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二章 学園生活
覇気
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「…………では、始めますよ?」
「えぇ。お願いします」
俺と校長は適度に距離をとって対面する。
昨日、勇者の加護がなくっていたため、覇気は使えないと思っていた。
しかし、今、魔力操作で確認するとどうやら使えるようだ。そこら辺については休みの日にでも整理しなければならない。
「ふぅ…………」
俺は一度深呼吸をして魔力を整理する。
一撃だ。この一撃で校長の意識を刈り取れれば俺の勝ちなのだ。
この一撃に俺の全力を乗せなければならない。
いつもなら全方位に発する覇気も今は前方だけに集中させる。
他の生徒に危害を加えてはならないからだ。
俺はにんまりと笑みを浮かべ、校長に向かって放つ。
「【眠れ】!」
別に言葉に意味はない。覇気にただ乗せているだけなのだから。
だが、特にいうこともなかったので眠れと言った。
俺の心を根源に前方に向かって荒れ狂う力の権化として覇気が放たれる。
それは空気を塗りつぶすように、重たく進み、校長に直撃した。
「…………だ、大丈夫ですか?」
すべての力を放ち終えてから俺は気づく。やりすぎてしまったと。
今までの覇気の何倍もの威力だった。この威力ならエルフリアであろうと一瞬で気を失うだろう。
更に言うとあのドラグーンであれば一週間は目を覚まさない。そのぐらいの威力だった。
「……………………」
校長は何も口にせず、ただ俺を瞳孔にとらえている。
意識は確かにあるようだ。だが、その視線からは歓喜、驚嘆、悲哀。全ての感情が感じられる。
「……………………良かった」
魔族って全員Mなのだろうか。
校長は身を震わせながら俺の覇気を感じていた。
あの覇気は一瞬で意識を刈り取るレベルの衝撃だ。俺が自分に放ったとしても意識は飛んでいるだろう。
そんな破棄を受けてよかった? Mにもほどがあるだろ。
しかし、そんな俺の考えも次の校長の言葉で消滅する。
数十秒俺を見た校長は重たく口を開いた。
「そうだったのですね…………まだ生きて…………」
「…………え?」
その瞳からは一粒の大きな涙が零れ落ちた。
校長のそんな状態に俺は唖然としてしまう。
校長の視線は俺をとらえていなかった。
俺を超えたその先。俺の延長線上にいる憧憬を見ているようだった。
すると、校長は膝から崩れるように俺に向かって頭を下げる。いや、首を垂れるのほうが正しいか。
俺に本心から忠誠を示すように校長は口を開いた。
「お帰りなさいませ。魔王様」
「え…………えええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
俺は自分の人生の中で一番大きな声を上げたのだった。
はい。どうやら追放された勇者は魔王になったようです。
「えぇ。お願いします」
俺と校長は適度に距離をとって対面する。
昨日、勇者の加護がなくっていたため、覇気は使えないと思っていた。
しかし、今、魔力操作で確認するとどうやら使えるようだ。そこら辺については休みの日にでも整理しなければならない。
「ふぅ…………」
俺は一度深呼吸をして魔力を整理する。
一撃だ。この一撃で校長の意識を刈り取れれば俺の勝ちなのだ。
この一撃に俺の全力を乗せなければならない。
いつもなら全方位に発する覇気も今は前方だけに集中させる。
他の生徒に危害を加えてはならないからだ。
俺はにんまりと笑みを浮かべ、校長に向かって放つ。
「【眠れ】!」
別に言葉に意味はない。覇気にただ乗せているだけなのだから。
だが、特にいうこともなかったので眠れと言った。
俺の心を根源に前方に向かって荒れ狂う力の権化として覇気が放たれる。
それは空気を塗りつぶすように、重たく進み、校長に直撃した。
「…………だ、大丈夫ですか?」
すべての力を放ち終えてから俺は気づく。やりすぎてしまったと。
今までの覇気の何倍もの威力だった。この威力ならエルフリアであろうと一瞬で気を失うだろう。
更に言うとあのドラグーンであれば一週間は目を覚まさない。そのぐらいの威力だった。
「……………………」
校長は何も口にせず、ただ俺を瞳孔にとらえている。
意識は確かにあるようだ。だが、その視線からは歓喜、驚嘆、悲哀。全ての感情が感じられる。
「……………………良かった」
魔族って全員Mなのだろうか。
校長は身を震わせながら俺の覇気を感じていた。
あの覇気は一瞬で意識を刈り取るレベルの衝撃だ。俺が自分に放ったとしても意識は飛んでいるだろう。
そんな破棄を受けてよかった? Mにもほどがあるだろ。
しかし、そんな俺の考えも次の校長の言葉で消滅する。
数十秒俺を見た校長は重たく口を開いた。
「そうだったのですね…………まだ生きて…………」
「…………え?」
その瞳からは一粒の大きな涙が零れ落ちた。
校長のそんな状態に俺は唖然としてしまう。
校長の視線は俺をとらえていなかった。
俺を超えたその先。俺の延長線上にいる憧憬を見ているようだった。
すると、校長は膝から崩れるように俺に向かって頭を下げる。いや、首を垂れるのほうが正しいか。
俺に本心から忠誠を示すように校長は口を開いた。
「お帰りなさいませ。魔王様」
「え…………えええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
俺は自分の人生の中で一番大きな声を上げたのだった。
はい。どうやら追放された勇者は魔王になったようです。
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