37 / 44
37話 登校
しおりを挟む
とうとう魔術学院の入学式、当日となった。
「大丈夫か? 俺も一緒について行った方がいいか?」
「過保護すぎでしょ。私もネロにいろいろ教わったから大丈夫よ」
心配そうに見送りをするハデスに私は苦笑いを漏らす。
ネロとはサレーナ同様に四天王の一人である。
四天王の中では最年少で、二十一歳という若さで四天王まで上がってきた実力者であった。
私はこの一週間、ネロに魔族としてあり方を教わっていたのだ。
そのため、一人で出歩こうが魔族に話しかけられよう余裕である。魔族らしく生きることが出来るだろう。
ちなみに私の親権はトリス、四天王の一人で最高齢のおじいちゃん魔族にある。
どうしてもハデスが親権を欲しいと言っていたが、私の父は魔王です! なんて言えるはずもない。
トリスも十分身分は高いが、捨て子だった私を養子として拾ってくれた、とでも言っておけば皆、納得はしてくれるだろう。
「そもそもこっそりロキを連れてくるんでしょ?」
「ぐっ! ま、まぁそれは俺にも分からん」
彼は私の問いに動揺しながら視線を逸らす。
ロキも四天王であり、隠密行動の天才であり、魔界の情報を網羅している魔族である。
私たちがダンジョンでボスを倒しそうになったのにいち早く察知したのもロキであった。
まぁロキが健在である限り、全ての行動が観察されているわけだ。
「じゃあ行ってくるわね」
「あ、あぁ。門限までには帰って来いよ? 五時だからな?」
「はいはい」
私は今年で十八になるというのに、門限が五時というのはいかがなものか。
だが、私は所詮、人間なのである。文句を言える立場ではない。
ハデスが言うにはサーシャもテスラも生きているらしい。
なら、私が文句を言うことは特にない。あわよくば私が生きていることを伝えたいという願望はあるが。
「俺も後で追うからな!」
「行ってきます」
どうしても一緒に登校したそうな表情をしていたハデスに背を向け私は魔王城の扉を開く。
すると、そこには…………
「これが魔術学院……」
私は魔王城の扉に仕掛けられていた【テレポート】によって魔法学院の入口へと転移した。
流石に魔王城から堂々と出ていくのは不審がられるため、サレーナに付与してもらっていたのだ。
私は目の前にそびえる魔王城にもひけを取らないような機関に目を奪われる。
何万人も収容しそうな巨大な建物がいくつも存在した。
私はこれから三年間にわたってここで魔術を学ぶことになる。
まぁ魔術も好きであるが、私は剣術も鍛えようと思っている。
それはどことなく私には魔術の才がないと自覚しているからだ。
ハデスたちは強くなれると言っていたが私はおおよそ魔術では成り上がれない。そんな気がしている。
「うわぁ……まさかここまで人がいるとは」
辺りを見回すと私同様、魔術学院に向かっている魔族たちが数百、数千人いた。
このままこの場所にいれば酔いそうである。
どの魔族もかなりの実力を持っており、私たちが今まで戦っていた魔獣など比べ物にならない。
だが、よく見るとそこまで体つきのいい魔族はいないように見える。
もしかしたら、魔族は魔術に偏った教育を行っているのかもしれない。
実際、ハデスに向かって私が刺突しようとしたとき、ハデスは明らかに戸惑っていた。
まぁ刺されたところですぐに再生するだろうが、避けることが難しかったはずだ。
「よし! 頑張るわよ!」
私は自分自身を鼓舞してから魔術学院へと足を進めたのだった。
「大丈夫か? 俺も一緒について行った方がいいか?」
「過保護すぎでしょ。私もネロにいろいろ教わったから大丈夫よ」
心配そうに見送りをするハデスに私は苦笑いを漏らす。
ネロとはサレーナ同様に四天王の一人である。
四天王の中では最年少で、二十一歳という若さで四天王まで上がってきた実力者であった。
私はこの一週間、ネロに魔族としてあり方を教わっていたのだ。
そのため、一人で出歩こうが魔族に話しかけられよう余裕である。魔族らしく生きることが出来るだろう。
ちなみに私の親権はトリス、四天王の一人で最高齢のおじいちゃん魔族にある。
どうしてもハデスが親権を欲しいと言っていたが、私の父は魔王です! なんて言えるはずもない。
トリスも十分身分は高いが、捨て子だった私を養子として拾ってくれた、とでも言っておけば皆、納得はしてくれるだろう。
「そもそもこっそりロキを連れてくるんでしょ?」
「ぐっ! ま、まぁそれは俺にも分からん」
彼は私の問いに動揺しながら視線を逸らす。
ロキも四天王であり、隠密行動の天才であり、魔界の情報を網羅している魔族である。
私たちがダンジョンでボスを倒しそうになったのにいち早く察知したのもロキであった。
まぁロキが健在である限り、全ての行動が観察されているわけだ。
「じゃあ行ってくるわね」
「あ、あぁ。門限までには帰って来いよ? 五時だからな?」
「はいはい」
私は今年で十八になるというのに、門限が五時というのはいかがなものか。
だが、私は所詮、人間なのである。文句を言える立場ではない。
ハデスが言うにはサーシャもテスラも生きているらしい。
なら、私が文句を言うことは特にない。あわよくば私が生きていることを伝えたいという願望はあるが。
「俺も後で追うからな!」
「行ってきます」
どうしても一緒に登校したそうな表情をしていたハデスに背を向け私は魔王城の扉を開く。
すると、そこには…………
「これが魔術学院……」
私は魔王城の扉に仕掛けられていた【テレポート】によって魔法学院の入口へと転移した。
流石に魔王城から堂々と出ていくのは不審がられるため、サレーナに付与してもらっていたのだ。
私は目の前にそびえる魔王城にもひけを取らないような機関に目を奪われる。
何万人も収容しそうな巨大な建物がいくつも存在した。
私はこれから三年間にわたってここで魔術を学ぶことになる。
まぁ魔術も好きであるが、私は剣術も鍛えようと思っている。
それはどことなく私には魔術の才がないと自覚しているからだ。
ハデスたちは強くなれると言っていたが私はおおよそ魔術では成り上がれない。そんな気がしている。
「うわぁ……まさかここまで人がいるとは」
辺りを見回すと私同様、魔術学院に向かっている魔族たちが数百、数千人いた。
このままこの場所にいれば酔いそうである。
どの魔族もかなりの実力を持っており、私たちが今まで戦っていた魔獣など比べ物にならない。
だが、よく見るとそこまで体つきのいい魔族はいないように見える。
もしかしたら、魔族は魔術に偏った教育を行っているのかもしれない。
実際、ハデスに向かって私が刺突しようとしたとき、ハデスは明らかに戸惑っていた。
まぁ刺されたところですぐに再生するだろうが、避けることが難しかったはずだ。
「よし! 頑張るわよ!」
私は自分自身を鼓舞してから魔術学院へと足を進めたのだった。
