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間章1 空虚
22話 接触
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ガイアとレーナが北東方向へ進み始めて、三日ほど経っただろうか。
エルと別れてから五日が経とうとしていた。
何も変わらない殺風景に、進んでいるのかも分からなくなる時間感覚。
しかし、そんな地獄のような時間にもようやく終止符がついた。
「な、なんだこれは!?」
「こ、これは国ですか……!?」
突然、視界の奥に現れた国を見て、ガイアとレーナは唖然とする。
まだまだ距離があるにもかかわらず、国と一目で分かるほどの大きさ。
それに、そこにはなかったはずの場所に突如現れたという点。
今までの経験上、二人はすぐにその正体を察した。
「隠匿結界が張られてたのか。それも一国を覆うほどの……」
「これは危なくないですか? こんな発達した国があるなんて……」
現状を理解した二人はすぐに表情を引きつらせる。
発達した魔術に、栄えた文化。これは人間界にとって圧倒的な脅威に成りうる。
もし、この国が人間界に攻め入ってきたら?
現状、人間界は魔族を相手するので手一杯。そんな中、新たにもう一国を相手をするなど不可能だ。
「ガイアさん、流石にこれは一度退かないと……」
レーナはそんな国に背を向ける。
これは完全に人間界を揺るがす問題だ。自分たちの意思で決めていい話ではない。
なのに、ガイアは諦めた口ぶりで告げる。
「もう……もう遅い」
「え、それってどういう――」
意味の分からない彼の言葉に、レーナは聞き返そうと振り返る。
しかし、そんな彼女の言葉は最後まで言い切られることはなかった。
「――なっ!? いつの間に!?」
ガイアとレーナの正面に突如、フードを被った剣士が現れる。
フードに何か小細工がされているのか、何故か顔がぼやけて見えない。
だが、ガイアたちでさえも、本能が逃げろと訴えかけるほどの圧をビシビシと放っていた。
侵入者の処理を任されているのだ。あの国の中でそれなりの強者なのだろう。
それに【テレポート】を使い、この場に駆け付けた。魔術に関してもそれなりに精通していると見える。
「ど、どうして、こんなすぐに……!」
「隠匿結界を通ったからな。俺たちが侵入したことはバレバレだ」
動揺を隠せないレーナとは違い、ガイアは冷静に状況を判断する。
相手は正体不明のフードの剣士が一人。見たところ今すぐに援軍が来ることはなさそうだ。
本来ならレーナと協力し、剣士を片づけて、逃げるのが定石というもの。
だが、この剣士の底はまるで深淵のように暗く、どこまでも見通せない。
ガイアが本気で戦って勝てるか分からない、そう思うのは初めてのことだった。
彼にしては珍しく、少し冷や汗をかきながらレーナに確認する。
「レーナ……覚悟は決めたか?」
「た、戦うんですか!? 他の方法でも……」
「こちらがやらなければ先にやられる。そう簡単に逃がしてもらえないだろうしな」
ガイアはそう言って、『聖拳』を身につける。
それと同時に、フードの剣士も剣の柄を握った。とっくに相手も覚悟はできているらしい。
そんな二人の様子を見て、レーナもようやく覚悟を決める。
「【聖痕】!」
レーナは全線で戦うガイアに持続型の回復魔法を付与した。
続いてガイアも戦闘態勢に入る。
フードの剣士も長剣を抜刀し、中段に構えた。
「ん? その構え方は……」
ガイアはそんな相手の構え方に既視感を覚えた気がした。
今まで何度も見てきたような。どこか安心感があるような。
「……いや、気のせいか」
しかし、戦いの火蓋はすぐに切られようとしていたため、すぐに脳裏から取り払う。
「行くぞおおおおぉぉぉぉぉ!」
ガイアは咆哮しながら、フードの剣士めがけて疾駆したのだった。
エルと別れてから五日が経とうとしていた。
何も変わらない殺風景に、進んでいるのかも分からなくなる時間感覚。
しかし、そんな地獄のような時間にもようやく終止符がついた。
「な、なんだこれは!?」
「こ、これは国ですか……!?」
突然、視界の奥に現れた国を見て、ガイアとレーナは唖然とする。
まだまだ距離があるにもかかわらず、国と一目で分かるほどの大きさ。
それに、そこにはなかったはずの場所に突如現れたという点。
今までの経験上、二人はすぐにその正体を察した。
「隠匿結界が張られてたのか。それも一国を覆うほどの……」
「これは危なくないですか? こんな発達した国があるなんて……」
現状を理解した二人はすぐに表情を引きつらせる。
発達した魔術に、栄えた文化。これは人間界にとって圧倒的な脅威に成りうる。
もし、この国が人間界に攻め入ってきたら?
現状、人間界は魔族を相手するので手一杯。そんな中、新たにもう一国を相手をするなど不可能だ。
「ガイアさん、流石にこれは一度退かないと……」
レーナはそんな国に背を向ける。
これは完全に人間界を揺るがす問題だ。自分たちの意思で決めていい話ではない。
なのに、ガイアは諦めた口ぶりで告げる。
「もう……もう遅い」
「え、それってどういう――」
意味の分からない彼の言葉に、レーナは聞き返そうと振り返る。
しかし、そんな彼女の言葉は最後まで言い切られることはなかった。
「――なっ!? いつの間に!?」
ガイアとレーナの正面に突如、フードを被った剣士が現れる。
フードに何か小細工がされているのか、何故か顔がぼやけて見えない。
だが、ガイアたちでさえも、本能が逃げろと訴えかけるほどの圧をビシビシと放っていた。
侵入者の処理を任されているのだ。あの国の中でそれなりの強者なのだろう。
それに【テレポート】を使い、この場に駆け付けた。魔術に関してもそれなりに精通していると見える。
「ど、どうして、こんなすぐに……!」
「隠匿結界を通ったからな。俺たちが侵入したことはバレバレだ」
動揺を隠せないレーナとは違い、ガイアは冷静に状況を判断する。
相手は正体不明のフードの剣士が一人。見たところ今すぐに援軍が来ることはなさそうだ。
本来ならレーナと協力し、剣士を片づけて、逃げるのが定石というもの。
だが、この剣士の底はまるで深淵のように暗く、どこまでも見通せない。
ガイアが本気で戦って勝てるか分からない、そう思うのは初めてのことだった。
彼にしては珍しく、少し冷や汗をかきながらレーナに確認する。
「レーナ……覚悟は決めたか?」
「た、戦うんですか!? 他の方法でも……」
「こちらがやらなければ先にやられる。そう簡単に逃がしてもらえないだろうしな」
ガイアはそう言って、『聖拳』を身につける。
それと同時に、フードの剣士も剣の柄を握った。とっくに相手も覚悟はできているらしい。
そんな二人の様子を見て、レーナもようやく覚悟を決める。
「【聖痕】!」
レーナは全線で戦うガイアに持続型の回復魔法を付与した。
続いてガイアも戦闘態勢に入る。
フードの剣士も長剣を抜刀し、中段に構えた。
「ん? その構え方は……」
ガイアはそんな相手の構え方に既視感を覚えた気がした。
今まで何度も見てきたような。どこか安心感があるような。
「……いや、気のせいか」
しかし、戦いの火蓋はすぐに切られようとしていたため、すぐに脳裏から取り払う。
「行くぞおおおおぉぉぉぉぉ!」
ガイアは咆哮しながら、フードの剣士めがけて疾駆したのだった。
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