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49話 急上昇
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「はぁ、これでひとまずは落ち着いたわね」
私はため息をつきながら、ソファに腰をかけた。
正面にはやつれたシアンが座っている。彼も先ほどまで大量の冒険者に翻弄されていた。
「まさかこれほどまでの入団希望者が出るとは思ってもいませんでした」
「少しは目立つかなと思っていたけれど、まさかあの二人、C級やB級を倒していたなんてね」
彼らは先ほどリッドやアレクと昇級試験を受けていた者たちである。
二人の偉業を見て居ても立っても居られなかったようだ。
「絶対に明日はもっと増えますよ。今も大変なことになってますし」
シアンは受付の仕事に追われているミーシャたちを見て言った。
流石にミーシャ一人であの数の冒険者をさばくことは不可能だろう。
そこでエギンに頼み、冒険者協会から十名ほど受付嬢を借りた。
これもギルド順位を一位にする制度の一環になるそうで、このまま原初の剣で働かせていいそうだ。
もちろん、嫌なら無理強いをさせるつもりはない。しかし、彼女たちは二つ返事で仕事を受け入れてくれている。
「今頃第一回の試験が始まってますね。何人合格できることやら」
シアンはこのギルドにある訓練場の方に視線を向ける。
流石に全隊員を所属させるわけにはいかない。そうすればギルドなど荒れに荒れるだろう。
そこで私たちは試験を設けることにした。
「合格ラインはとても簡単だもの。ほぼ合格するんじゃない?」
「いえ、百メル走は簡単じゃないです」
試験はとても明確で簡単なものである。
ただ百キロ走りきればいいだけだ。
「実際、その試験内容を聞いた途端、帰った人が何十人もいましたよ」
「やる気がない人はいらないのよ。どれだけ弱かろうとやる気がある人なら大歓迎よ」
中には今所属しているギルドを辞めてきている者もいるそうだ。
一週間もすれば原初の剣が弱小ギルドと言われる日がなくなるだろう。
「アリア様。私は何をすればいいでしょうか?」
私の背後から物音立てず、一人の男が現れる。
この影の薄い男はネイト。アレンが送ってきた情報屋らしい。
情報収集などの暗部の活動については一流らしく、有効活用してほしい、だそうだ。
「ん? 何もしなくていいわよ」
「そ、そういうわけにもいかず……何か情報を集めてきましょうか?」
暗部。それは主に情報収集を活動としているが、暗殺や隠ぺい等も行う。
現にこの男もその仕事を得意としているのだろう。
「他に情報の隠滅や……暗殺なども出来ますが?」
ネイトは薄ら笑いを浮かべながら私に言ってきた。
そんな彼の提案を一刀両断するように私は告げる。
「ここに来た以上、暗殺は禁止ね。それと情報も全て隠さないように」
「え?」
ネイトは口を開けてその場で固まってしまった。
今まで当たり前だったことが禁止されたのだ。驚かないのも無理がある。
そして、情報を理解し始めると、口をパクパクとさせ始める。
「い、いや、それでは私の仕事が……」
ネイトとしても送られてきて放置されては気まずいのだろう。
しかし、私はそのような犯罪に手を染めるような行為を見過ごすわけにはいかない。
「ネイトは強かったりする? あ、記録の情報じゃなくて本当の情報を言ってね」
「い、一応はD級冒険者と設定してます……実際はB級冒険者ですが」
色々と動きやすくするために低ランクに設定しているのだろう。
彼は確か二十代前半だったはずだ。その年でB級冒険者となると、かなり成長が見込める。
「じゃあ私について来てちょうだい。行きたいところがあるの」
「どこでしょうか? まだミーシャさんたちも忙しそうですけど……」
今も絶えず冒険者が訪れているものの、少しずつ落ち着いてきている。
シアンやミーシャたちなら大丈夫だろう。
「ダンジョンに行くわよ。あなたに少し会わせたい人がいるの」
