27 / 44
27話 宴
しおりを挟む
ダンジョンから帰還し、ダンジョンの待合室にて。
「「「「お疲れ~!」」」」
私たち四人はジョッキを片手にカツンっと鳴らせて乾杯をした。
いつもならエルナとサーシャが二人で食事を作ってくれている。それは節約のためが一番大きい。
ちなみに私も一度だけ手伝ったことがある。
しかし、私が美味しく食べてくれるところを見るために作ってるの。と言われたので最近は食べる専門である。
「それにしても今日は豪華だなぁ!」
私たちが果汁ジュースを飲んでいる中、テスラは一人、酒を豪快に飲んでいた。
私たちはテスラにとってみればまだまだ子供である。
そんな三人を一人でまとめ上げるのは毎日苦労しているに違いない。
そのため、今日だけは誰も文句を言わなかった。
「明日だね……」
サーシャは少し不安そうに呟いた。
こうしてサーシャは仕事をしているとき以外は敬語を使わず、距離感を縮めて接してくれているのだ。
「三人なら大丈夫でしょ! カーラ村の救世主でもあるんだから!」
エルナはジョッキを片手にいぇーいと喜びをあらわにしている。
カーラ村の救世主。私たちは今、カーラ村の人たちにそう呼ばれているのだ。
未だ誰も手を付けていなかった未知のダンジョンを攻略する三人の冒険者。
こんな辺境であるため強盗や殺人などの脅威はほぼない。
しかし、唯一の心残りがあった。それがダンジョンである。
人間の恐怖の根源はすべて未知に依存する。そんな未知を取り除こうとしているのが私たちなのだ。
村人から褒めたたえられるのも納得がいくというものだ。
「ねぇ父さん。一週間後ぐらいにしてはどう?」
まだ不安が拭えていないのかサーシャはテスラに提案した。
その提案に、少し酔っているのか頬を赤くしたテスラは首を縦に振ろうとする。
「あぁ別にいい――」
「三人ならいけるよ! 私三人がすごいこと知ってるんだから! ね? パパ?」
テスラの言葉を遮るようにエルナが言った。
エルナがそこまで明日に固執するのに違和感を覚えるものの、すぐに私は納得する。
ダンジョンさえ攻略すれば想定を上回るほどの金銀財宝をもらえるはずだ。
それこそ、エルナたちの母の治療費など簡単に出せるほどのお金が。
エルナの意見も伝わったのか、それとも酔っているからなのかテスラはすぐに意見を変える。
「そうだな~! さっさとあんなダンジョン攻略するぞぉ~!」
「うんうん! 三人なら絶対大丈夫! 私応援してるから!」
エルナはその答えに満足したのか満面の笑みを浮かべている。
「そういえばダンジョンの奥には何があると思う?」
「金だろ」
「ボスね」
「遺物でしょ」
テスラは金。サーシャはボス。エルナは遺物と各自違うものを想定していた。
だが、すぐにテスラは訂正する。
「まぁ冗談抜きで言うとボスだろうな。サーシャも気配で分かったんだろ?」
「えぇ。あれほどのオーラ気づかない方がおかしいわ」
二人はまるでオーラを感じるのが当たり前だとでも言いたげに話していた。
ちなみに私にはオーラなんて分かりません。
そもそもオーラって何ですか? 強い人と強い人は惹かれ合うっていうやつですか?
だが、そんなことを二人の前で言ってしまえば、私のしょうもないプライドが粉々になってしまう。
私はそんな動揺を隠すように口を開く。
「そ、そうよね! も、もちろん私も気づいていたわよ?」
「「…………」」
二人はジト目で私を見てくる。
止めて! そんな目で私を見ないで!
そんな冗談を心の中で言っていると隣にいるエルナがにんまりと笑みを浮かべていた。
「それは楽しみね……」
ボスの死体にでも興味があるのだろうか。
魔獣の死体は高額で取引される。大量の金になるはずだ。
そもそも私さえ王族であれば王宮魔導士など使い放題だった。こけて出来た擦り傷でさえ王宮魔導士が治すレベルなのだから。
しかし、今の私には何もできない。そんな無力さに私は歯を噛み締める。
だが、それと同時に私、エリスという個人の力が上がっていることに高揚感を覚えたりもしていた。
「まぁ頑張るしかない。サーシャ。エリス。お前らも明日は気合入れて行けよ」
「もちろんよ!」
「元王族の底力見せてやるわ!」
サーシャと私はテスラの言葉に乗せられるように笑みを浮かべて言った。
隣にいるミーナも握りこぶしを作ってよしっとやる気が満ち溢れた様子を見せる。
「私も頑張らないと!」
「あっはっは! エルナは頑張らなくていいだろ? ギルドで吉報を待っててくれ」
テスラはエルナの言葉を笑いながら返した。
受付嬢と冒険者では仕事の量も質も違うのは目に見えている。
「……だ、だよね。うん! 私は安心して待ってる!」
エルナもそれは理解しているのかうんと頷いて応援をしてくれた。
その様子を確認したテスラはジョッキを再び掲げ声を高らかと上げる。
「じゃあ二人とも明日は気合入れていくぞおお!」
「「おおー!」」
こうして私たちは戦の前の宴を満喫したのだった。
「「「「お疲れ~!」」」」
私たち四人はジョッキを片手にカツンっと鳴らせて乾杯をした。
いつもならエルナとサーシャが二人で食事を作ってくれている。それは節約のためが一番大きい。
ちなみに私も一度だけ手伝ったことがある。
しかし、私が美味しく食べてくれるところを見るために作ってるの。と言われたので最近は食べる専門である。
「それにしても今日は豪華だなぁ!」
