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八話 レッツ魔王城
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「…………本当にすまなかった」
俺たちの考えは杞憂だったようだ。
ドラは急に腰を折り頭を下げながら言ったのだった。
ドラは顔を上げ言いにくそうに、少し恥ずかしそうに言う。
「もう一度俺と契約してくれないか?」
その様子を見て疑うようにゴブくんが口を開け。
「何の風の吹き回しなんですか? 先ほどまでは主を手にかけようとしていたのに」
「強制契約も外れてる…………」
俺とゴブくんの間にあった強固な偽りのつながりが今、切れたのが分かった。
「緑人族……いや、ゴブさん。あんたも契約した時に気づいたはずだ。その子供の中にある膨大な魔力とその心を…………」
そのドラの様子を見てゴブくんは吹き出すように笑った。
「ドラさんもあれを見たんですか? あッはッは! ならしょうがないですね!」
「ちょっと話についていけないんだけど……」
俺がそう言って二人の会話に入ろうとすると、二人は笑いながら、
「主は魔王より凄いってことですよ」
「魔王様はあそこまでとは言わないが結構、綺麗で、一生仕えたいと思うぐらいだったぞ? まぁこの子供を見ればちょっとその気持ちは揺らいでしまうが」
俺はその話を聞いて思い出す。
ドラは元々誰かに仕えていたということに。
まぁ行く宛てもなかったのでちょうどいいといえば良いだろう。
「じゃあ行こっか!」
「何処にですか?」
ゴブくんは興味深さうに俺に聞く。
いや、少し顔が青くなっているように見える。
まぁ元々緑色なのでほぼ分からないが。
「ん? 決まってるじゃん。マオウさんに会いにいくんだよ!」
「「…………は?」」
本当に息ぴったりに二人は口を開けた。
俺はそれが少しおかしくて笑いながら、
「ドラの主はマオウさんだったんでしょ? ならその人に許可をもらわないと契約は出来ないよ。まぁさっきは殺されそうだったから一時的に契約しようとしたけど」
その俺の言葉を聞いて信じられないと言うような表情をしながらドラは言う。
「いや、マオウさんって……一応、魔族の父なわけで…………」
「…………マオウさんて独りぼっちの魔族を見捨てるような人?」
急な話の展開に少し理解していないような口ぶりでドラは、
「そりゃあ寛大なお方だからな。見捨てるはずがない」
まるで自分のことのように嬉しがりながら言った。
それに続くようにゴブくんも、
「僕たちのような最弱の種族のことも考えてくれている方ですからね……」
ゴブくんが魔物であった時の話だろう。
俺はその言葉を聞いて嬉しがるように拳を握りしめる。
「じゃあ俺も親を失った魔族ってことでマオウさんに匿ってもらお!」
「ちょっと待ってください。主。流石にそれは…………」
「ドラ! もうちょっと大きくなれる?」
俺はゴブくんの弱弱しい否定の声を無視し、ドラの翼を触りながら言う。
ドラの翼はと鱗で覆われていて触るだけで指から血が出そうだ。
「分かった…………うッ!」
俺はドラから距離をおいてその様子を見守る。
ドラは力を入れるように背を丸くした。
「…………わぁ」
すると小さな翼がまるで本物の龍のような巨大な翼になり、身体も十倍以上の大きさになる。
まるでおとぎ話の龍神を見ているようだった。
俺は少しの間ドラに見惚れてしまう。
「魔力感知で他の幹部が来てもいかない。さっさと行くなら行こう」
「うん。そうだね! 行くよゴブくん!」
「……あのー。僕の意志は…………」
俺はゴブくんの腕を引っ張って差し出されたドラの手の中に入る。
そして入ったのを確認したドラは俺たちを背中の柔らかい羽根のような所に置く。
全方向に柔らかい羽根がありもたれかかっても大丈夫。
まるで人間を駄目にするような空間だ。
「じゃあ飛ばすぞ!」
「いぇーい!」
「嫌だああああぁぁぁ! 行きたくなぁぁぁぁぁい!」
ドラは体を細くし空気を切るように飛び始める。