「分かりました。ダンジョンですね……ん? 人に会う? ダンジョンで?」
私はため息をつきながら、ソファに腰をかけた。
正面にはやつれたシアンが座っている。彼も先ほどまで大量の冒険者に翻弄されていた。
「まさかこれほどまでの入団希望者が出るとは思ってもいませんでした」
「少しは目立つかなと思っていたけれど、まさかあの二人、C級やB級を倒していたなんてね」
彼らは先ほどリッドやアレクと昇級試験を受けていた者たちである。
二人の偉業を見て居ても立っても居られなかったようだ。
「絶対に明日はもっと増えますよ。今も大変なことになってますし」
シアンは受付の仕事に追われているミーシャたちを見て言った。
流石にミーシャ一人であの数の冒険者をさばくことは不可能だろう。
そこでエギンに頼み、冒険者協会から十名ほど受付嬢を借りた。
これもギルド順位を一位にする制度の一環になるそうで、このまま原初の剣で働かせていいそうだ。
もちろん、嫌なら無理強いをさせるつもりはない。しかし、彼女たちは二つ返事で仕事を受け入れてくれている。
「今頃第一回の試験が始まってますね。何人合格できることやら」
シアンはこのギルドにある訓練場の方に視線を向ける。
流石に全隊員を所属させるわけにはいかない。そうすればギルドなど荒れに荒れるだろう。
そこで私たちは試験を設けることにした。
「合格ラインはとても簡単だもの。ほぼ合格するんじゃない?」
「いえ、百メル走は簡単じゃないです」
試験はとても明確で簡単なものである。
ただ百キロ走りきればいいだけだ。
「実際、その試験内容を聞いた途端、帰った人が何十人もいましたよ」
「やる気がない人はいらないのよ。どれだけ弱かろうとやる気がある人なら大歓迎よ」
中には今所属しているギルドを辞めてきている者もいるそうだ。
一週間もすれば原初の剣が弱小ギルドと言われる日がなくなるだろう。
「アリア様。私は何をすればいいでしょうか?」
私の背後から物音立てず、一人の男が現れる。
この影の薄い男はネイト。アレンが送ってきた情報屋らしい。
情報収集などの暗部の活動については一流らしく、有効活用してほしい、だそうだ。
「ん? 何もしなくていいわよ」
「そ、そういうわけにもいかず……何か情報を集めてきましょうか?」
暗部。それは主に情報収集を活動としているが、暗殺や隠ぺい等も行う。
現にこの男もその仕事を得意としているのだろう。
「他に情報の隠滅や……暗殺なども出来ますが?」
ネイトは薄ら笑いを浮かべながら私に言ってきた。
そんな彼の提案を一刀両断するように私は告げる。
「ここに来た以上、暗殺は禁止ね。それと情報も全て隠さないように」
「え?」
ネイトは口を開けてその場で固まってしまった。
今まで当たり前だったことが禁止されたのだ。驚かないのも無理がある。
そして、情報を理解し始めると、口をパクパクとさせ始める。
「い、いや、それでは私の仕事が……」
ネイトとしても送られてきて放置されては気まずいのだろう。
しかし、私はそのような犯罪に手を染めるような行為を見過ごすわけにはいかない。
「ネイトは強かったりする? あ、記録の情報じゃなくて本当の情報を言ってね」
「い、一応はD級冒険者と設定してます……実際はB級冒険者ですが」
色々と動きやすくするために低ランクに設定しているのだろう。
彼は確か二十代前半だったはずだ。その年でB級冒険者となると、かなり成長が見込める。
「じゃあ私について来てちょうだい。行きたいところがあるの」
「どこでしょうか? まだミーシャさんたちも忙しそうですけど……」
今も絶えず冒険者が訪れているものの、少しずつ落ち着いてきている。
シアンやミーシャたちなら大丈夫だろう。
「ダンジョンに行くわよ。あなたに少し会わせたい人がいるの」
「分かりました。ダンジョンですね……ん? 人に会う? ダンジョンで?」
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