29 / 58
2章 最強冒険者
苦悩
しおりを挟む
「いやあああああああああぁぁぁぁぁ!」
私はベッドで枕に顔を押し付けて全力で叫んだ。
歓喜? 羞恥? 悲鳴?
自分でも何の叫び声なのか分からない。だが気分が良いのは確かだ。
「あたし…………なんであんなこと言っちゃったのかしら」
私は自分の部屋で独り、自問自答する。
あの後、アレンとはその場で分かれた。色々話していたら夜遅くなってしまっていたのだ。
ちなみに週二でダンジョンにアレンと一緒に潜ることなった。
アレンはソロで活動している。Sランク冒険者なら勇者パーティーなどと名乗ってもいい。
それでもソロのままなのは、特に苦しい表情はしなかったが過去がトラウマになっているのかもしれない。
仲間が目の前で瞬殺されたのだ。自分とは実力が釣り合わないから入れないと言うのは建前で仲間が死ぬ姿を見たくない。それが本当の理由だと思う。
私は絶対にアレンに負担をかけないようにしよう。そんなことをアレンと話しながら思っていた。
「それにしても…………デートって…………」
私はポッと再び頬を紅潮させる。
あのアレンの言葉は耳から抜けていく様子が見れない。
自分でも衝動的になってはいけない、とか言っていたくせに結構衝動的になっていたと思う。
今思い返せば羞恥で体が苛まれそうになる。
ちなみに私はこれから破壊者として公の場に出ることになる。
それはそうだろう。あのSランク冒険者のアレンとパーティーを組むのだ。告知しなければ問題にもなる。
だがしかし、私は出自がバレるわけにはいかない。貴族出身などとなるとさらに大問題だ。
「それであれの出番というわけね…………」
私はハンガーで壁にかけてあるおんぼろの灰色のフードを見る。
このフードには隠蔽魔法が付与されている。
アレンの伝でAランクの魔術師に付与してもらったのだ。
これでフードが脱げることはなく、隙間からも隠蔽で見えなくなる。私が脱がなければ絶対に顔バレはしないということだ。
「…………早く区切りをつけないと」
私は自分の脳裏に浮かぶ三人の男性を思い浮かべる。
アレンと出会うまで、特に幼馴染の方は兄弟的な感覚だと思っていた。
しかしながら、それも何か違うかもしれない。
最近になって距離を急に詰めてきた王子。
正直、厚かましいという部分もある。だが何かその距離が心地よかったりもする。
「はぁ…………」
私はどっと重いため息を吐いた。
これで強欲で傲慢な私が私から出てくれればいいのにと思いながら。
コンコンコン!
「姉ちゃん。起きてる?」
「ん? ライ?」
この幼い声の主はライ・アルローゼ。私と年が二つ離れた弟だ。
私とは違ってライはエレメンタルの傘下の学園に一年前から所属している。再来年からは私と同じでエレメンタルに入るそうだ。
ちなみにライは同じ爵位である公爵家の者と婚約している。
ライ曰く可愛らしい女性だそうだ。そんなこと言うなら私に会わせてくれればいいものの、恥ずかしいから無理だと会わせてくれないのだ。
「あのね。父さんが学園に来てるらしいんだ。だから姉ちゃんも顔出しに行った方がいいんじゃないかなって」
「え? 父上が来てるの? エレメンタルに何の用があるのかしら?」
私は適当には織物を被り、身なりをパパッと整えて部屋を出る。
前に寮生活をしていると言ったのを覚えているだろうか。
それには少し語弊がある。
私が住んでいる量には三十人ほどが住んでいる。
その中にはライも含まれている。そして、キールも階層は違うものの同じ建物だ。
そして、残りの二十七人はと言うと全てアルローゼ家の従者である。
まぁ実際別荘みたいなものだ。父がどうしても下の爵位の者と同じ場所には住ませたくないと駄々をこねるからこうなってしまったのだ。
「あれ? ライ。背伸びた?」
「まぁ一月ぐらい会ってなかったからね。これでも僕は小さい方だよ」
私は久しぶりに会う弟の頭をくしゃくしゃと撫でる。
本当ならこんな軽装。夜は危ないとキールに怒られるのだが父上もこの建物に来ているのだろう。そこまで心配する必要はあるまい。
「キール起こしに行く?」
「必要ないわ。キール起こすと面倒だし…………それより学園生活は楽しい?」
「うん! 楽しいよ!」
私とライはそんな家族の会話をしながら一回のエントランスへと向かった。
私はベッドで枕に顔を押し付けて全力で叫んだ。
歓喜? 羞恥? 悲鳴?
