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一人目 最強
アレン・グラトニー
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モンスター。それはダンジョン内に現れる怪物のことを指す。
人間の域を超えた圧倒的な力の権化。一般人には到底敵いようのない怪物たちだ。
その怪物に対抗してダンジョンを攻略する人たちが冒険者と呼ばれる勇敢な戦士である。
そんな戦士に誰もがなれるというわけではない。
怪物たちと戦える能力を持つためには人間の域を超える必要がある。
そこで一つの方法が確立された。
――覚醒
自分の中にある潜在能力を無理矢理引き出すというものである。
誰も力を引き出せるわけではなく、相性も存在する。
中にはちっとも引き出せなく、一般人と同じレベルのままの人もいる。
「…………聞いたか? あの『破壊者』、先週も暴れたらしいぞ」
「…………まじか。実力はあのS級冒険者の『アレン』をも超えるって聞いたけど…………」
「それはどうかな…………でも、ソロでボス討伐なんてこの世の誰も出来ねぇよ」
(…………破壊者ねぇ。すんごい人もいるものだわ)
私はダンジョンの前で話をしていた冒険者たちの話を耳に入れて感心する。
冒険者はD~Sとランク付けされる。
簡単に言えば才能のランクだ。
ランクは特に変動することはなく、どれだけ努力して成長しようとしてもせいぜい一ランク程度である。
今の話が本当なのであれば、この国に一人しかいないSランク冒険者と同レベル以上の冒険者が現れたということだ。
ダンジョン攻略も捗るであろう。
「私も頑張らないといけないわね」
ここで何故ダンジョンを攻略するのかを説明しておこう。
一つ目の理由は魔石だ。
モンスターを討伐すると魔石というものが得られる。
魔石はこの世界でのエネルギー源であり、有害な物質も発生させないため環境にも良い。
冒険者はこの魔石を換金して生活を送っている。
二つ目の理由は完全攻略だ。
ダンジョンの最下層には何があるのか、魔王、別世界、全てを叶えてくれる神。多くの噂が存在している。
探求心というやつだ。未知に冒険者は惹かれているのである。
ちなみに私の場合ストレス発散法だ。
え? 誰もそんな理由でダンジョンに入らない?
いやいや、絶対に私以外に一人はいるね。あ、ちなみにサイコパスではないから。後でもう一度言うことになるかもしれないけど…………
「「「きゃああああああぁぁぁぁ!」」」
「…………わっ!?」
私は女性たちの叫び声に驚いたような声を上げてしまう。
だが、その声は恐怖の叫び声ではない。歓喜の叫び声である。
「皆さん退いてください! 道を開けてください!」
何人もの屈強な冒険者ギルドの職員たちが女性たちを押しだすようにして道を作っている。
この光景を見るのは私も二度目だ。
「Sランク冒険者、アレン・グラトニ―…………」
私は無意識のうちに名前を漏らしてしまう。
黒の短髪にそこまで大柄ではないものの、筋骨隆々とした肉体美。
そしてなんと言ってもずば抜けているほど整った容姿。
ファンクラブが出来るのも納得がいく。私とは縁の遠い人物だ。
アレンは婚約さえ出来ない私と違って無尽蔵に女が近寄ってくる。本当に舌打ちでもしたくなるほどモテているのだ
そんな風にダンジョンから帰ってきたアレンを見ていると…………
「…………ん?」
(……………………え?)
