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37話 登校

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 とうとう魔術学院の入学式、当日となった。

「大丈夫か? 俺も一緒について行った方がいいか?」
「過保護すぎでしょ。私もネロにいろいろ教わったから大丈夫よ」

 心配そうに見送りをするハデスに私は苦笑いを漏らす。

 ネロとはサレーナ同様に四天王の一人である。
 四天王の中では最年少で、二十一歳という若さで四天王まで上がってきた実力者であった。
 私はこの一週間、ネロに魔族としてあり方を教わっていたのだ。

 そのため、一人で出歩こうが魔族に話しかけられよう余裕である。魔族らしく生きることが出来るだろう。
 ちなみに私の親権はトリス、四天王の一人で最高齢のおじいちゃん魔族にある。
 どうしてもハデスが親権を欲しいと言っていたが、私の父は魔王です! なんて言えるはずもない。
 トリスも十分身分は高いが、捨て子だった私を養子として拾ってくれた、とでも言っておけば皆、納得はしてくれるだろう。

「そもそもこっそりロキを連れてくるんでしょ?」
「ぐっ! ま、まぁそれは俺にも分からん」

 彼は私の問いに動揺しながら視線を逸らす。
 ロキも四天王であり、隠密行動の天才であり、魔界の情報を網羅している魔族である。
 私たちがダンジョンでボスを倒しそうになったのにいち早く察知したのもロキであった。

 まぁロキが健在である限り、全ての行動が観察されているわけだ。

「じゃあ行ってくるわね」
「あ、あぁ。門限までには帰って来いよ? 五時だからな?」
「はいはい」

 私は今年で十八になるというのに、門限が五時というのはいかがなものか。
 だが、私は所詮、人間なのである。文句を言える立場ではない。
 ハデスが言うにはサーシャもテスラも生きているらしい。
 なら、私が文句を言うことは特にない。あわよくば私が生きていることを伝えたいという願望はあるが。

「俺も後で追うからな!」
「行ってきます」

 どうしても一緒に登校したそうな表情をしていたハデスに背を向け私は魔王城の扉を開く。
 すると、そこには…………

「これが魔術学院……」

 私は魔王城の扉に仕掛けられていた【テレポート】によって魔法学院の入口へと転移した。
 流石に魔王城から堂々と出ていくのは不審がられるため、サレーナに付与してもらっていたのだ。

 私は目の前にそびえる魔王城にもひけを取らないような機関に目を奪われる。
 何万人も収容しそうな巨大な建物がいくつも存在した。

 私はこれから三年間にわたってここで魔術を学ぶことになる。
 まぁ魔術も好きであるが、私は剣術も鍛えようと思っている。
 それはどことなく私には魔術の才がないと自覚しているからだ。
 ハデスたちは強くなれると言っていたが私はおおよそ魔術では成り上がれない。そんな気がしている。

「うわぁ……まさかここまで人がいるとは」

 辺りを見回すと私同様、魔術学院に向かっている魔族たちが数百、数千人いた。
 このままこの場所にいれば酔いそうである。

 どの魔族もかなりの実力を持っており、私たちが今まで戦っていた魔獣など比べ物にならない。
 だが、よく見るとそこまで体つきのいい魔族はいないように見える。
 もしかしたら、魔族は魔術に偏った教育を行っているのかもしれない。

 実際、ハデスに向かって私が刺突しようとしたとき、ハデスは明らかに戸惑っていた。
 まぁ刺されたところですぐに再生するだろうが、避けることが難しかったはずだ。

「よし! 頑張るわよ!」

 私は自分自身を鼓舞してから魔術学院へと足を進めたのだった。
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