自分でも何の叫び声なのか分からない。だが気分が良いのは確かだ。
「あたし…………なんであんなこと言っちゃったのかしら」
私は自分の部屋で独り、自問自答する。
あの後、アレンとはその場で分かれた。色々話していたら夜遅くなってしまっていたのだ。
ちなみに週二でダンジョンにアレンと一緒に潜ることなった。
アレンはソロで活動している。Sランク冒険者なら勇者パーティーなどと名乗ってもいい。
それでもソロのままなのは、特に苦しい表情はしなかったが過去がトラウマになっているのかもしれない。
仲間が目の前で瞬殺されたのだ。自分とは実力が釣り合わないから入れないと言うのは建前で仲間が死ぬ姿を見たくない。それが本当の理由だと思う。
私は絶対にアレンに負担をかけないようにしよう。そんなことをアレンと話しながら思っていた。
「それにしても…………デートって…………」
私はポッと再び頬を紅潮させる。
あのアレンの言葉は耳から抜けていく様子が見れない。
自分でも衝動的になってはいけない、とか言っていたくせに結構衝動的になっていたと思う。
今思い返せば羞恥で体が苛まれそうになる。
ちなみに私はこれから破壊者として公の場に出ることになる。
それはそうだろう。あのSランク冒険者のアレンとパーティーを組むのだ。告知しなければ問題にもなる。
だがしかし、私は出自がバレるわけにはいかない。貴族出身などとなるとさらに大問題だ。
「それであれの出番というわけね…………」
私はハンガーで壁にかけてあるおんぼろの灰色のフードを見る。
このフードには隠蔽魔法が付与されている。
アレンの伝でAランクの魔術師に付与してもらったのだ。
これでフードが脱げることはなく、隙間からも隠蔽で見えなくなる。私が脱がなければ絶対に顔バレはしないということだ。
「…………早く区切りをつけないと」
私は自分の脳裏に浮かぶ三人の男性を思い浮かべる。
アレンと出会うまで、特に幼馴染の方は兄弟的な感覚だと思っていた。
しかしながら、それも何か違うかもしれない。
最近になって距離を急に詰めてきた王子。
正直、厚かましいという部分もある。だが何かその距離が心地よかったりもする。
「はぁ…………」
私はどっと重いため息を吐いた。
これで強欲で傲慢な私が私から出てくれればいいのにと思いながら。
コンコンコン!
「姉ちゃん。起きてる?」
「ん? ライ?」
この幼い声の主はライ・アルローゼ。私と年が二つ離れた弟だ。
私とは違ってライはエレメンタルの傘下の学園に一年前から所属している。再来年からは私と同じでエレメンタルに入るそうだ。
ちなみにライは同じ爵位である公爵家の者と婚約している。
ライ曰く可愛らしい女性だそうだ。そんなこと言うなら私に会わせてくれればいいものの、恥ずかしいから無理だと会わせてくれないのだ。
「あのね。父さんが学園に来てるらしいんだ。だから姉ちゃんも顔出しに行った方がいいんじゃないかなって」
「え? 父上が来てるの? エレメンタルに何の用があるのかしら?」
私は適当には織物を被り、身なりをパパッと整えて部屋を出る。
前に寮生活をしていると言ったのを覚えているだろうか。
それには少し語弊がある。
私が住んでいる量には三十人ほどが住んでいる。
その中にはライも含まれている。そして、キールも階層は違うものの同じ建物だ。
そして、残りの二十七人はと言うと全てアルローゼ家の従者である。
まぁ実際別荘みたいなものだ。父がどうしても下の爵位の者と同じ場所には住ませたくないと駄々をこねるからこうなってしまったのだ。
「あれ? ライ。背伸びた?」
「まぁ一月ぐらい会ってなかったからね。これでも僕は小さい方だよ」
私は久しぶりに会う弟の頭をくしゃくしゃと撫でる。
本当ならこんな軽装。夜は危ないとキールに怒られるのだが父上もこの建物に来ているのだろう。そこまで心配する必要はあるまい。
「キール起こしに行く?」
「必要ないわ。キール起こすと面倒だし…………それより学園生活は楽しい?」
「うん! 楽しいよ!」
私とライはそんな家族の会話をしながら一回のエントランスへと向かった。
0
お気に入りに追加
1,549
あなたにおすすめの小説
ミュージカル小説 ~踊る公園~
右京之介
現代文学
集英社ライトノベル新人賞1次選考通過作品。
その街に広い空き地があった。
暴力団砂猫組は、地元の皆さんに喜んでもらおうと、そこへ公園を作った。
一方、宗教団体神々教は対抗して、神々公園を作り上げた。
ここに熾烈な公園戦争が勃発した。
ミュージカル小説という美しいタイトルとは名ばかり。
戦いはエスカレートし、お互いが殺し屋を雇い、果てしなき公園戦争へと突入して行く。
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
投資家ハンターの資金管理 ~最強パーティを追放された青年は、美少女パーティにせがまれ最強へ導く~ (※ハンターは資金力がすべてです)
高美濃 四間
ファンタジー
最強パーティ『ソウルヒート』に所属していたヤマトは、動物と話せることと資金管理しかできないからと、ある日突然追放されてしまう。
その後、ソウルヒートは新しいメンバーを迎え入れるが、誰一人として気付いていなかった。
彼らの凄まじい浪費は、ヤマトの並外れた資金管理でしかカバーできないと。
一方のヤマトは、金貸しにだまされピンチに陥っている美少女パーティ『トリニティスイーツ』を助けると、彼女たちからせがまれ、最強パーティの元メンバーとしてアドバイスと資金管理をすることに。
彼はオリジナルの手法をいかし、美少女たちときゃっきゃうふふしながら、最強のハンターパーティへと導いていく。
やがて、ソウルヒートは資金不足で弱体化していき、ヤマトへ牙をむくが――
投資家がハンターパーティを運用し成り上がっていく、痛快ファンタジー!
