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疼き

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 就寝前、いつものようにハーブティーを淹れてくれているノアに、今日あったことをかいつまんで話した。特に報告する必要はないのだが、なんとなく毎日その日にあったことを話してしまう。授業の内容とか、ぴよちゃんの日々の成長とか。

「ヴォルフもヴィンセントも、クッキーよろこんでくれてたよ」
「それはよかったです」
「ヴィンセントが、レシピ知りたいって言ってた」
「そうですか。では、後日メモをお渡ししておきます」

 昨日作ったクッキーのレシピは、ノアの父方の祖母から教わったものだと言っていた。ノアはおばあちゃん子エピソードがたくさんあってかわいいのだ。
 ガラスポットの中でふわふわしている茶葉を眺めていたリトは、ずっと気になっていたことを訊いてみることにした。
 
「おれがフェリックスと客間にいるとき、ヴィンセントとなに話してるの?」
「ネイハム様とですか?」

 ネイハムとは、ヴィンセントの姓だ。ここ最近は口淫のレッスンがあるので一緒に客間にいることが多いが、以前のヴィンセントは別の部屋で待機していた。客人として、ノアがもてなしてくれていたはずだ。

「人間界の情勢ですとか、最近読んだ本のお話ですとか……」

 意外とふつうの話をしている。ハーブティーの注がれたカップを、ノアが手渡してくれた。ふーふーしてからひとくち飲む。よもぎのような香りがして、味も好きだった。

「チェスのお相手をすることもありますね」
「そうなんだ」

 この世界にもチェスはある。地球で生まれたものを例によって受信したのか、その逆なのかはわからないが、トランプを使うテーブルゲームもあった。

「口説かれたりしてない?」

 リトが訊くと、ノアは困った顔で笑った。

「たまにありますが、言葉遊びのようなものですよ」

 友達のヴィンセントと己の侍従のノアが仲良くしているのはきっといいことだと思うのに、ふたりがイチャイチャしているところを想像すると胸がモヤモヤする。

(これって、やきもち? ……どっちに?)

 どちらにもだろうか。そもそもふたりともリトのものではないのだから、こんなふうに思うこと自体おかしいのに。

 「失礼いたします」

 いつも通り、隣にノアが腰を下ろす。リトは空になったカップを置いて、ノアを見上げた。今日はやろうと思っていたことがあるのだ。

「おれ、ノアに、ふぇ、フェラチオ、したい!」
「えっ」

 目の前のペリドットが驚きに見開かれる。リトは頬を染めて両拳を握り、言葉を続けた。

「ヴィンセントに習って、けっこうできるようになってきたと思う。今日ヴォルフにもすごく成長してるって褒められたから、だから、」

 ノアの絹手袋に包まれた手を両手で握る。

「ノアのマナ、おれの口の中に出してほしい……」

 お願い、と見上げた先で、ノアは珍しくうろたえた様子で視線をそらした。目元がほんのりと赤くなっている。

「しかし、あるじにそのようなことをさせるわけには……」
「嫌? ノアが嫌なら、あきらめる……」

 時折からだを慰めてもらっているとはいえ、主人のほうから触れられるのはまた別の話なのだろう。いつも気持ちよくしてもらっているお返しをしたいという理由もあるのだが、無理強いはしたくない。

「いえ、決して嫌なわけでは……ええと……そうですね……」

(めちゃくちゃ葛藤してる)

 懊悩する表情で考え込んでいたノアは、やがて意を決した様子で顔を上げた。

「では、わたくしにもご奉仕させてください」




 寝室の大きなベッドの上に、リトは横向きに寝転がっていた。

「失礼いたします」
「ひゃっ」

 手袋を外したノアの指が、夜着の裾をたくし上げて太腿へ触れた。夜着はシャツワンピースのような形なので、めくるとすぐ下着が見えてしまう。

(お、おれも、しなきゃ)

 リトは緊張を呑み込んで、目の前にあるノアのボトムに手をかけた。

 ノアの折衷案は、要するに地球で言うところのシックスナインというやつだった。上に乗るのは恥ずかしいと訴えたら、横向きにしてくれた。

「ご無理はなさらないでくださいね」

 ノアは先程からずっとリトの心配をしている。レッスン中のヴィンセントも過剰なほどリトを気遣ってくれるが、男性器を見たくらいで泣き出すような繊細なタイプにでも見えているのだろうか。

「大丈夫だよ」

 まだフェリックスのものしか咥えたことはないが、なんとなくノアの性器は平気な気がしている。
 先んじて浄化魔法をかけてくれていたそれを、下着の中から引っ張りだす。まだ萎えたままのやわらかな性器より、薄い下生えが髪と同じ淡い若葉色をしていることのほうに目を惹かれてしまった。魔界には様々な髪色の魔族がいるが、ノアの髪は本当にきれいだ。
 無意識に下生えをさわさわとしていたら、ノアのかすかな笑い声が聞こえてきた。

