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第一話 二年の夏の日のSHR
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「今から進路希望調査のプリントを配るからな。しっかり将来のことを考えて書くんだぞ。提出期限はそうだな。自分のやりたいことが決まったら自分で出しにこい。以上だ」
そう、声をかけながら高橋先生はプリントを配る。
回ってきたプリントを見てみると、進学か就職かが書いてあり、その中に『希望(将来)の職種』とあった。
そして、提出期限がやりたいことが決まったらという頭のおかしいことを言った高橋先生に呆れた。
将来のことを考えるなんて馬鹿馬鹿しい。そんな叶えることができる人間が一握りなものを夢見てどうするんだ。
俺はため息をついた。
「よし、じゃあこれでSHR終わるからな。俺は限定グッズ買いに行ってくるから。気をつけて帰れよ」
「先生、買ったら学校に持ってきて、見せてくださいよ」
「それは無理だ。壊れたらどうする」
「壊しませんって」
「見たいなら自分で買うんだな。あと時間稼ぎをするんじゃない。では、先生はもう行くからな」
そう言い放って、廊下を走っていった。
やっぱり高橋先生は生粋のオタクで頭がおかしい先生だ。そして、生徒より趣味が一番の問題教師だ。そんな先生だからこそ大丈夫だと思って、『就職』に丸をつけ、『会社員』と書いた。
翌日、高橋先生にプリントを出しにいくと突き返された。
「まこと、これが本当にやりたいことなのか」
「そうです。自分は普通に生きたいので」
「そうか、じゃあ、また今度持ってこい」
「なんでですか」
「なんでって、そりゃ、やりたいことが見つかっていない顔をしているからだ」
「なに変なこと言ってるんですか」
「変なことってまったく、教師は生徒のやりたいことを応援する仕事だと先生は思ってるぞ」
「そうですか」
「反応が薄いなぁ。もっといい反応してくれよ」
「真面目にやってください」
「怖いなぁ。ひとまずもう一回考えてこい」
「はい、わかりました」
そう言って、職員室を出た。俺がどう進もうが、先生は関係がないはずなのになぜ構うのかよくわからない。
そして、この気持ちを晴らしたくて、なんとなく屋上に向かった。
屋上にくると綺麗な夕焼けが見えた。柵の隙間から夕焼けを見ながら、途中で買った缶コーヒーを飲みながら黄昏れていた。
「君はなにを見ているんだい」
急に後ろから声が聞こえ、振り向くが姿がない。
「そっちじゃなくて、こっちだよ」
声の主は屋上よりも高い場所にいた。
「よっと、それでなにを見てたんだい」
「ただ、夕焼けを見てただけだ」
「そうなんだ。それだけ?」
「それだけだけど、それであんたは俺になにかようか」
「いや、遠くの希望にまだ辿り着けていない、迷える子羊きたなぁって思ってね」
あっ、ダメだ。高橋先生みたいなおかしい方の人だ。
「言っている意味がちょっとわからないんだが」
「そのままの意味なんだけどな。まぁ、用は私が導いてあげようってことだよ」
「ほんとに言っている意味がわからないので、もう帰りますね」
「えぇ、ちょっと待ってよ」
そんな言葉を気にせず、屋上のドアを閉める。
なんなんだ、あの人。絶対関わってはダメな気がする。急いで昇降口に向かったが、あの変な人は昇降口にいた。
「おっ、来たね。さっきぶりだね」
「な、なんで」
「んっ、えっとね。さっさって降りてきただけだよ」
「……」
俺は理解するのを諦めることにした。
「そんなポカンとした顔してないで、帰るんでしょ。私が送って行ってあげよう」
「いや、大丈夫です」
「そんなこと言わないでさ」
俺の袖を掴んで大きな声を上げた。俺はこれ以上目立つのはまずいと思い、好き勝手にさせることにした。
「もう、わかったから。ついてくるなら勝手にすればいいじゃないか」
「許可ももらえたことだし、ついていくね」
そう言って変な人は大人しくなり、あとをついてくる。
「ねぇねぇ、君ってさ。二年生だよね」
