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36話 魔族になる
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私が魔界に住み始めてから六日が経った。
今のところ魔王城で暮らしている。
私はどことなく感じ取っていた。
魔族たちが私に敵意を向けていないということを。
だから私も気を許したのだ。
しかしそれは間違いだったかもしれない。
「エリス~! 猫耳はどう? あ、エルフ耳もいいかも! いやぁでも純魔族耳も捨てがたいんだよなぁ。俺とお揃だし!」
「…………」
御覧の通りハデスは私に懐きすぎていたのだ。
現在は私の種族決めを行っている。魔族には多くの種族が存在するらしい。
もちろん私に魔族の角や尾を移植させるわけではない。ただのつけ耳にハデスの魔法を上乗せするだけである。
彼は十を超える耳を私の目の前でに並べてくる。
「エリスはどれがいい?」
「じ、じゃあ猫み――」
「だよね! 魔族耳だよねぇ!」
私が猫耳にしようとすると、ハデスは私の言葉を遮るように言った。
そして、魔族耳を差し出してくる。
別に魔族耳も悪くはない。だが、どこか偏見で悪者に見えてしまうのだ。
それならかわいい猫耳の方がいいのでは? と思ってしまった。
「いや、私は猫耳が――」
「分かるよ! 俺とお揃いの方が安心するもんね!」
「ん? んんん!?」
ハデスはにこにこと笑みを浮かべながら私の頭に魔族耳をつけてくる。
そして、手から魔力を耳に流し込んで接着剤代わりにした。
「一応聞くけど、これって後々外せるわよね?」
「……」
「ちょっ! 大丈夫よね!? これは取れるわよね!?」
黙り込むハデスを見て私は彼の肩をぐんぐんと揺らしながら言った。
しかし、彼は少し歪な笑みを浮かべたまま何も口にしはしない
「魔王様。エリスをからかって遊ぶのはお止めください」
「ちぇ! いいところだったのに!」
「エリス。安心してね。私でも解除できるから」
魔王の部屋にやってきた四天王の一人であるサレーナは魔王に説教をする。
サレーナは高身長で顔立ちも整っており、豊胸であるという、私が男であれば完全に惚れているような容姿をしていた。
どうやら魔族たちの中ではファンクラブもあるほどだという。
「それにしても……ま、まぁまぁ似合ってるわ。最初は魔王様の頭が狂ったかと思ったけれど、意外と魔王様も見る目がありますね」
「だろ? いやぁ、俺も自画自賛しまくりだぜ」
えへへ、と二人は私を見ながら言ってくる。
その視線を受け、寒気がしたのだが私は本当に生きて帰られるのだろうか。
命は取られないものの、何か大切なものをとられるような気がする。
すると、話を切り替えるようにサレーナが口を開く。
「明日は入学式ですか……」
「あぁ。エリスには強くなってもらわないと困るからな」
二人は隣にかけられていた私用の制服を見ながら言った。
私が通うことになる魔術学院は何千人もの生徒が所属する巨大な機関である。
学院長は魔王であるハデスが担っているらしい。
彼自信も若い人材を育成することが大切だと思っているらしく、一番力を入れている。
「そもそも私はハデスから見て強くなれるの?」
私は少し不安そうにハデスに聞く。
今の私ではハデスの指一本に負けることだろう。
そんな実力で到底、魔族たちとわたりえる気がしない。
しかし、そんな不安な私とは違い、ハデスは笑みを浮かべながら答える。
「あぁ。エリスは強くなれる。だから俺は君をさらったんだから」
「そうね。エリスならそこらの魔族には負けないわ」
サレーナもハデスに続いて私に笑みを向けてくる。
この時、私の中で崩れかけていた何かが保たれる気がした。
今のところ魔王城で暮らしている。
私はどことなく感じ取っていた。
魔族たちが私に敵意を向けていないということを。
だから私も気を許したのだ。
しかしそれは間違いだったかもしれない。
「エリス~! 猫耳はどう? あ、エルフ耳もいいかも! いやぁでも純魔族耳も捨てがたいんだよなぁ。俺とお揃だし!」
「…………」
御覧の通りハデスは私に懐きすぎていたのだ。
現在は私の種族決めを行っている。魔族には多くの種族が存在するらしい。
もちろん私に魔族の角や尾を移植させるわけではない。ただのつけ耳にハデスの魔法を上乗せするだけである。
彼は十を超える耳を私の目の前でに並べてくる。
「エリスはどれがいい?」
「じ、じゃあ猫み――」
「だよね! 魔族耳だよねぇ!」
私が猫耳にしようとすると、ハデスは私の言葉を遮るように言った。
そして、魔族耳を差し出してくる。
別に魔族耳も悪くはない。だが、どこか偏見で悪者に見えてしまうのだ。
それならかわいい猫耳の方がいいのでは? と思ってしまった。
「いや、私は猫耳が――」
「分かるよ! 俺とお揃いの方が安心するもんね!」
「ん? んんん!?」
ハデスはにこにこと笑みを浮かべながら私の頭に魔族耳をつけてくる。
そして、手から魔力を耳に流し込んで接着剤代わりにした。
「一応聞くけど、これって後々外せるわよね?」
「……」
「ちょっ! 大丈夫よね!? これは取れるわよね!?」
黙り込むハデスを見て私は彼の肩をぐんぐんと揺らしながら言った。
しかし、彼は少し歪な笑みを浮かべたまま何も口にしはしない
「魔王様。エリスをからかって遊ぶのはお止めください」
「ちぇ! いいところだったのに!」
「エリス。安心してね。私でも解除できるから」
魔王の部屋にやってきた四天王の一人であるサレーナは魔王に説教をする。
サレーナは高身長で顔立ちも整っており、豊胸であるという、私が男であれば完全に惚れているような容姿をしていた。
どうやら魔族たちの中ではファンクラブもあるほどだという。
「それにしても……ま、まぁまぁ似合ってるわ。最初は魔王様の頭が狂ったかと思ったけれど、意外と魔王様も見る目がありますね」
「だろ? いやぁ、俺も自画自賛しまくりだぜ」
えへへ、と二人は私を見ながら言ってくる。
その視線を受け、寒気がしたのだが私は本当に生きて帰られるのだろうか。
命は取られないものの、何か大切なものをとられるような気がする。
すると、話を切り替えるようにサレーナが口を開く。
「明日は入学式ですか……」
「あぁ。エリスには強くなってもらわないと困るからな」
二人は隣にかけられていた私用の制服を見ながら言った。
私が通うことになる魔術学院は何千人もの生徒が所属する巨大な機関である。
学院長は魔王であるハデスが担っているらしい。
彼自信も若い人材を育成することが大切だと思っているらしく、一番力を入れている。
「そもそも私はハデスから見て強くなれるの?」
私は少し不安そうにハデスに聞く。
今の私ではハデスの指一本に負けることだろう。
そんな実力で到底、魔族たちとわたりえる気がしない。
しかし、そんな不安な私とは違い、ハデスは笑みを浮かべながら答える。
「あぁ。エリスは強くなれる。だから俺は君をさらったんだから」
「そうね。エリスならそこらの魔族には負けないわ」
サレーナもハデスに続いて私に笑みを向けてくる。
この時、私の中で崩れかけていた何かが保たれる気がした。
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