※本作は、小説家になろう様、タカミノe-storiesにも投稿しております。
異世界転移したので、のんびり楽しみます。
ゆーふー
ファンタジー
信号無視した車に轢かれ、命を落としたことをきっかけに異世界に転移することに。異世界で長生きするために主人公が望んだのは、「のんびり過ごせる力」
主人公は神様に貰った力でのんびり平和に長生きできるのか。
どう見ても貴方はもう一人の幼馴染が好きなので別れてください
ルイス
恋愛
レレイとアルカは伯爵令嬢であり幼馴染だった。同じく伯爵令息のクローヴィスも幼馴染だ。
やがてレレイとクローヴィスが婚約し幸せを手に入れるはずだったが……
クローヴィスは理想の婚約者に憧れを抱いており、何かともう一人の幼馴染のアルカと、婚約者になったはずのレレイを比べるのだった。
さらにはアルカの方を優先していくなど、明らかにおかしな事態になっていく。
どう見てもクローヴィスはアルカの方が好きになっている……そう感じたレレイは、彼との婚約解消を申し出た。
婚約解消は無事に果たされ悲しみを持ちながらもレレイは前へ進んでいくことを決心した。
その後、国一番の美男子で性格、剣術も最高とされる公爵令息に求婚されることになり……彼女は別の幸せの一歩を刻んでいく。
しかし、クローヴィスが急にレレイを溺愛してくるのだった。アルカとの仲も上手く行かなかったようで、真実の愛とか言っているけれど……怪しさ満点だ。ひたすらに女々しいクローヴィス……レレイは冷たい視線を送るのだった。
「あなたとはもう終わったんですよ? いつまでも、キスが出来ると思っていませんか?」
年増公爵令嬢は、皇太子に早く婚約破棄されたい
富士とまと
恋愛
公爵令嬢15歳。皇太子10歳。
どう考えても、釣り合いが取れません。ダンスを踊っても、姉と弟にしか見えない。皇太子が成人するころには、私はとっくに適齢期を過ぎたただの年増になってます。そんなころに婚約破棄されるくらいなら、今すぐに婚約破棄してっ!
*短篇10本ノック3本目です*
浮気中の婚約者が私には塩対応なので塩対応返しすることにした
今川幸乃
恋愛
スターリッジ王国の貴族学園に通うリアナにはクリフというスポーツ万能の婚約者がいた。
リアナはクリフのことが好きで彼のために料理を作ったり勉強を教えたりと様々な親切をするが、クリフは当然の顔をしているだけで、まともに感謝もしない。
しかも彼はエルマという他の女子と仲良くしている。
もやもやが募るもののリアナはその気持ちをどうしていいか分からなかった。
そんな時、クリフが放課後もエルマとこっそり二人で会っていたことが分かる。
それを知ったリアナはこれまでクリフが自分にしていたように塩対応しようと決意した。
少しの間クリフはリアナと楽しく過ごそうとするが、やがて試験や宿題など様々な問題が起こる。
そこでようやくクリフは自分がいかにリアナに助けられていたかを実感するが、その時にはすでに遅かった。
※4/15日分の更新は抜けていた8話目「浮気」の更新にします。話の流れに差し障りが出てしまい申し訳ありません。
聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】
青緑
ファンタジー
聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。
———————————————
物語内のノーラとデイジーは同一人物です。
王都の小話は追記予定。
修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる