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2章 最強冒険者

苦悩

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「いやあああああああああぁぁぁぁぁ!」

 私はベッドで枕に顔を押し付けて全力で叫んだ。
 歓喜? 羞恥? 悲鳴?
 自分でも何の叫び声なのか分からない。だが気分が良いのは確かだ。

「あたし…………なんであんなこと言っちゃったのかしら」

 私は自分の部屋で独り、自問自答する。

 あの後、アレンとはその場で分かれた。色々話していたら夜遅くなってしまっていたのだ。
 ちなみに週二でダンジョンにアレンと一緒に潜ることなった。

 アレンはソロで活動している。Sランク冒険者なら勇者パーティーなどと名乗ってもいい。
 それでもソロのままなのは、特に苦しい表情はしなかったが過去がトラウマになっているのかもしれない。
 仲間が目の前で瞬殺されたのだ。自分とは実力が釣り合わないから入れないと言うのは建前で仲間が死ぬ姿を見たくない。それが本当の理由だと思う。

 私は絶対にアレンに負担をかけないようにしよう。そんなことをアレンと話しながら思っていた。

「それにしても…………デートって…………」

 私はポッと再び頬を紅潮させる。
 
 あのアレンの言葉は耳から抜けていく様子が見れない。
 自分でも衝動的になってはいけない、とか言っていたくせに結構衝動的になっていたと思う。
 今思い返せば羞恥で体が苛まれそうになる。

 ちなみに私はこれから破壊者デストロイヤーとして公の場に出ることになる。
 それはそうだろう。あのSランク冒険者のアレンとパーティーを組むのだ。告知しなければ問題にもなる。
 だがしかし、私は出自がバレるわけにはいかない。貴族出身などとなるとさらに大問題だ。

「それであれの出番というわけね…………」

 私はハンガーで壁にかけてあるおんぼろの灰色のフードを見る。

 このフードには隠蔽魔法が付与されている。
 アレンのつてでAランクの魔術師メイジに付与してもらったのだ。
 これでフードが脱げることはなく、隙間からも隠蔽で見えなくなる。私が脱がなければ絶対に顔バレはしないということだ。

「…………早く区切りをつけないと」

 私は自分の脳裏に浮かぶ三人の男性を思い浮かべる。

 アレンと出会うまで、特に幼馴染の方は兄弟的な感覚だと思っていた。
 しかしながら、それも何か違うかもしれない。

 最近になって距離を急に詰めてきた王子。
 正直、厚かましいという部分もある。だが何かその距離が心地よかったりもする。

「はぁ…………」

 私はどっと重いため息を吐いた。
 これで強欲で傲慢な私が私から出てくれればいいのにと思いながら。

 コンコンコン!

「姉ちゃん。起きてる?」
「ん? ライ?」

 この幼い声の主はライ・アルローゼ。私と年が二つ離れた弟だ。
 私とは違ってライはエレメンタルの傘下の学園に一年前から所属している。再来年からは私と同じでエレメンタルに入るそうだ。

 ちなみにライは同じ爵位である公爵家の者と婚約している。
 ライ曰く可愛らしい女性だそうだ。そんなこと言うなら私に会わせてくれればいいものの、恥ずかしいから無理だと会わせてくれないのだ。
 
「あのね。父さんが学園に来てるらしいんだ。だから姉ちゃんも顔出しに行った方がいいんじゃないかなって」
「え? 父上が来てるの? エレメンタルに何の用があるのかしら?」

 私は適当には織物を被り、身なりをパパッと整えて部屋を出る。
 
 前に寮生活をしていると言ったのを覚えているだろうか。
 それには少し語弊がある。

 私が住んでいる量には三十人ほどが住んでいる。
 その中にはライも含まれている。そして、キールも階層は違うものの同じ建物だ。
 そして、残りの二十七人はと言うと全てアルローゼ家の従者である。
 まぁ実際別荘みたいなものだ。父がどうしても下の爵位の者と同じ場所には住ませたくないと駄々をこねるからこうなってしまったのだ。

「あれ? ライ。背伸びた?」
「まぁ一月ぐらい会ってなかったからね。これでも僕は小さい方だよ」

 私は久しぶりに会う弟の頭をくしゃくしゃと撫でる。
 本当ならこんな軽装。夜は危ないとキールに怒られるのだが父上もこの建物に来ているのだろう。そこまで心配する必要はあるまい。

「キール起こしに行く?」
「必要ないわ。キール起こすと面倒だし…………それより学園生活は楽しい?」
「うん! 楽しいよ!」

 私とライはそんな家族の会話をしながら一回のエントランスへと向かった。
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