私たちが果汁ジュースを飲んでいる中、テスラは一人、酒を豪快に飲んでいた。
私たちはテスラにとってみればまだまだ子供である。
そんな三人を一人でまとめ上げるのは毎日苦労しているに違いない。
そのため、今日だけは誰も文句を言わなかった。
「明日だね……」
サーシャは少し不安そうに呟いた。
こうしてサーシャは仕事をしているとき以外は敬語を使わず、距離感を縮めて接してくれているのだ。
「三人なら大丈夫でしょ! カーラ村の救世主でもあるんだから!」
エルナはジョッキを片手にいぇーいと喜びをあらわにしている。
カーラ村の救世主。私たちは今、カーラ村の人たちにそう呼ばれているのだ。
未だ誰も手を付けていなかった未知のダンジョンを攻略する三人の冒険者。
こんな辺境であるため強盗や殺人などの脅威はほぼない。
しかし、唯一の心残りがあった。それがダンジョンである。
人間の恐怖の根源はすべて未知に依存する。そんな未知を取り除こうとしているのが私たちなのだ。
村人から褒めたたえられるのも納得がいくというものだ。
「ねぇ父さん。一週間後ぐらいにしてはどう?」
まだ不安が拭えていないのかサーシャはテスラに提案した。
その提案に、少し酔っているのか頬を赤くしたテスラは首を縦に振ろうとする。
「あぁ別にいい――」
「三人ならいけるよ! 私三人がすごいこと知ってるんだから! ね? パパ?」
テスラの言葉を遮るようにエルナが言った。
エルナがそこまで明日に固執するのに違和感を覚えるものの、すぐに私は納得する。
ダンジョンさえ攻略すれば想定を上回るほどの金銀財宝をもらえるはずだ。
それこそ、エルナたちの母の治療費など簡単に出せるほどのお金が。
エルナの意見も伝わったのか、それとも酔っているからなのかテスラはすぐに意見を変える。
「そうだな~! さっさとあんなダンジョン攻略するぞぉ~!」
「うんうん! 三人なら絶対大丈夫! 私応援してるから!」
エルナはその答えに満足したのか満面の笑みを浮かべている。
「そういえばダンジョンの奥には何があると思う?」
「金だろ」
「ボスね」
「遺物でしょ」
テスラは金。サーシャはボス。エルナは遺物と各自違うものを想定していた。
だが、すぐにテスラは訂正する。
「まぁ冗談抜きで言うとボスだろうな。サーシャも気配で分かったんだろ?」
「えぇ。あれほどのオーラ気づかない方がおかしいわ」
二人はまるでオーラを感じるのが当たり前だとでも言いたげに話していた。
ちなみに私にはオーラなんて分かりません。
そもそもオーラって何ですか? 強い人と強い人は惹かれ合うっていうやつですか?
だが、そんなことを二人の前で言ってしまえば、私のしょうもないプライドが粉々になってしまう。
私はそんな動揺を隠すように口を開く。
「そ、そうよね! も、もちろん私も気づいていたわよ?」
「「…………」」
二人はジト目で私を見てくる。
止めて! そんな目で私を見ないで!
そんな冗談を心の中で言っていると隣にいるエルナがにんまりと笑みを浮かべていた。
「それは楽しみね……」
ボスの死体にでも興味があるのだろうか。
魔獣の死体は高額で取引される。大量の金になるはずだ。
そもそも私さえ王族であれば王宮魔導士など使い放題だった。こけて出来た擦り傷でさえ王宮魔導士が治すレベルなのだから。
しかし、今の私には何もできない。そんな無力さに私は歯を噛み締める。
だが、それと同時に私、エリスという個人の力が上がっていることに高揚感を覚えたりもしていた。
「まぁ頑張るしかない。サーシャ。エリス。お前らも明日は気合入れて行けよ」
「もちろんよ!」
「元王族の底力見せてやるわ!」
サーシャと私はテスラの言葉に乗せられるように笑みを浮かべて言った。
隣にいるミーナも握りこぶしを作ってよしっとやる気が満ち溢れた様子を見せる。
「私も頑張らないと!」
「あっはっは! エルナは頑張らなくていいだろ? ギルドで吉報を待っててくれ」
テスラはエルナの言葉を笑いながら返した。
受付嬢と冒険者では仕事の量も質も違うのは目に見えている。
「……だ、だよね。うん! 私は安心して待ってる!」
エルナもそれは理解しているのかうんと頷いて応援をしてくれた。
その様子を確認したテスラはジョッキを再び掲げ声を高らかと上げる。
「じゃあ二人とも明日は気合入れていくぞおお!」
「「おおー!」」
こうして私たちは戦の前の宴を満喫したのだった。
1
お気に入りに追加
1,755
あなたにおすすめの小説
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
親友に裏切られ聖女の立場を乗っ取られたけど、私はただの聖女じゃないらしい
咲貴
ファンタジー
孤児院で暮らすニーナは、聖女が触れると光る、という聖女判定の石を光らせてしまった。
新しい聖女を捜しに来ていた捜索隊に報告しようとするが、同じ孤児院で姉妹同然に育った、親友イルザに聖女の立場を乗っ取られてしまう。
「私こそが聖女なの。惨めな孤児院生活とはおさらばして、私はお城で良い生活を送るのよ」
イルザは悪びれず私に言い放った。
でも私、どうやらただの聖女じゃないらしいよ?
※こちらの作品は『小説家になろう』にも投稿しています
【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる