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元家族

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「なんてことだ…………うちの一族から忌み子が生まれていたなんて」

 族長は頭を抱えながらため息交じりにそう口にした。

「…………でも、流石に集落から追放するのはやり過ぎたのではないのでしょうか? 他の集落に預けるなどして他にもやり方が――」
「黙れ! お前らのせいでこんなことになったんだろうが!」

 今までの温厚な族長の声とはまるで別人のような罵声に私はひるんでしまう。

 何故このような事態になったのだろうか?
 私の息子はいわば落ちこぼれだった。
 それならば、もうテイマーの道を諦めさせていた方がよかったのかもしれない。

 妻は絶対にあの忌み子は息子ではなかったと自分に言い聞かせており、もう、考え直すことはないだろう。

 アレンは私の契約獣『ユニコーン』のラッタに運ばせたため道中魔物に襲われることはなかったはずだ。
 ラッタにはアレンを国境付近に置いてくるように命令しておいた。
 何故なら我が一族以外の人間がクエストに来ている可能性があるからだ。

 しかし、そこからは独りだ。
 ラッタが返ってきたときには角が折れていた。
 それはラッタの角には少し神聖な力が含まれていて魔物は嫌悪するのだという。

 ラッタはそれを理解したうえでアレンに渡したのだろう。
 もう二度と生えないのを覚悟で。

「まぁ知っている者は一族内だけだ。運がよかった。家紋の名を汚さなくて済む」

 族長は歪な笑みを浮かべながら自分の胸をなでおろすように安堵している。
 妻もその横で同じように安堵していた。

(…………私には無理だ)

 私はどうしてもその光景が許せなくてゆっくりと部屋から出ようとした瞬間、

「族長様! 緊急事態です!」
「どうした? 忌み子に関係ないことなら後にして――」

 私の甥。『レルン』が目に血を走らせながら族長の間に走って入ってきた。
 そして、その族長の言葉を遮るようにレルンは言う。

「大量の野良の獣たちがこの集落に向かって来ています! その数…………五百体を超える模様です!」
「…………何だと!」
「「…………なッ!」」

 この部屋にいる私と妻、そして族長が同時に息をのんだ。
 五百体、それは驚愕の数字であった。
 この地域の獣をすべて集結させて集まるか集まらないかぐらいの数字だ。

「それと、先代の族長様からお言葉を承っております!」

 先代の族長は、そこまで強い獣を従えてはいなかったものの、歴代一の政治力と頭脳を持った策略家だった。
 近くの集落をまとめ上げ、我らが一族の属村にし、全テイマーの一族の中で絶対的な存在へと変えたお方なのだ。

「何だ! 早く言え!」

 血相を変えた族長が玉座から立ち上がりながら言う。
 レルンはゴクリとここまで聞こえる音を出しながら唾をのみ、冷や汗をかきながら口を開いた。

「お前は…………『過ちを犯した』。とのことです」

 当然、族長は目に血を走らせながら体を震わせている。
 そして、この部屋中に響き渡る声で吠えた。

「あのクソジジイはどこ行ったぁ!」

 その言葉を聞いたレルンは本当に申し訳なさそうに頭を少し下げ、地面を見ながら言った。

「目の間にいたはずなんですが…………急に消えてしまいまして。集落内は獣に探させたんですが見つかりませんでした」
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