俺は心の底から笑いながら、ゴブくんは心の底から悲しみながら魔王城へと向かった。
俺たちの考えは杞憂だったようだ。
ドラは急に腰を折り頭を下げながら言ったのだった。
ドラは顔を上げ言いにくそうに、少し恥ずかしそうに言う。
「もう一度俺と契約してくれないか?」
その様子を見て疑うようにゴブくんが口を開け。
「何の風の吹き回しなんですか? 先ほどまでは主を手にかけようとしていたのに」
「強制契約も外れてる…………」
俺とゴブくんの間にあった強固な偽りのつながりが今、切れたのが分かった。
「緑人族……いや、ゴブさん。あんたも契約した時に気づいたはずだ。その子供の中にある膨大な魔力とその心を…………」
そのドラの様子を見てゴブくんは吹き出すように笑った。
「ドラさんもあれを見たんですか? あッはッは! ならしょうがないですね!」
「ちょっと話についていけないんだけど……」
俺がそう言って二人の会話に入ろうとすると、二人は笑いながら、
「主は魔王より凄いってことですよ」
「魔王様はあそこまでとは言わないが結構、綺麗で、一生仕えたいと思うぐらいだったぞ? まぁこの子供を見ればちょっとその気持ちは揺らいでしまうが」
俺はその話を聞いて思い出す。
ドラは元々誰かに仕えていたということに。
まぁ行く宛てもなかったのでちょうどいいといえば良いだろう。
「じゃあ行こっか!」
「何処にですか?」
ゴブくんは興味深さうに俺に聞く。
いや、少し顔が青くなっているように見える。
まぁ元々緑色なのでほぼ分からないが。
「ん? 決まってるじゃん。マオウさんに会いにいくんだよ!」
「「…………は?」」
本当に息ぴったりに二人は口を開けた。
俺はそれが少しおかしくて笑いながら、
「ドラの主はマオウさんだったんでしょ? ならその人に許可をもらわないと契約は出来ないよ。まぁさっきは殺されそうだったから一時的に契約しようとしたけど」
その俺の言葉を聞いて信じられないと言うような表情をしながらドラは言う。
「いや、マオウさんって……一応、魔族の父なわけで…………」
「…………マオウさんて独りぼっちの魔族を見捨てるような人?」
急な話の展開に少し理解していないような口ぶりでドラは、
「そりゃあ寛大なお方だからな。見捨てるはずがない」
まるで自分のことのように嬉しがりながら言った。
それに続くようにゴブくんも、
「僕たちのような最弱の種族のことも考えてくれている方ですからね……」
ゴブくんが魔物であった時の話だろう。
俺はその言葉を聞いて嬉しがるように拳を握りしめる。
「じゃあ俺も親を失った魔族ってことでマオウさんに匿ってもらお!」
「ちょっと待ってください。主。流石にそれは…………」
「ドラ! もうちょっと大きくなれる?」
俺はゴブくんの弱弱しい否定の声を無視し、ドラの翼を触りながら言う。
ドラの翼はと鱗で覆われていて触るだけで指から血が出そうだ。
「分かった…………うッ!」
俺はドラから距離をおいてその様子を見守る。
ドラは力を入れるように背を丸くした。
「…………わぁ」
すると小さな翼がまるで本物の龍のような巨大な翼になり、身体も十倍以上の大きさになる。
まるでおとぎ話の龍神を見ているようだった。
俺は少しの間ドラに見惚れてしまう。
「魔力感知で他の幹部が来てもいかない。さっさと行くなら行こう」
「うん。そうだね! 行くよゴブくん!」
「……あのー。僕の意志は…………」
俺はゴブくんの腕を引っ張って差し出されたドラの手の中に入る。
そして入ったのを確認したドラは俺たちを背中の柔らかい羽根のような所に置く。
全方向に柔らかい羽根がありもたれかかっても大丈夫。
まるで人間を駄目にするような空間だ。
「じゃあ飛ばすぞ!」
「いぇーい!」
「嫌だああああぁぁぁ! 行きたくなぁぁぁぁぁい!」
ドラは体を細くし空気を切るように飛び始める。
俺は心の底から笑いながら、ゴブくんは心の底から悲しみながら魔王城へと向かった。
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