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ゴブくんも疲れました

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「……ん…………もう朝か」

 窓から差し込む朝日で俺はゆっくりと混沌に沈んでいた俺の意識が起き始める。
 朦朧もうろうとする意識を起こすため、俺は自室にある洗面台の前で顔をごしごしと洗う。
 
 最近、色々あったためか少し体が重い気がする。
 まぁ嫌な気分ではないが。

「…………ん?」

 何かいつもより部屋の中がどんよりしている気がする。

 俺の部屋はもちろん一人部屋だ。
 俺の隣の部屋がゴブくん。反対側にドラがいる。

 俺の部屋にはベットとテーブルと椅子が一つずつという簡素な部屋だ。
 あと一週間したらテレビ? というものを魔王が置いてくれるらしい。少し楽しみである。

 そんな簡素な部屋にも関わらず、何かしらの圧迫感があった。
 俺は空気が原因かと思い、窓を大きく押し開ける。
 すると、

「「「「「「「「おはようございます! アレン様!!」」」」」」」」

 バタッ

 俺は目にも止まらぬ速さで窓を閉める。
 そして頭を押さえ、目を何度もこする。

「……………………本当に疲れてるんだな」

 学校に行くという慣れないこともした。
 俺は特に何も思わなかったが少しからずストレスが溜まっていたのかもしれない。
 でも、もしかしたらと思い、もう一度ゆっくり窓を押し開け、

「「「「「「「「おはようございます! アレン様!!」」」」」」」」

 バタッ!

 俺は先ほどより強い勢いで窓を閉める。

「幻覚症状に幻聴…………医者に診てもらわなきゃ」

 俺はそう自分自身を悲観しながら口にした。
 俺は窓の鍵を閉め、重い腰を上げ部屋から出ようとすると、

「うえぇぇん! 助けてくださぁい! もう僕には無理です!」

 目に涙を浮かべながらゴブくんが俺の部屋に突入してきた。
 俺はその必死さに少しひいてしまう。
 そしてゴブくんが俺の肩をどんどんと揺らしてくる。

「…………どうしたの? そんなに動揺してるなんて珍しい」
「あんなの無理ですよ! 僕はもう死んじゃいます!」
「…………はぁ?」

 俺は流石に脳が追い付かず素っ頓狂な声を出してしまう。
 しかし、ゴブくんの興奮は収まりそうにならない。
 
「分かった。何があったの?」

 俺はゴブくんに椅子を勧めながらそう口にした。
 ゴブくんは素直に席に座り一度ため息をついてから話し始めた。

「僕、いつものように朝市行ってきてたんですよ」

 そう。ゴブくんは毎日、朝食の材料を買いに早く起きているのだ。
 別に宮廷料理人が作ってくれるのだが、ゴブくんは『主の飯は僕が作ります』と張り切っていつも朝食を作ってくれているのだ。
 ちなみに普通においしい。

「その時にですね。僕…………三十回も殺されかけたんですよ」
「…………何言ってんの?」
「……なッ! そんな顔で見ないでくださいよ! 本当なんですから!」

 俺がジト目でゴブくんを見るとゴブくんは悲しそうな表情で俺を見てくる。

「本当なん……………………いやあああああぁぁぁ!」

 急に俺の方、いや正確には俺の背後を見て急に席から崩れ落ち、後ろに這いずるように逃げていく。
 俺はゆっくりと振り返るが特に何も変わらない俺の部屋の一部が映るだけだった。

「……ま…………マド」

 窓を指さしながらゴブくんは口をパクパクさせ、そう言った。
 俺は窓の外に何かいるのかと思い、ゆっくりと押し開ける。

「「「「「「「「おはようございます! アレン様!!」」」」」」」」

 バタッ!!

「どうしたんだ? 何もいなかったよ?」
「主⁉ 現実から目を背けないでくださいよ! いましたよね⁉ 今! 絶対にいましたよね⁉」
「ん? 多分ゴブくんも疲れてるんだよ」

 俺はアハハハと笑いながら体の骨をポキポキと鳴らす。

 だってそれはだれでも現実だとは思わないだろう。

 朝起きて窓を開けたら何百もの鳥類の魔獣が挨拶をしに来るなんて。
 しかも、全員、魔獣の第三形態だ。
 俺たち魔族の言葉も進化にあたり知能が上がるため一瞬で覚えられたのだろう。

「私、なんかその魔獣たちの中で主の第一位の配下? みたいな認識になってるらしく朝から決闘ばかり…………もう嫌です! 助けてください!」

 ちなみにゴブくんはこの一年で緑人族ゴブリナから緑魔人ゴブロードに進化した。
 これは偉業らしく、世界でも初だと魔王が言っていた。
 ゴブくん曰く。こんな規格外な奴らと生活していれば嫌でも進化するらしい。

 しかし、紫電鳥たちは三次形態だ。二次形態のゴブくんが勝てるわけがない。

「…………ドンマイ」
「なんでそんな他人事なんですか! 僕死んじゃうかもしれないんですよ⁉」
「ゴブくんならどうにかなるさ! 俺は学校に行ってくるよ!」

 俺はうずくまっていたゴブくんの肩に手を置き慈悲のある笑みを浮かべながら俺は先に部屋を出た。

「嫌だああああああぁぁぁ!」

 ゴブくんは俺の部屋で独り、悲しみを表現するように叫んでいた。
 
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