0
お気に入りに追加
1,756
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄された地味令嬢は猫として溺愛される
かずき りり
恋愛
婚約者は、私より義妹を選んだ――
伯爵家の令嬢なのに、その暮らしは平民のようで……
ドレスやアクセサリーなんて買ってもらった事もない。
住んでいるのは壊れかけの小屋だ。
夜会にだって出た事はないし、社交界デビューもしていない。
ただ、侯爵令息であるエリックに会う時だけ、着飾られていたのだ……義妹のもので。
侯爵夫人になるのだからと、教育だけはされていた……けれど
もう、良い。
人間なんて大嫌いだ。
裏表があり、影で何をしているのかも分からない。
貴族なら、余計に。
魔法の扱いが上手く、魔法具で生計を立てていた私は、魔法の力で猫になって家を出る事に決める。
しかし、外の生活は上手くいかないし、私の悪い噂が出回った事で、人間の姿に戻って魔法具を売ったりする事も出来ない。
そんな中、師匠が助けてくれ……頼まれた仕事は
王太子殿下の護衛。
表向きは溺愛されている猫。
---------------------
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。
【完結】冤罪で処刑されたので復讐します。好きで聖女になったわけじゃない
かずき りり
ファンタジー
好きで聖女になったわけじゃない。
好きで王太子殿下の婚約者になったわけじゃない。
贅沢なんてしていない。
下働きのように、ただこき使われていただけだ。
家族の為に。
なのに……偽聖女という汚名を着せて、私を処刑した。
家族を見殺しにした……。
そんな国に復讐してやる。
私がされた事と同じ事を
お前らにも返してやる。
*******************
こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。
【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……
小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。
この作品は『小説家になろう』でも公開中です。
【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ
さこの
恋愛
私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。
そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。
二十話ほどのお話です。
ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/08/08
【完結】女が勇者で何が悪い!?~魔王を物理的に拘束します~
かずき りり
ファンタジー
この大陸ではハレアド教の教えが全てであり、その為、15歳になった時に鑑定を行う事で適正な職業が分かるとされている。
そこで引き当てたのは……勇者。
18歳に見えない?
15歳で受けるものだ?
忘れていたんだから仕方がない!
お偉いさん達とは違い、辺境の村では働かざる者、食うべからず!
日々食べる為に働いてるんだい!
そんなあたしが破壊勇者として、エルフ賢者と脳筋聖騎士、破廉恥聖女と魔王を倒すべく旅に出るのだが……。
---------------------
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。
【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません
かずき りり
恋愛
今日も約束を反故される。
……約束の時間を過ぎてから。
侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。
貴族の結婚なんて、所詮は政略で。
家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。
なのに……
何もかも義姉優先。
挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。
挙句の果て、侯爵家なのだから。
そっちは子爵家なのだからと見下される始末。
そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。
更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!?
流石にそこはお断りしますけど!?
もう、付き合いきれない。
けれど、婚約白紙を今更出来ない……
なら、新たに契約を結びましょうか。
義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。
-----------------------
※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。
家が没落した時私を見放した幼馴染が今更すり寄ってきた
今川幸乃
恋愛
名門貴族ターナー公爵家のベティには、アレクという幼馴染がいた。
二人は互いに「将来結婚したい」と言うほどの仲良しだったが、ある時ターナー家は陰謀により潰されてしまう。
ベティはアレクに助けを求めたが「罪人とは仲良く出来ない」とあしらわれてしまった。
その後大貴族スコット家の養女になったベティはようやく幸せな暮らしを手に入れた。
が、彼女の前に再びアレクが現れる。
どうやらアレクには困りごとがあるらしかったが…
【完結済み】婚約破棄致しましょう
木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。
運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。
殿下、婚約破棄致しましょう。
第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。
応援して下さった皆様ありがとうございます。
本作の感想欄を開けました。
お返事等は書ける時間が取れそうにありませんが、感想頂けたら嬉しいです。
賞を頂いた記念に、何かお礼の小話でもアップできたらいいなと思っています。
リクエストありましたらそちらも書いて頂けたら、先着三名様まで受け付けますのでご希望ありましたら是非書いて頂けたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる