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「望、もしかしてだけど彼女出来たの?」
「え!」
途端にボンっと音が出そうな勢いで、望の顔は赤くなった。どうやら本当に彼女が出来たのかもしれない……先を越されてしまったようで、少し寂しい気分になる。
「いや、彼女って言うか……ルームシェアしてる人と言うか……」
「は? 望も誰か一緒に住んでる人いたの?」
「それを、今日律に言おうと思ってたんだよ!」
同じタイミングで同居人が居ることを報告しようとしていたなんて、そんなところまで本当に似ているらしい。
しかし、律とは違い望は同居人とは上手くいっているようだ。
「僕もちょっと色々あったんだけど、それは今度ちゃんと説明するね」
「色々って……聞き捨てならないけど」
「そこは聞き流してくれたら嬉しいな。まぁ、それをどうにかしてくれたのが、今ルームシェアしてる梔月…えと、蘇芳さんて言う人なんだ」
蘇芳梔月。その人が望の恩人であり、同居人らしい。
「何だろう……すごく既知感を感じる」
「わかる。僕も思ったから」
流石にここまで似たり寄ったりな状況に置かれていたことに、二人揃って視線を明後日の方へ向けてしまった。
「で、その蘇芳さんは望を大事にしてくれていると」
「え」
「見てればわかるよ。望、その蘇芳さんから連絡来てるの見て凄い嬉しそうだったし」
再び赤くなった望を見て、正直かわいいとすら思ってしまった。同じ顔なのに。
「……律はさ、運命の番って信じる?」
「運命の番。アルファとオメガの?」
「そう」
どこかで聞いたことはあった。恐らくは授業の一環で聞いたのだとは思う。
本能的なレベルで惹かれ合うが、出会える確率はとても低いとかそんな都市伝説染みたものだったはずだ。
「まさか、その人」
「うん、多分僕の運命の番なんだ」
よもやの出来事に驚きを隠せなかった。オメガがアルファに出会うことすら稀な世の中で、まさかそんなドラマみたいな出会いがあったなんて。
ベータがオメガに変異するより遥かに珍しい出来事ではないのだろうか?
「それ、結婚報告と受け取って良い?」
「なんで! 飛躍しすぎだよ!」
「照れなくて良いって」
揶揄うようにお祝いは何が良いかと尋ねれば、望は耳まで真っ赤にしながら手で顔を隠してしまった。
「で、さっきのはその蘇芳さんのお迎えの連絡?」
「……うん」
タイミング良く再び望のスマホに通知が来る。蘇芳と言う相手も、望のことを大事にしてくれているようだ。
中には一方的なアルファもいる。おっとりとしている望のことが心配ではあるが、その辺りの心配は無用かもしれない。
それよりも、一方的なアルファで脳裏に浮かんできた人物の顔を払うように、律は首を横に振った。
「律?」
「何でもないよ」
「そう? あ、蘇芳さん」
店内の窓の外、遠目でも分かる黒塗りの高級車。それを見た望は嬉しそうに微笑んだ。
まさかあの高級車の持ち主が望の同居人なのか? 望に一体何があってそんな相手と出会ったと言うのだろうか? 律は軽く頭痛を覚えてしまった。
「ごめん、律。今度ちゃんと紹介するから」
「うん、わかってる。また連絡するよ」
じゃあ、と自分の分の会計を済ませて店を出て行く望を見送る。その際に見えた、赤みの強い髪色の男が蘇芳と言う人物なのだろう。望は花のような笑みを惜しげもなく向けていた。
それを羨ましく思いながら、律は氷の溶けた味のしないアイスコーヒーを飲み干した。
「え!」
途端にボンっと音が出そうな勢いで、望の顔は赤くなった。どうやら本当に彼女が出来たのかもしれない……先を越されてしまったようで、少し寂しい気分になる。
「いや、彼女って言うか……ルームシェアしてる人と言うか……」
「は? 望も誰か一緒に住んでる人いたの?」
「それを、今日律に言おうと思ってたんだよ!」
同じタイミングで同居人が居ることを報告しようとしていたなんて、そんなところまで本当に似ているらしい。
しかし、律とは違い望は同居人とは上手くいっているようだ。
「僕もちょっと色々あったんだけど、それは今度ちゃんと説明するね」
「色々って……聞き捨てならないけど」
「そこは聞き流してくれたら嬉しいな。まぁ、それをどうにかしてくれたのが、今ルームシェアしてる梔月…えと、蘇芳さんて言う人なんだ」
蘇芳梔月。その人が望の恩人であり、同居人らしい。
「何だろう……すごく既知感を感じる」
「わかる。僕も思ったから」
流石にここまで似たり寄ったりな状況に置かれていたことに、二人揃って視線を明後日の方へ向けてしまった。
「で、その蘇芳さんは望を大事にしてくれていると」
「え」
「見てればわかるよ。望、その蘇芳さんから連絡来てるの見て凄い嬉しそうだったし」
再び赤くなった望を見て、正直かわいいとすら思ってしまった。同じ顔なのに。
「……律はさ、運命の番って信じる?」
「運命の番。アルファとオメガの?」
「そう」
どこかで聞いたことはあった。恐らくは授業の一環で聞いたのだとは思う。
本能的なレベルで惹かれ合うが、出会える確率はとても低いとかそんな都市伝説染みたものだったはずだ。
「まさか、その人」
「うん、多分僕の運命の番なんだ」
よもやの出来事に驚きを隠せなかった。オメガがアルファに出会うことすら稀な世の中で、まさかそんなドラマみたいな出会いがあったなんて。
ベータがオメガに変異するより遥かに珍しい出来事ではないのだろうか?
「それ、結婚報告と受け取って良い?」
「なんで! 飛躍しすぎだよ!」
「照れなくて良いって」
揶揄うようにお祝いは何が良いかと尋ねれば、望は耳まで真っ赤にしながら手で顔を隠してしまった。
「で、さっきのはその蘇芳さんのお迎えの連絡?」
「……うん」
タイミング良く再び望のスマホに通知が来る。蘇芳と言う相手も、望のことを大事にしてくれているようだ。
中には一方的なアルファもいる。おっとりとしている望のことが心配ではあるが、その辺りの心配は無用かもしれない。
それよりも、一方的なアルファで脳裏に浮かんできた人物の顔を払うように、律は首を横に振った。
「律?」
「何でもないよ」
「そう? あ、蘇芳さん」
店内の窓の外、遠目でも分かる黒塗りの高級車。それを見た望は嬉しそうに微笑んだ。
まさかあの高級車の持ち主が望の同居人なのか? 望に一体何があってそんな相手と出会ったと言うのだろうか? 律は軽く頭痛を覚えてしまった。
「ごめん、律。今度ちゃんと紹介するから」
「うん、わかってる。また連絡するよ」
じゃあ、と自分の分の会計を済ませて店を出て行く望を見送る。その際に見えた、赤みの強い髪色の男が蘇芳と言う人物なのだろう。望は花のような笑みを惜しげもなく向けていた。
それを羨ましく思いながら、律は氷の溶けた味のしないアイスコーヒーを飲み干した。
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