良ということにしてもらったので誰も知らない。
本当は魔物と契約しようとしたことで、僕の膨大にあったはずの魔力が一瞬でなくなったのだ。
目を覚ました時、僕は大いに家族と抱き合って喜んだ。
家族は僕が生きていることに喜んだと思っているだろうが、僕はアレンという弟に歓喜していたのだ。
僕はアレンという目標を見つけた。
あれは神童でも天才でも忌み子でもない。
僕をも超える化け物だ。
これほど嬉しいことはない。
誰も理解できなくても、誰も理解しようとしなくても僕だけは知っている。
この瞬間、アレンは僕の目標になった。
どれだけ努力しても追いつけそうにない高い壁。
いつも灰色だった僕の景色は色を取り戻したのだ。
毎日必死になって勉学に励み、修練に励み、そしてそれをアレンに教えた。
するとアレンは僕よりもっと上の段階を歩み始める。
もう楽しくて仕方がなかった! 僕より上の存在がいることが!
アレン、そして、そのことを理解してくれるシャルロッテは僕にとって本当の支えになっていたのだ。
まぁ結局、僕は自分のために行動もする酷い兄ちゃんである。
でも……それでも僕が行動する一番の理由は別だ。
それは、ただ単に僕の可愛い弟が僕みたいに孤独になってほしくないだけ。
無邪気でいつも明るく振舞っているアレンに出来るだけ孤独感を与えない。
僕を孤独から救ってくれた恩人である大切な弟を同じような目に合わせない。
それが僕の行動の理由であり、存在意義でもある。
だから僕は………………………………こんなところで止まってはならない!
「ふ……ふざけるなぁぁぁぁ!」
僕は腹の底から雄たけびを上げて立ち上がった。
『流石私の子! 神童だわ!』
『次期族長は絶対にキールくんだな!』
『もう、キールには勝てねぇわ』
僕は幼い頃から天才や神童、かのこのテイマー一族を生み出した伝説のテイマーの生まれ変わりなどともてはやされた。
そりゃあ最初は嬉しかった。
でも、それからは苦痛でしかなかった。
初めて獣と契約した時は僕だけ特例で五歳のころ。
今でもはっきりと覚えている。僕を利用しようと考えていた大人たちの汚い目を。
六歳で二体も獣を従え、契約魔法のほぼ全てを覚えた。
そこからは僕の行動一つ一つが偉業としてとられる。
そんな時、弟が生まれてくる。そう両親に言われた。
僕は嬉しかった。やっと、この苦痛が終わる。そう喜んでいたんだ。
しかし、そう現実は上手くいかない。
生まれた七歳年下の弟、リンクは平凡な子だった。
普通の子のように成長し、自由気ままに遊び、ぬくぬくと人生を送る。
だから、僕はそこまでリンクのことが好きではない。
実際リンクは神童の弟、として期待されていたのが重みになっていたかもしれないが、その頃の僕は子供だったため、そこまで気を利かせる余裕はなかった。
そして、僕が十三歳のころ、また、新たな弟が出来ると、両親に聞かされる。
もうこのころの僕が見る景色は全て灰色だった。
毎日毎日褒められ、敬われ、同世代の子たちにも友達としてではなく、次代の族長として扱われる。
これほど残酷なことはない。
新たに生まれた三男の弟、アレンは落ちこぼれだった。
どれだけ僕は運がないのだろう。
もう、死んでしまおうかと迷ったぐらい生きる理由を見失っていた。
しかし、
『兄にぃ! 見てこれ!』
あれはアレンが四歳のころ。
今はもう記憶はないだろうが、アレンは満面の笑みで僕にプレゼントを持ってきた。
『これは…………魔物の卵か⁉』
僕はそう気づいた瞬間、急いで集落の外に捨てに行った。
弟が忌み子だなんて信じられるはずがない。
しかし、
『兄にぃ! また、これ家の前にあったよ』
今でのあの衝撃は覚えている。
アレンはその魔物の卵と契約をしていたのだ。
だから何度捨てても元に戻ってきた。
その時の僕は魔物は獣に劣る。だから幼い落ちこぼれのアレンでも契約できたのだろう。そう考えていた。
なので、僕は試しに、集落の外でたまたま見つけた魔物に契約魔法をかけてみた。
『…………あれっ?』
僕が契約魔法を行使しようとした瞬間、僕は気を失ってしまう。
あの時は契約獣が守ってくれたから生き延びれたものの、実際、魔物の前で気を失うなど間一髪だった。
そして僕は、一週間意識不明の状態が続いた。
王都の宮廷治癒士が僕を治してくれたため生きることが出来たのだ。
症状は魔力欠乏症。
僕は治癒士に頼んで、ただの体調不良ということにしてもらったので誰も知らない。
本当は魔物と契約しようとしたことで、僕の膨大にあったはずの魔力が一瞬でなくなったのだ。
目を覚ました時、僕は大いに家族と抱き合って喜んだ。
家族は僕が生きていることに喜んだと思っているだろうが、僕はアレンという弟に歓喜していたのだ。
僕はアレンという目標を見つけた。
あれは神童でも天才でも忌み子でもない。
僕をも超える化け物だ。
これほど嬉しいことはない。
誰も理解できなくても、誰も理解しようとしなくても僕だけは知っている。
この瞬間、アレンは僕の目標になった。
どれだけ努力しても追いつけそうにない高い壁。
いつも灰色だった僕の景色は色を取り戻したのだ。
毎日必死になって勉学に励み、修練に励み、そしてそれをアレンに教えた。
するとアレンは僕よりもっと上の段階を歩み始める。
もう楽しくて仕方がなかった! 僕より上の存在がいることが!
アレン、そして、そのことを理解してくれるシャルロッテは僕にとって本当の支えになっていたのだ。
まぁ結局、僕は自分のために行動もする酷い兄ちゃんである。
でも……それでも僕が行動する一番の理由は別だ。
それは、ただ単に僕の可愛い弟が僕みたいに孤独になってほしくないだけ。
無邪気でいつも明るく振舞っているアレンに出来るだけ孤独感を与えない。
僕を孤独から救ってくれた恩人である大切な弟を同じような目に合わせない。
それが僕の行動の理由であり、存在意義でもある。
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