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三人目 王族
フラグの朝
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「本当に昨日は死ぬかと思いましたよ」
「もういいじゃない。昨日の話なんだし」
キールと私はいつものように馬車に揺られながら登校している。
まさかあんな青年が王子であるなど誰が思うだろうか。
そもそも、この国では国王と王女以外ほぼほぼ表には出てこない。
出てくるのはラグランドの誕生祭ぐらいだろう。
そのため、たとえ私が公爵令嬢だとしても知らないものは知らないのだ。
「ってか殿下も少し意地が悪いわよね」
「なっ! マルク様にそんなこと聞かれでもしたらアルローゼ家は潰されますよ!」
キールはそんな私にグチグチと言ってくるが私の意見は変わらない。
そもそも王族とは国の導き手。通常であれば何十人の護衛に囲まれていなければならないのだ。
私でもずっとキールがついてきているのだから。
一人で、しかも初対面の人間と一人で会おうとする王族がいるなど考えられるはずもない。
私たちをからかおうとしたに違いない。でなければあのような行動はしないはずだ。
「別にそこまで気負う必要ないんじゃないかしら。どうせ王族なんてまた来年にならないと会わないのよ?」
昨日の王族訪問は表上、王族の中でも地位が低いおっさんが来ていたらしい。
まぁいつものことだ。所詮王族などカースト絶対主義の人種。私たちが貴族であろうとも同じ空間にいたいとは思わないだろう。
舞踏会やお茶会などでも王族は王族だけでしか行わない。
貴族のカースト制度と言っても平民と貴族、貴族と王族。それぐらいカーストに差があるのだ。
「…………まぁそれはそうですね! 特に問題にもなってないようですし!」
「そうだわ! 昨日のことなんて忘れましょう!」
気負っていたキールの表情から少し安堵の笑みが漏れる。
来年のことは来年考えればいいのだ。
そうしてポジティブに考えていなければストレスが溜まり続けてしまう。
そう言えば今度はいつダンジョンに潜ろうか。
(べ、別にアレンを見たいとかじゃ…………)
ダンジョンのことを考えるとすぐにアレンの顔が浮かんでしまう。
そのため、出来るだけ考えないようにしているつもりである。
だが、私のことだ。一週間もしないうちにダンジョンに行くことになるだろう。
その日はまたアレンを見つけることが出来るのだろうか…………
「さ、さぁ今日も一日頑張るわよ!」
「そうですね! 頑張りましょう!」
私は火照る頬を誤魔化すように元気よく言った。
キールもその私に続くように表情を明るくする。
私とキールは馬車の中で懸念など笑い飛ばすように笑ったのだった。
―― 二時間後
「今日から皆さんとエレメンタルで魔術について学ぶことになりました、マルク・ヴァルキリーです。これからよろしくお願いします」
「……………………」
お父様。お母様。私、どうやら今日が私の命日のようです。
「もういいじゃない。昨日の話なんだし」
キールと私はいつものように馬車に揺られながら登校している。
まさかあんな青年が王子であるなど誰が思うだろうか。
そもそも、この国では国王と王女以外ほぼほぼ表には出てこない。
出てくるのはラグランドの誕生祭ぐらいだろう。
そのため、たとえ私が公爵令嬢だとしても知らないものは知らないのだ。
「ってか殿下も少し意地が悪いわよね」
「なっ! マルク様にそんなこと聞かれでもしたらアルローゼ家は潰されますよ!」
キールはそんな私にグチグチと言ってくるが私の意見は変わらない。
そもそも王族とは国の導き手。通常であれば何十人の護衛に囲まれていなければならないのだ。
私でもずっとキールがついてきているのだから。
一人で、しかも初対面の人間と一人で会おうとする王族がいるなど考えられるはずもない。
私たちをからかおうとしたに違いない。でなければあのような行動はしないはずだ。
「別にそこまで気負う必要ないんじゃないかしら。どうせ王族なんてまた来年にならないと会わないのよ?」
昨日の王族訪問は表上、王族の中でも地位が低いおっさんが来ていたらしい。
まぁいつものことだ。所詮王族などカースト絶対主義の人種。私たちが貴族であろうとも同じ空間にいたいとは思わないだろう。
舞踏会やお茶会などでも王族は王族だけでしか行わない。
貴族のカースト制度と言っても平民と貴族、貴族と王族。それぐらいカーストに差があるのだ。
「…………まぁそれはそうですね! 特に問題にもなってないようですし!」
「そうだわ! 昨日のことなんて忘れましょう!」
気負っていたキールの表情から少し安堵の笑みが漏れる。
来年のことは来年考えればいいのだ。
そうしてポジティブに考えていなければストレスが溜まり続けてしまう。
そう言えば今度はいつダンジョンに潜ろうか。
(べ、別にアレンを見たいとかじゃ…………)
ダンジョンのことを考えるとすぐにアレンの顔が浮かんでしまう。
そのため、出来るだけ考えないようにしているつもりである。
だが、私のことだ。一週間もしないうちにダンジョンに行くことになるだろう。
その日はまたアレンを見つけることが出来るのだろうか…………
「さ、さぁ今日も一日頑張るわよ!」
「そうですね! 頑張りましょう!」
私は火照る頬を誤魔化すように元気よく言った。
キールもその私に続くように表情を明るくする。
私とキールは馬車の中で懸念など笑い飛ばすように笑ったのだった。
―― 二時間後
「今日から皆さんとエレメンタルで魔術について学ぶことになりました、マルク・ヴァルキリーです。これからよろしくお願いします」
「……………………」
お父様。お母様。私、どうやら今日が私の命日のようです。
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