その瞬間―― 私の胸がトンっと撥ねた。
あのアレンと視線が合ったような気がしたのだ。そう。あくまで気のせいである。
強いて言うならば私はスポ系ではなく清楚系男子が好きだ。
そのため恋愛感情など一ミリもない。
だが、私が見てきた異性の中でトップクラスの美貌の持ち主だ。
「いやああああぁぁぁ!!」
私はその場から逃げるように叫びながらダンジョンへと走り出した。
何の叫び声だろうか。自分でも分からない。
ファンたちの叫び声で私の声はアレンに聞こえていないだろう。
「これじゃあ、まるで私もファンみたいになるわ…………」
この瞬間、私の中の一つの歯車が回り始めたのだった。
人間の域を超えた圧倒的な力の権化。一般人には到底敵いようのない怪物たちだ。
その怪物に対抗してダンジョンを攻略する人たちが冒険者と呼ばれる勇敢な戦士である。
そんな戦士に誰もがなれるというわけではない。
怪物たちと戦える能力を持つためには人間の域を超える必要がある。
そこで一つの方法が確立された。
――覚醒
自分の中にある潜在能力を無理矢理引き出すというものである。
誰も力を引き出せるわけではなく、相性も存在する。
中にはちっとも引き出せなく、一般人と同じレベルのままの人もいる。
「…………聞いたか? あの『破壊者』、先週も暴れたらしいぞ」
「…………まじか。実力はあのS級冒険者の『アレン』をも超えるって聞いたけど…………」
「それはどうかな…………でも、ソロでボス討伐なんてこの世の誰も出来ねぇよ」
(…………破壊者ねぇ。すんごい人もいるものだわ)
私はダンジョンの前で話をしていた冒険者たちの話を耳に入れて感心する。
冒険者はD~Sとランク付けされる。
簡単に言えば才能のランクだ。
ランクは特に変動することはなく、どれだけ努力して成長しようとしてもせいぜい一ランク程度である。
今の話が本当なのであれば、この国に一人しかいないSランク冒険者と同レベル以上の冒険者が現れたということだ。
ダンジョン攻略も捗るであろう。
「私も頑張らないといけないわね」
ここで何故ダンジョンを攻略するのかを説明しておこう。
一つ目の理由は魔石だ。
モンスターを討伐すると魔石というものが得られる。
魔石はこの世界でのエネルギー源であり、有害な物質も発生させないため環境にも良い。
冒険者はこの魔石を換金して生活を送っている。
二つ目の理由は完全攻略だ。
ダンジョンの最下層には何があるのか、魔王、別世界、全てを叶えてくれる神。多くの噂が存在している。
探求心というやつだ。未知に冒険者は惹かれているのである。
ちなみに私の場合ストレス発散法だ。
え? 誰もそんな理由でダンジョンに入らない?
いやいや、絶対に私以外に一人はいるね。あ、ちなみにサイコパスではないから。後でもう一度言うことになるかもしれないけど…………
「「「きゃああああああぁぁぁぁ!」」」
「…………わっ!?」
私は女性たちの叫び声に驚いたような声を上げてしまう。
だが、その声は恐怖の叫び声ではない。歓喜の叫び声である。
「皆さん退いてください! 道を開けてください!」
何人もの屈強な冒険者ギルドの職員たちが女性たちを押しだすようにして道を作っている。
この光景を見るのは私も二度目だ。
「Sランク冒険者、アレン・グラトニ―…………」
私は無意識のうちに名前を漏らしてしまう。
黒の短髪にそこまで大柄ではないものの、筋骨隆々とした肉体美。
そしてなんと言ってもずば抜けているほど整った容姿。
ファンクラブが出来るのも納得がいく。私とは縁の遠い人物だ。
アレンは婚約さえ出来ない私と違って無尽蔵に女が近寄ってくる。本当に舌打ちでもしたくなるほどモテているのだ
そんな風にダンジョンから帰ってきたアレンを見ていると…………
「…………ん?」
(……………………え?)
その瞬間―― 私の胸がトンっと撥ねた。
あのアレンと視線が合ったような気がしたのだ。そう。あくまで気のせいである。
強いて言うならば私はスポ系ではなく清楚系男子が好きだ。
そのため恋愛感情など一ミリもない。
だが、私が見てきた異性の中でトップクラスの美貌の持ち主だ。
「いやああああぁぁぁ!!」
私はその場から逃げるように叫びながらダンジョンへと走り出した。
何の叫び声だろうか。自分でも分からない。
ファンたちの叫び声で私の声はアレンに聞こえていないだろう。
「これじゃあ、まるで私もファンみたいになるわ…………」
この瞬間、私の中の一つの歯車が回り始めたのだった。
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