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四章 魔術大会
実況
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『はいどうもぉ! アナウンスを務めている私、三年部のアナ・ウンスが引き続き実況を務めたいと思いまぁす!』
アナは待合室で投影魔法で写っている戦場の実況を行う。
アナはアナウンス、並びに実況に長けており、一年部の時からアナウンスの天才児と呼ばれていたのだ。
そのため、今年もアナの実況を楽しみにしている者も多い。
『今日はゲストに三年部最強の男、ゲータさんと卒業生で魔王城で務めているバルランドさんに来てもらいました!』
アナは隣にいるゲータとバルランドを紹介する。
ゲータは筋肉もりもりの体育会系男子だ。
そして、バルランドは賢そうなダンディなおじさんと言えばいいだろうか。
「どうも! 最強の男とか呼ばれてるゲータだ! もちろん私も魔術大会には参加するが、自分の試合以外はこうして実況の手助けをしようと思ってる」
「こんにちは。生徒の皆さん。バルランドです。この魔術大会は各先生もご覧になっているため、あんまり断言しては言えないんですけど、まぁ要約すると将来に役立ちます。僕もこうして魔王城で務めれてるので…………皆さんが全力が出せることを願っています」
「「「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!」」」
その二人の言葉に生徒たちは皆、歓喜の声を上げた。
ノリに乗っている光景を見てアナは口角を上げる。
アナにとってこの状況こそが至福。これ以上の幸福を知らないのだ。
『では実況を始めまぁす! モニター…………オン!』
そのアナの声とともに真っ黒に染まっていたモニターが一回戦を映し出す。
『おおっと! 誰だこの娘は!? 全速力で住宅街の屋根を駆けているぅぅ!』
「「「……………………は?」」」
最初に動き出したエルフリアにフォーカスが当てられる。
しかし、その異様な速さに生徒たちは固まっていた。
だが、流石アナウンスの天才児だ。
アナだけは平常を保って実況を行っている。
それに続くように遅れて我に返った二人はコメントを入れる。
「さ、早速奇襲をかけようとしてるのか! 血気盛んなこの子がいるパーティーは…………ドMパーティー? ん? これってМなのか?」
「か、風魔法で自分の速さを促進させてますね…………しかし、この魔法はなんです?」
『バルランドさんでも分からないんですかぁ!? この娘、いったい何者ですか! 今後の行方が楽しみですね!』
エルフリアはまるで風のように屋根を走っていた。
しかし、それは速さの増幅魔法を超えており、生徒の範疇を超えていたのだ。
『オリジナル魔法ですかね?』
「その可能性が高いな。しかし、生徒にこれほどのオリジナル魔法を使える奴がいたとは」
「…………ん? この子。元エルフの族長じゃないですか」
そのバルランドの言葉にすぐにアナが応答する。
『はい。この生徒はここ数週間前までは族長をしていたようです。ならこの魔法は納得ですね!』
そのアナの言葉に同じ容認モニターを眺めていた生徒たちも安堵する。
そんな中、ゲータが首をかしげて口にする。
「これってどこに向かってるんだ? このままいけば場外だぞ?」
『まずは合流するつもりなんじゃないですかね? しかし、わざわざ場外ギリギリまで移動した意図は分かりませんが』
そのアナの疑問とともに左下に小さな地図が映し出された。
五パーティー、計十五人の生徒たちの居場所である。
もちろん、現在参加しているレイたちは知ることはできないが、実況者側は知ることができるのだ。
「レイ選手のところに向かってますね。まさか正反対に転移させられたのに開始数分で何十キロもの距離を移動するとは」
バルランドは少し苦笑いしながら言った。
魔術大会ではマップがとても広くなっている。
それはエルフリアのように魔法で戦うため、空間が広くないと窮屈に感じてしまうためだ。
しかし、数分でたどり着くなどあり得ていいわけがない。
「普通は男が自ら出向くものだろ! なんだこの男は!」
熱血、体育系のゲータは憤りをあらわにしながら言った。
しかし、そんな言葉がレイに聞こえるわけもなく…………
『ん? 屋上に寝っ転がりましたね?』
「何か魔法でも打つのか? しかし、寝っ転がって打つ魔法など俺は知らんな」
「…………もしかして寝るつもりなんじゃ」
そのバルランドの言葉にアナとゲータは含む生徒たちがないない、と首を横に振った。
まぁ試合中に寝るやつなどいるはずもない。それが常識なのだから。
『お、エルフリア選手! レイ選手の隣に座りました。これは何をするつもりなのでしょうか?』
「おいおいおい! このレイって男、本気で寝始めたぞ!」
「エルフリア選手は…………レイ選手の頭を撫でてる? アハハ…………な、何の効果があるんでしょうかね?」
そんな映し出された光景に待合室の空気がどっと重くなる。
(((何を見せられてるんですかね?)))
