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3章 養い対決
31話 芽
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「もう、食えない……」
朝食を食べ終えた俺は満腹感に苛まれていた。
あれほど多好感を感じたはずの食事も、見たくもないと思えるほどには苦しんでいる。
なのに何故この目の前にいる少女は何一つ苦しそうにしていないんだ?
「勇者なのに貧弱。私は全然余裕」
ちなみにアルは俺の二倍以上の量を食べている。
朝食だぞ? どこの誰が朝食で十軒も飯屋はしご出来るんだ……
「そういえば、どこに向かってるんだ?」
俺は隣を爽快に歩くアルに尋ねた。
朝食を済ませた後、行きたい場所があると言ってから二十分ぐらい歩いている。未だに目的地も聞いていない。
「着いてからのお楽しみ」
彼女なら転移魔法を使うことも可能だ。でも、使わずに歩いているのは俺にこの国の風景を見せるためだろうな。
水路が設備されており、住居や民家だけで飽きさせないようにするために所々平原や森などと自然も見える。とてもいい国だ。
そして、百メートルを超える壁に囲まれた城塞都市。まぁそれに関してはどこの国も同じようなもの。
もちろん人間、魔族対策というのもある。だが、一番の理由は魔獣対策だ。
魔獣。それは太古の時代に魔神がこの世界に堕とした異物。
通常の生物とは異なり、生存本能などの基本的本能は排他されている。残されているのは殺戮の衝動だけ。
普通に生殖をしているのか、それともどこからと湧いているのか。魔獣に関してまだ分からないことが多い。
ただ、一つ分かること、それは全生物にとって公害ということだ。
「やっぱり魔界にも魔獣は多いのか?」
「うん、それに最近はなんでか活発になってる。アスラも警戒した方がいいって言ってた」
アスラが言うなら事実なのだろう。
彼はこの国の矛。前線で魔獣を討伐している男だ。
彼が違和感を感じているというならそれは確かに警戒する材料になりうる。
「それにフェルナンドの魔族も攻めてくるって噂も流れてる」
「フェルナンドとの戦争ってよくあることなのか?」
「ううん。私が魔王になってからは一度もない。でもそれ以前は何度かあったらしい」
「そうか……」
この状況、タイミング、盤面。どことなく違和感が拭えない。
まぁ俺の気にしすぎかもしれないが、警戒しておかないとな。
そんなことを考えていると、急にアルが歩みを止めた。
そして彼女は前方にある巨大な建物を指す。
「エル、あれが今日の目的の場所」
民家や住居が並ぶ中で、一際目立つ建物があった。
白を基調としおり、どことなく神聖なものを感じさせる。
「協会か……?」
「うん、エルに合わせたい人たちがいる」
アルはそう言うと、そのまま協会へと入っていく。
俺も彼女の後をついていった。
協会の中は長椅子が二列で並べられており、奥に偶像があるという、ごく普通の教会だった。
協会を見渡していると、アルと同じくらい小さな少女が視界に入った。
掃除でもしていたのだろう。彼女はほうきを持ったままアルの所へ駆け寄ってくる。
「あ、魔王様!」
「久しぶり。アンナ」
「久しぶり! 皆も呼んでくるね!」
アンナと呼ばれた少女は、嬉しそうに奥の裏庭へと走って行った。
俺はその少女の背中を見て、ただ唖然としてしまう。
「は?」
もちろん認識阻害のフードをかぶっているにもかかわらず、アルの正体に気づいたということにも驚いた。
しかし、それよりもっと驚いたことがある。
「な、なんで……」
「ふふっ、想像以上の反応」
そんな俺の反応を見てアルは楽しそうに笑みを浮かべている。
アンナはどこにでもいそうな何気ない少女だ。
だが、それは人間界での話――
「なんで人間がここにいるんだ……?」
朝食を食べ終えた俺は満腹感に苛まれていた。
あれほど多好感を感じたはずの食事も、見たくもないと思えるほどには苦しんでいる。
なのに何故この目の前にいる少女は何一つ苦しそうにしていないんだ?
「勇者なのに貧弱。私は全然余裕」
ちなみにアルは俺の二倍以上の量を食べている。
朝食だぞ? どこの誰が朝食で十軒も飯屋はしご出来るんだ……
「そういえば、どこに向かってるんだ?」
俺は隣を爽快に歩くアルに尋ねた。
朝食を済ませた後、行きたい場所があると言ってから二十分ぐらい歩いている。未だに目的地も聞いていない。
「着いてからのお楽しみ」
彼女なら転移魔法を使うことも可能だ。でも、使わずに歩いているのは俺にこの国の風景を見せるためだろうな。
水路が設備されており、住居や民家だけで飽きさせないようにするために所々平原や森などと自然も見える。とてもいい国だ。
そして、百メートルを超える壁に囲まれた城塞都市。まぁそれに関してはどこの国も同じようなもの。
もちろん人間、魔族対策というのもある。だが、一番の理由は魔獣対策だ。
魔獣。それは太古の時代に魔神がこの世界に堕とした異物。
通常の生物とは異なり、生存本能などの基本的本能は排他されている。残されているのは殺戮の衝動だけ。
普通に生殖をしているのか、それともどこからと湧いているのか。魔獣に関してまだ分からないことが多い。
ただ、一つ分かること、それは全生物にとって公害ということだ。
「やっぱり魔界にも魔獣は多いのか?」
「うん、それに最近はなんでか活発になってる。アスラも警戒した方がいいって言ってた」
アスラが言うなら事実なのだろう。
彼はこの国の矛。前線で魔獣を討伐している男だ。
彼が違和感を感じているというならそれは確かに警戒する材料になりうる。
「それにフェルナンドの魔族も攻めてくるって噂も流れてる」
「フェルナンドとの戦争ってよくあることなのか?」
「ううん。私が魔王になってからは一度もない。でもそれ以前は何度かあったらしい」
「そうか……」
この状況、タイミング、盤面。どことなく違和感が拭えない。
まぁ俺の気にしすぎかもしれないが、警戒しておかないとな。
そんなことを考えていると、急にアルが歩みを止めた。
そして彼女は前方にある巨大な建物を指す。
「エル、あれが今日の目的の場所」
民家や住居が並ぶ中で、一際目立つ建物があった。
白を基調としおり、どことなく神聖なものを感じさせる。
「協会か……?」
「うん、エルに合わせたい人たちがいる」
アルはそう言うと、そのまま協会へと入っていく。
俺も彼女の後をついていった。
協会の中は長椅子が二列で並べられており、奥に偶像があるという、ごく普通の教会だった。
協会を見渡していると、アルと同じくらい小さな少女が視界に入った。
掃除でもしていたのだろう。彼女はほうきを持ったままアルの所へ駆け寄ってくる。
「あ、魔王様!」
「久しぶり。アンナ」
「久しぶり! 皆も呼んでくるね!」
アンナと呼ばれた少女は、嬉しそうに奥の裏庭へと走って行った。
俺はその少女の背中を見て、ただ唖然としてしまう。
「は?」
もちろん認識阻害のフードをかぶっているにもかかわらず、アルの正体に気づいたということにも驚いた。
しかし、それよりもっと驚いたことがある。
「な、なんで……」
「ふふっ、想像以上の反応」
そんな俺の反応を見てアルは楽しそうに笑みを浮かべている。
アンナはどこにでもいそうな何気ない少女だ。
だが、それは人間界での話――
「なんで人間がここにいるんだ……?」
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