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第28話、平然と魔物としゃべるルーナと、間に入れないクラウス
しおりを挟む「るうなノコトダカラ、キットノウサギヲツカマエニクルトオモッテイタカラ、スコシダケカッテオイタ」
「おお、流石アシュレイ!殺さず気絶しているだけの状態って難しいんだよなぁ……どんな感じにやればいいの?」
「……ニンゲンニハデキナイヤリカタダ」
「え、そうなの?」
「……」
この状況は一体何なのか、説明を求めているクラウスに対し、友人のように魔物に接しているルーナの姿にどのように対応したら良いのかわからない。
固まったままで人間と魔物のやり取りに視線を向けつつ、いつの間にか握りしめていた剣まで放してしまった。
ふと、ルーナと話していた魔物――アシュレイと言われている大蛇はクラウスに再度視線を向け、睨みつけるような視線を送られているのか、殺気がクラウスに襲い掛かる。
とても強い力の殺気だった。
間違いなく、目の前の大蛇を敵にしてしまったら、殺されるのはクラウスなのかもしれない。
冷や汗をかきつつ、急いで警戒をするが、そんなクラウスとアシュレイと呼ばれた魔物のやり取りを見たルーナは大蛇に目を向けた。
「アシュレイ、この人、この前言っていたシリウスが連れてきた騎士の人」
「……モウヒトリ、ツレテキタトキイタ」
「うん。そっちの人はどうでも良いから気にしないで」
「……テキカ?」
「味方だとは思いたくないかな」
あの教会の件以来、ルーナはルフトに対してあまり良い顔をする事はなかった。クラウスはその件についてはどうしてなのかわからない。
しかし、ルーナはクラウスに対しては相変わらずいつものように接してくれている。それだけで心が救われるだなんて、死んでも言えない。
大蛇の魔物は一瞬黙ったような素振りを見せた後、問いかける。
「デハ、ナニカシタラソノソンザイハオレガタベル」
「お腹壊すからやめて」
「ニンゲン、タベルコトデキル」
「うんうんわかったから」
さらっと怖い事を言ったような気がしたが、クラウスは突っ込む事を忘れた。
「るうな」
「ん?」
「――コノオトコハるうなノナンダ?」
首を軽くかしげるようにしながら大蛇はそのように答えると、ルーナは静かに笑みを零しながら、クラウスの腕に触れる。
「クラウス様は友達だから、食べたりしちゃだめだよアシュレイ」
フフっと笑いながら答える幼い姿の少女に、クラウスは目を見開いたと同時に、少しだけ恥ずかしそうにしながら視線を逸らす。
アシュレイと呼ばれたアシュレイは、そんなクラウスの姿を見て何処か面白くなかったのか、嫌そうな顔をしているように見える。
しかし、アシュレイにとってはルーナの言葉は大事らしい。
「……るうなガイウナラ、タベナイ」
「うん、ありがとうアシュレイ」
「ケド、キズツケタラゴメンネ」
「……アシュレイ」
アシュレイはそのように言いながらククっと喉を鳴らしながらクラウスに目を向けており、クラウスも何も言えず青ざめた顔をしている。
「あ……クラウス様、ごめんなさい。驚きましたよね魔物と会話してるの」
「驚きすぎて朝食べたものを吐き出しそうだ」
「まぁ、ここは魔物の巣窟みたいなものですからねぇ……アシュレイは私がこの森に来た時からずっと一緒に居た魔物だったんです。その時はまだこんなにちっちゃかったんですけど、流石魔物ですよね。今はこんなに大きくなっちゃったので」
「……そうか」
既に突っ込む事は諦めているクラウスは目の前の大蛇であるアシュレイを見つめながら、息を静かに飲む。
アシュレイとルーナは普通に会話をしているのだが、彼女は気づいていないのであろうか?
(……まるで兄弟のように育ったのかも、しれないな)
目の前の魔物は間違いなく、『バジリスク』
この世界ではS級の魔物として恐れられている存在だ。
クラウスでさえ、目の前の魔物を倒せるかどうかわからないほど、この大蛇は強い。
大蛇であるアシュレイもわかっているのか、本当の力を隠しながらルーナと接し、クラウスに殺意を持っている。
何故目の敵にされているのか全く理由がわからず、二人のやり取りに目を傾けていると、アシュレイは再度、クラウスに目を向ける。
「……オレノナハあしゅれい……るうなガツケテクレタナマエ」
「あ、ああ……俺はクラウス。クラウス・エーデルハットだ」
「ジャア、くらうすッテヨンデモダイジョウブ?」
「構わない」
「……」
静かに、強い視線で睨まれているような気がしてしまうのは気のせいだろうかとクラウスは考えたのだが、クラウスは今動く事が出来ない。
多分、背を向けてしまったそのまま命を落としてしまうのかもしれないと理解したからである。
アシュレイは静かに、ジッとクラウスに視線を向けながら一言、平然を見せながら呟く。
「ネェ、くらうす」
「ああ、なんだ?」
「――くらうすハコレカラ、ズットるうなノソバニイテクレルノカナ?」
何故、そのような言葉を言ったのか、突然のアシュレイの言葉に、クラウスは目を見開いてアシュレイを見つめた。
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