「……そうですけど」
「やっぱり、あそこの下駄箱二年生だったような気がしたからね」
「そうですか」
「ちょっとちょっと、冷たくない。もっとさ、私は誰なのかとか、色々聞くことがあるでしょ」
「じゃあ、あなたは誰ですか」
「よくぞ聞いてくれたよ。私は神木すみれ、三年生だよ」
決めポーズを決めながら、自己紹介する彼女を無視して先に進む。
「ねぇ、無視しないでよ」
ため息を吐いた。
「さっきからひどいよ。もうちょっと構ってくれてもいいのにさ」
「十分構ってます」
「構ってないよ。ひとまず後輩君のことを教えてもらおうか」
「こ、後輩君って……やめてください」
「そんな固いこと言わないで、さっ早く教えてよ。教えないとずっと呼ぶからね」
「……前田まことです」
「まこと君かぁ、でも後輩君の方が気に入っちゃった」
「俺が答えても無意味だったじゃないですか」
「無意味じゃないよ。後輩君の名前を知ることができたんだから」
「そうですか。ところでどこまでついてくるんですか」
「ん~どうしようかな。本当はここまでついてくる気はなかったんだけど、気になってついてきちゃったんだよね」
「それなら、帰ったらどうですか」
「ふむ、今日のところはここでお別れといこうかな」
「早く帰ってください」
「もう、配慮が足りないなぁ。まぁ、いいや。また明日ね」
そう言って神木すみれと名乗る三年生はどこかに歩いて行ってしまった。
なんなんだ、あの人は。屋上で夕日を見ていたら、変なこと言われて付き纏われて迷惑だ。希望とか言ってたけどそんなもの思い描いたところでなにになる。仮に希望が実現したとして、その先に待っているのは思い描いていた理想とは程遠い現実がやってくる。そして、絶望が待っているだけだ。そうなるなら、抱かない方がもっとも正しい選択だ。そもそもやりたいことや目的がない時点で俺とは程遠い。
また明日と言っていたが、明日になればどうせ忘れているはずだ。明日も付き纏われては正直俺の身が持たない。
ため息を吐いて、鍵を開けて家の中に入る。
荷物を下ろし、着替えをしてベッドの上に横になった。
今日はいつもより疲れた。
そして、そのまま眠りに入ってしまった。
そう、声をかけながら高橋先生はプリントを配る。
回ってきたプリントを見てみると、進学か就職かが書いてあり、その中に『希望(将来)の職種』とあった。
そして、提出期限がやりたいことが決まったらという頭のおかしいことを言った高橋先生に呆れた。
将来のことを考えるなんて馬鹿馬鹿しい。そんな叶えることができる人間が一握りなものを夢見てどうするんだ。
俺はため息をついた。
「よし、じゃあこれでSHR終わるからな。俺は限定グッズ買いに行ってくるから。気をつけて帰れよ」
「先生、買ったら学校に持ってきて、見せてくださいよ」
「それは無理だ。壊れたらどうする」
「壊しませんって」
「見たいなら自分で買うんだな。あと時間稼ぎをするんじゃない。では、先生はもう行くからな」
そう言い放って、廊下を走っていった。
やっぱり高橋先生は生粋のオタクで頭がおかしい先生だ。そして、生徒より趣味が一番の問題教師だ。そんな先生だからこそ大丈夫だと思って、『就職』に丸をつけ、『会社員』と書いた。
翌日、高橋先生にプリントを出しにいくと突き返された。
「まこと、これが本当にやりたいことなのか」
「そうです。自分は普通に生きたいので」
「そうか、じゃあ、また今度持ってこい」
「なんでですか」
「なんでって、そりゃ、やりたいことが見つかっていない顔をしているからだ」
「なに変なこと言ってるんですか」
「変なことってまったく、教師は生徒のやりたいことを応援する仕事だと先生は思ってるぞ」
「そうですか」
「反応が薄いなぁ。もっといい反応してくれよ」
「真面目にやってください」
「怖いなぁ。ひとまずもう一回考えてこい」
「はい、わかりました」
そう言って、職員室を出た。俺がどう進もうが、先生は関係がないはずなのになぜ構うのかよくわからない。
そして、この気持ちを晴らしたくて、なんとなく屋上に向かった。