この場にいる全ての魔族の考えが重なった瞬間だった。
アナは待合室で投影魔法で写っている戦場の実況を行う。
アナはアナウンス、並びに実況に長けており、一年部の時からアナウンスの天才児と呼ばれていたのだ。
そのため、今年もアナの実況を楽しみにしている者も多い。
『今日はゲストに三年部最強の男、ゲータさんと卒業生で魔王城で務めているバルランドさんに来てもらいました!』
アナは隣にいるゲータとバルランドを紹介する。
ゲータは筋肉もりもりの体育会系男子だ。
そして、バルランドは賢そうなダンディなおじさんと言えばいいだろうか。
「どうも! 最強の男とか呼ばれてるゲータだ! もちろん私も魔術大会には参加するが、自分の試合以外はこうして実況の手助けをしようと思ってる」
「こんにちは。生徒の皆さん。バルランドです。この魔術大会は各先生もご覧になっているため、あんまり断言しては言えないんですけど、まぁ要約すると将来に役立ちます。僕もこうして魔王城で務めれてるので…………皆さんが全力が出せることを願っています」
「「「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!」」」
その二人の言葉に生徒たちは皆、歓喜の声を上げた。
ノリに乗っている光景を見てアナは口角を上げる。
アナにとってこの状況こそが至福。これ以上の幸福を知らないのだ。
『では実況を始めまぁす! モニター…………オン!』
そのアナの声とともに真っ黒に染まっていたモニターが一回戦を映し出す。
『おおっと! 誰だこの娘は!? 全速力で住宅街の屋根を駆けているぅぅ!』
「「「……………………は?」」」
最初に動き出したエルフリアにフォーカスが当てられる。
しかし、その異様な速さに生徒たちは固まっていた。
だが、流石アナウンスの天才児だ。
アナだけは平常を保って実況を行っている。
それに続くように遅れて我に返った二人はコメントを入れる。
「さ、早速奇襲をかけようとしてるのか! 血気盛んなこの子がいるパーティーは…………ドMパーティー? ん? これってМなのか?」
「か、風魔法で自分の速さを促進させてますね…………しかし、この魔法はなんです?」
『バルランドさんでも分からないんですかぁ!? この娘、いったい何者ですか! 今後の行方が楽しみですね!』
エルフリアはまるで風のように屋根を走っていた。
しかし、それは速さの増幅魔法を超えており、生徒の範疇を超えていたのだ。
『オリジナル魔法ですかね?』
「その可能性が高いな。しかし、生徒にこれほどのオリジナル魔法を使える奴がいたとは」
「…………ん? この子。元エルフの族長じゃないですか」
そのバルランドの言葉にすぐにアナが応答する。
『はい。この生徒はここ数週間前までは族長をしていたようです。ならこの魔法は納得ですね!』
そのアナの言葉に同じ容認モニターを眺めていた生徒たちも安堵する。
そんな中、ゲータが首をかしげて口にする。
「これってどこに向かってるんだ? このままいけば場外だぞ?」
『まずは合流するつもりなんじゃないですかね? しかし、わざわざ場外ギリギリまで移動した意図は分かりませんが』
そのアナの疑問とともに左下に小さな地図が映し出された。
五パーティー、計十五人の生徒たちの居場所である。
もちろん、現在参加しているレイたちは知ることはできないが、実況者側は知ることができるのだ。
「レイ選手のところに向かってますね。まさか正反対に転移させられたのに開始数分で何十キロもの距離を移動するとは」
バルランドは少し苦笑いしながら言った。
魔術大会ではマップがとても広くなっている。
それはエルフリアのように魔法で戦うため、空間が広くないと窮屈に感じてしまうためだ。
しかし、数分でたどり着くなどあり得ていいわけがない。
「普通は男が自ら出向くものだろ! なんだこの男は!」
熱血、体育系のゲータは憤りをあらわにしながら言った。
しかし、そんな言葉がレイに聞こえるわけもなく…………
『ん? 屋上に寝っ転がりましたね?』
「何か魔法でも打つのか? しかし、寝っ転がって打つ魔法など俺は知らんな」
「…………もしかして寝るつもりなんじゃ」
そのバルランドの言葉にアナとゲータは含む生徒たちがないない、と首を横に振った。
まぁ試合中に寝るやつなどいるはずもない。それが常識なのだから。
『お、エルフリア選手! レイ選手の隣に座りました。これは何をするつもりなのでしょうか?』
「おいおいおい! このレイって男、本気で寝始めたぞ!」
「エルフリア選手は…………レイ選手の頭を撫でてる? アハハ…………な、何の効果があるんでしょうかね?」
そんな映し出された光景に待合室の空気がどっと重くなる。
(((何を見せられてるんですかね?)))
この場にいる全ての魔族の考えが重なった瞬間だった。
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