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十九話 早速戦闘

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 グレーは俺の腕を掴もうとしたが、少し遅かったようだ。
 俺の視界が真っ暗に染まり、また色を取り戻した時には隣にグレーはいなかった。

「ここは…………」
「ここはデルターナで一番大きい訓練場ですよ。下を見てください」

 サテラの手を離した俺はすぐに地面を見る。
 するとその地面には視野には入りきらない巨大な魔法陣が描かれていた。

「これはどんな傷でも一瞬で治す、回復魔法の超級を添付したものよ。この大陸でも一番巨大な魔法陣じゃないかしら」

 何故か作ったわけでもないサテラがドヤ顔をしている。
 その横でミーナも、

「死んだら私に言うの。私に治せないものはないの」
「…………死んだら喋れないんじゃ」
「フッフ。君あのバカより全然いいの」

 期待していた言葉だったのかすごく嬉しそうに笑っている。
 内容が子供の内容なら俺も笑えたのだが。

 後から聞いたことだがミーナは回復魔法に関しては幹部にも劣らない技術の持ち主らしい。
 何故こんな実力者が学校にいるのかは分からないが、そんな人を集めたクラスがXクラスということだ。

「…………誰がバカだぁ!」

 扉を吹き飛ばして入ってきたのはグレーだ。

「早かったわね。一時間はかかるかと思っていたのに」
「俺にかかれば五キロなんて三分だぜ」
「……………………」

 正直に言おう。
 今、俺は猛烈に後悔している。
 三人とも多分、一般常識がない。
 一般常識がない奴が言うな。と思うかもしれないが俺以上なのでしょうがない。

 俺は一般常識を学ぶために学校に入った。
 だが、俺は思う。
 このままこのクラスにいれば。常識が崩壊しそうだ。

「じゃあやるか! サテラとミーナは二階で見てな」
「はーい」
「分かったの」

 改めて見ればこの訓練場はものすごく大きい。
 先ほど、選任を収納したホールに比べれば小さいが、普通の訓練場を比べればとてつもなく大きい。
 転移は突き抜けていて広大な空が見えた。

 グレーに指示された女性陣二人は【テレポート】で一瞬で二階に転移する。

 ここらで言っておくが【テレポート】とは空間魔法でも最高峰の魔法で二段階以上でしか使えないはずだ。
 それを平然として何度も連続行使している。

 俺はそんなことを考えながら頭を押さえる。
 先ほどから化け物にしか会っていない気がするのは俺の間違えだろうか。

「じゃあやりますか! アレン!」
「あ、うん」

 俺とグレーはこの巨大な訓練場の端と端に移動し距離をとる。
 俺も何度かゴブくんと訓練をしたことがあるも、軽い怪我がないようにする程度だ。
 しかし、今のグレーは本気で殺しにかかっている目をしている。
 俺も【インベントリ】を開き、短剣を二本取り出す。

 【インベントリ】も【テレポート】同様、半年かけて覚えた魔法だ。
 ちなみに俺は空間魔法系列以外の魔法適性があまりなかった。
 なので今も短剣を使っている。

「じゃあ始めるよ~」

 サテラが【インベントリ】を使い小さな旗のようなものを取り出す。

 おいおいおい。【インベントリ】も使えるのかよ。
 俺は心の中で毒づきながら殺気が送られてくる方を見直す。

 そしてこの空間に静寂が一瞬流れた。
 しかし、それもつかの間。

「…………始め!」

 二階からサテラが旗を振り上げ、大声でスタートの合図を送った。
 その隣ではミーナが体を前のめりにして俺たちを観戦している。

「オラアアァァァ!」
「せやあああぁぁ!」

 俺とグレーは互いにサテラが声を出したのと同時に地を蹴り突進した。
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