屋上にくると綺麗な夕焼けが見えた。柵の隙間から夕焼けを見ながら、途中で買った缶コーヒーを飲みながら黄昏れていた。
「君はなにを見ているんだい」
急に後ろから声が聞こえ、振り向くが姿がない。
「そっちじゃなくて、こっちだよ」
声の主は屋上よりも高い場所にいた。
「よっと、それでなにを見てたんだい」
「ただ、夕焼けを見てただけだ」
「そうなんだ。それだけ?」
「それだけだけど、それであんたは俺になにかようか」
「いや、遠くの希望にまだ辿り着けていない、迷える子羊きたなぁって思ってね」
あっ、ダメだ。高橋先生みたいなおかしい方の人だ。
「言っている意味がちょっとわからないんだが」
「そのままの意味なんだけどな。まぁ、用は私が導いてあげようってことだよ」
「ほんとに言っている意味がわからないので、もう帰りますね」
「えぇ、ちょっと待ってよ」
そんな言葉を気にせず、屋上のドアを閉める。
なんなんだ、あの人。絶対関わってはダメな気がする。急いで昇降口に向かったが、あの変な人は昇降口にいた。
「おっ、来たね。さっきぶりだね」
「な、なんで」
「んっ、えっとね。さっさって降りてきただけだよ」
「……」
俺は理解するのを諦めることにした。
「そんなポカンとした顔してないで、帰るんでしょ。私が送って行ってあげよう」
「いや、大丈夫です」
「そんなこと言わないでさ」
俺の袖を掴んで大きな声を上げた。俺はこれ以上目立つのはまずいと思い、好き勝手にさせることにした。
「もう、わかったから。ついてくるなら勝手にすればいいじゃないか」
「許可ももらえたことだし、ついていくね」
そう言って変な人は大人しくなり、あとをついてくる。
「ねぇねぇ、君ってさ。二年生だよね」
「……そうですけど」
「やっぱり、あそこの下駄箱二年生だったような気がしたからね」
「そうですか」
「ちょっとちょっと、冷たくない。もっとさ、私は誰なのかとか、色々聞くことがあるでしょ」
「じゃあ、あなたは誰ですか」
「よくぞ聞いてくれたよ。私は神木すみれ、三年生だよ」
決めポーズを決めながら、自己紹介する彼女を無視して先に進む。
「ねぇ、無視しないでよ」
ため息を吐いた。
「さっきからひどいよ。もうちょっと構ってくれてもいいのにさ」
「十分構ってます」
「構ってないよ。ひとまず後輩君のことを教えてもらおうか」
「こ、後輩君って……やめてください」
「そんな固いこと言わないで、さっ早く教えてよ。教えないとずっと呼ぶからね」
「……前田まことです」
「まこと君かぁ、でも後輩君の方が気に入っちゃった」
「俺が答えても無意味だったじゃないですか」
「無意味じゃないよ。後輩君の名前を知ることができたんだから」
「そうですか。ところでどこまでついてくるんですか」
「ん~どうしようかな。本当はここまでついてくる気はなかったんだけど、気になってついてきちゃったんだよね」
「それなら、帰ったらどうですか」
「ふむ、今日のところはここでお別れといこうかな」
「早く帰ってください」
「もう、配慮が足りないなぁ。まぁ、いいや。また明日ね」
そう言って神木すみれと名乗る三年生はどこかに歩いて行ってしまった。
なんなんだ、あの人は。屋上で夕日を見ていたら、変なこと言われて付き纏われて迷惑だ。希望とか言ってたけどそんなもの思い描いたところでなにになる。仮に希望が実現したとして、その先に待っているのは思い描いていた理想とは程遠い現実がやってくる。そして、絶望が待っているだけだ。そうなるなら、抱かない方がもっとも正しい選択だ。そもそもやりたいことや目的がない時点で俺とは程遠い。
また明日と言っていたが、明日になればどうせ忘れているはずだ。明日も付き纏われては正直俺の身が持たない。
ため息を吐いて、鍵を開けて家の中に入る。
荷物を下ろし、着替えをしてベッドの上に横になった。
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そして、そのまま眠りに入ってしまった。
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