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十八話 Xクラスの三人

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「俺はグレー。餓狼族ヴェアウルフだ。これでもこの学校の七年生な」

 綺麗な灰色の毛並みに俺より頭一つ分ほど大きい身長。
 そして獣の狼と似たような特徴を持つ男性の魔族だ。

「私はサテラ。月光族ライムーンよ。一昨年この子と一緒に入ったわ」

 一目見ただけど月を想像してしまうような神々しさ。
 リーシャと正反対の容姿をしているが、同じような美貌に年上の女性という印象がある。

「私はミーナ。妖樹族ドライアドなの。私は三年生なの。サテラも言ったけどサテラと同級なの」

 草木や蔓を体に羽織るものようにまとわせている。
 身長は俺とそう変わりなく、幼い少女。という印象が強い。

 一人一人自己紹介を終えた三人は今度は俺、とでも言いたげな表情でこちらを見ている。
 後ろを振り返って助けてもらおうと入口を見てみると、もう案内係はいなくなっていた。
 俺は腹をくくり、自己紹介を始める。

「俺はアレンです…………悪魔族デーモンです。えーっと…………十三歳です」

 三人とも名前と同時に何年性かも言っていたので、俺の場合一年生なのは見たら分かるだろう。
 なので、俺は年齢を言ってみることにした。

 しかし、俺の反応とは違う反応が返っていた。

「ええ⁉ まだ子供じゃない!」
「十三歳で名前持ちネームド? こいつ御曹司か?」
「お前ら目は節穴なの? アレンの魔力量…………私たちの総魔力を余裕で超えてるの」

 グレーは席から音をたてて立ち、俺の元まで近寄ってきて体をぶんぶんと振ってきた。
 そして、最後のミーナの言葉を聞いてグレーは腹を抱えて笑い始めた。

「あッはッは! 冗談きついぞミーナ。こんな子供が俺たちより魔力が多いわけないだろ」
「アッハッハ! 魔力量二の奴が何言ってるのかしら」
「おいサテラ! 俺の真似…………ってか俺のコンプレックスを新入生に早々ばらさないでくれる⁉」

(あれ、思ったよりも楽しそうなクラスなんじゃ…………)

 俺はこの光景を見てそんなことを思っていた。
 だが、俺のその考えは一瞬で覆される。

「じゃあアレン。俺と戦おうぜ」
「え? 授業は?」
「そんなもんXクラスにはねぇよ! さっさと手かせ」
「あ…………うん」

 俺は言われた通りグレーの手を握った。
 それを確認したグレーは後ろで座っている女子二人に告げる。

「今日の授業は戦闘訓練にする! お前らも行くぞ!」

 その様子を見ていた二人は何の迷いもなく頷いた。
 しかし、その反応は想定外だったのかグレーは呆けた顔をして聞き直す。

「…………え? お前らの嫌いな戦闘訓練だぞ?」
「だって新入生の力がどれぐらいなのか気になるしね~」
「どんな凄い魔法を使うのか気になるの」

 まるで信じられないとでも言いたげな表情で二人ではなく俺を見た。

「俺に振らないでください」
「いや、だってこいつらが戦闘訓練に参加するんだぞ? いつも菓子ばかり食ってぐうたらしてる――ぐはッ!」

 座っていたはずのサテラがグレーの腹に拳をめり込ませる。

 うん。すごい悶えてる。

 そんなグレーをミーナは足でちょこちょこと虫をいじるような子供の表情をして蹴っている。
 傍から見たら子供が楽しそうに遊んでいるように見えるのだが、その蹴られているのは魔族だ。

 俺は絶対にサテラとミーナを怒らせないようにしようとバレないように心の中で誓う。

「じゃあこんな奴、置いてさっさと行きましょ。はい。アレン君も私の手、握って」
「あ、ありがとうございます」

 俺はその柔らかい手を握り返す。
 俺の後にミーナがサテラの俺が握った手と反対の手を握る。

 その瞬間、グレーが悶えながらも立ち上がり、こちらに向かってくる。

「おい……ちょっと…………待っ――」
「【テレポート】!」

 何のためらいもなくサテラは魔法を行使した。
 そして視界が真っ暗に染まる。

 グレーの魔力量は二とか言っていたが、大丈夫なのだろうか。
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