「ふふ、くすぐったいです」
「あ、ごめ、んっ♡」

 不意打ちで性器を握り込まれて、語尾が甘く跳ねた。すりすりと撫でるように扱かれると、すぐに頭をもたげてしまう。

「ん……」
「あ、あっ♡ あ~……っ♡」

 ゆるく勃ち上がった性器の先端を、ぱくりと食まれた。熱くぬかるんだ口の中で育てるようにもごもごとされて、わけがわからないうちに硬くなってしまった。
 そうだろうとは思っていたが、ノアもヴィンセントと同じくとても手慣れている。

(でもおれだって、練習、したもん……っ)

 両手でそっと握ったそれを、いつもノアがしてくれるようにやさしく刺激する。ぎこちないリトの手付きでも、ノアのそこは大きくなってくれた。

(ノアの、きれいな形だな)

 地球にいるときに持っていたディルドのことを思い出して、リトは無意識に唾液を飲み込んでいた。おなかがきゅんとした瞬間にはっとして、どうにか意識を逸らす。

(そっちのこと考えちゃ、だめ)

「んっ、あ♡ あ、あっ♡」

 ぼんやりしているうちに、ノアの口の中へ根元まで咥えられてしまった。リトも負けじと舌を伸ばして、ノアの裏筋を舐め上げる。亀頭のくびれに舌を這わせて、鈴口へ吸い付く。たっぷりと唾液をまぶしたあと、口を開けて亀頭を呑み込んだ。

「ん、」

 ノアが鼻にかかった吐息をもらし、手の中のそれが硬度を増した。感じてくれているのだと思うと、うれしくなってしまう。

「気持ちいいです……お上手ですね」

 言葉でも褒められて、リトは悦びにぞくぞくとふるえながら懸命に舌を使った。リトが口淫に集中できるように、ノアは愛撫をゆるめてくれている。

「っは、リト様……」
「んぅ……♡ んっ、ん♡」

 いまのリトは、最初の頃よりもっと奥のほうまで咥えることができる。少し苦しいのだが、それがなぜか気持ちいいのだ。

(ノアの味、する……♡)

 啜り上げたそれをうっとりと味わいながら、夢中で性器を舐めしゃぶった。正気のときに聞いたら赤面してしまうようなはしたない水音が、ひっきりなしに響いている。

「リト様……出します、よ、」
「ん、ん♡」

 いいよ、と言葉で答える代わりに、リトはぐっと喉を締め付けた。苦しい。気持ちいい。頭の中がふわふわする。

「っ、……っ」
「んんっ♡ っ、~♡」

 ノアがせつなげに息を詰め、リトの口の中で達してくれた。喉へ叩きつけられた熱い飛沫に感じて、足の指にきゅうっと力が入ってしまう。
 甘イキしながら注がれたマナを飲み込んでいるリトの、その無防備な性器を、ノアが再び口に含んだ。

「っん、っ♡ んん……っ♡ っあ、あ、あ♡」

 もはや遠慮のない技巧に、リトは身悶えながら大きな声を上げてしまった。ノアの腕に腰を抱き込まれているせいで、前にも後ろにも逃げられない。

「あーっ♡ だめ、だめっ♡ ちんちんとけちゃう……っ♡」

 感じすぎて、自分がなにを口走っているのかもよくわからない。

「出ちゃうっ♡ い、く、いく、いく、いっ♡」

 腰を抱いているノアの腕にぐっと力が入って、よりいっそう深く咥えこまれた。迎え入れられた喉に締め付けられるまま、リトはがくがくと腰をふるわせて射精した。

「っあ、あ、あー……♡」

 じゅるる、と恥ずかしい音を立てて精液を啜られて、情けない喘ぎ声がたくさん出てしまった。

 ベッドに横たわったまま余韻に惚けているあいだに、いつの間にか下衣を整えられていた。元通りきっちりと執事服を身に纏ったノアが、リトの身体を軽々と抱き上げて枕の位置に寝かせてくれる。丁寧に掛布を肩までかけられてしまった。

「ノア……おれ、ちゃんとできてた?」
「はい。とてもお上手でしたよ」

 やさしい指先に髪を撫でられて、リトはほっとした。
 
「おやすみなさいませ」
「ん……おやすみ」

 寝室の明かりが消えて、ノアが出ていく。
 掛布の下で寝返りを打ち、リトは枕に顔を埋めた。あんなに気持ちよくイかせてもらったばかりなのに、火照った吐息がもれてしまう。

(つらい……)

 ここ数日、『そこ』の疼きが、もう無視できないほど強くなってきていた。

(ずっと、考えないようにしてたのに)

 じくじくと熱を孕んだ下腹を押さえながら、リトはぎゅっと身体をまるめた。



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