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第4の異世界ーはるか遠くの銀河で戦う少年
第89話 スペースコミット開催
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――それから数日が経ち、スペースコミットの開催日当日となる。
「わー大きな会場だなー」
イベントの始まる5時間前にツクナやルカと共に会場へやって来た俺は、スペースコミットが催される建物を見上げて驚愕を声にする。
ビルという建物も大きいが、これは縦にだけではなく横にも大きい。奥行きもたっぷりありそうで、その巨大さに圧倒される。
「ここをすべて使ってその、スペースコミットってイベントをやるのかい?」
「はい。大勢の人が来るので、この大きさでも狭いくらいですよ」
「そ、そうなんだ」
始まるのを待っているのか、すでに並んでいる多くの人たちもいる。
「それじゃああれで全員……じゃないんだね?」
「もちろんです。開場時間が近付けばもっともっとたくさんの人たちが来ますよ」
「それはすごいなぁ」
1000万人くらいは来るんじゃないか。
そんな勢いに思えた。
「けど、俺たち警備で来てるのにこんなゆっくりでいいのかな? もっと早くに来て会場を視察して、警備のやり方を考えたりしたほうがよかったと思うけど?」
「ええ。ですがヘルマイムの防備を手薄にするわけにもいきませんので、一部のナイトは待機とされまして、ゼナイエ様とグライド様、それと我々3人がヘルマイムに残っていたのです」
「言われてみれば、ここのところは他のナイトを見かけなかったような……。というか、5人で大丈夫だったのかな?」
「十分ですよ。最高師範のゼナイエ様にサミオンのツクナ様とグライド様、それとハバンさんがいらっしゃったのですから。ゼナイエ様が言うには、この4人でヨトゥナの戦力半分らしいですよ」
「そ、そう」
ナイトって確か1000人はいるらしいけど、他の996人と4人が同等とゼナイエは考えているのか。他にもサミオンや強いナイトはいるだろうに、ずいぶんと大胆な考察である。
「本当は私も開催日の前に会場へ行くよう命令が下る予定だったのですが、私がハバンさんに鍛錬をつけてもらっていると知ったゼナイエ様が特別に私にも待機を命令してくださったのです」
「ああ、そうだったんだね」
おかげでずいぶんとルカを鍛えることができた。
この場で何事かが起こるとは考えたくないが、仮になにかあったとしても今の彼ならばこれまでよりも十分に戦うことはできるだろう。
「俺たちがこっちへ来てヘルマイムには2人しか残ってないけど大丈夫かな?」
「ゼナイエ様がおりますから、ヘルマイムを心配する必要はありませんよ」
「そっか」
幼くても彼女は最高師範だ。ルカの言う通り心配する必要は無いのだろう。
「じゃあ他のナイトは全員、先にここへ来ていて警備にあたってるってこと?」
「いえ、他にも任務はありますのでさすがに全員ではありませんが、300人のナイトが開催準備の初めからスペースコミットの警備に入っていますよ。他にもアズベルヘイムの軍隊も会場周辺に配備されております」
「へー万全なんだな」
しかしイベントだというのにずいぶんとものものしい。まあ、戦争中に催しなど行うのがそもそも間違っているのだが。
「こんなときでもイベント行うなんて、よっぽどマンガは大切な文化なんだな」
「もちろんです。漫画はアズベルヘイムの……いえ、この宇宙すべてで大切にされるべき文化なのです。オーディアヌ帝国でも、そうあるべきでしょう」
「ん、そうだな」
暗い表情で俯いたルカの横顔を傍目に、俺たちは会場へと入る。
そのまま奥へ進むと、中では大勢の人が忙しく動いている姿が見えた。
「なにをしてるんだろう?」
広い場所に机がたくさん並べられており、その上に書物が平積みで置かれている。
あれは前に書店で見たマンガという書物だろうか?
しかしあのとき手に取った書物よりだいぶ薄い。
「あれは同人誌を売る準備をしているんじゃ」
「同人誌って?」
「個人が執筆から編集発行までを手掛けて作る本のことじゃ。同行の士が集まって雑誌を制作されることから同人誌と呼ばれておるが、ひとりで制作しても同人誌と呼ばれておるな」
「書店で売ってた書物とは違うの?」
「書店で売っているものは出版をする会社が編集と発行を行っている。そういう本は執筆で儲けている人間の本じゃ。ここで売っている本は出版する会社が関わっていない、儲けよりも趣味に重きを置いて個人が作って売っている本じゃな」
「そうなんだ」
マンガにもいろいろあるんだな。
「ん? あれ? そういえばルカ君がいない?」
さっきまで隣を歩いていたルカ君がいなくなっている、
どこへ行ったんだろうと周囲に首を巡らす。と、
「ありがとうございますっ!」
声が聞こえた方向でルカ君が誰かと机越しに握手をしていた。
「わー大きな会場だなー」
イベントの始まる5時間前にツクナやルカと共に会場へやって来た俺は、スペースコミットが催される建物を見上げて驚愕を声にする。
ビルという建物も大きいが、これは縦にだけではなく横にも大きい。奥行きもたっぷりありそうで、その巨大さに圧倒される。
「ここをすべて使ってその、スペースコミットってイベントをやるのかい?」
「はい。大勢の人が来るので、この大きさでも狭いくらいですよ」
「そ、そうなんだ」
始まるのを待っているのか、すでに並んでいる多くの人たちもいる。
「それじゃああれで全員……じゃないんだね?」
「もちろんです。開場時間が近付けばもっともっとたくさんの人たちが来ますよ」
「それはすごいなぁ」
1000万人くらいは来るんじゃないか。
そんな勢いに思えた。
「けど、俺たち警備で来てるのにこんなゆっくりでいいのかな? もっと早くに来て会場を視察して、警備のやり方を考えたりしたほうがよかったと思うけど?」
「ええ。ですがヘルマイムの防備を手薄にするわけにもいきませんので、一部のナイトは待機とされまして、ゼナイエ様とグライド様、それと我々3人がヘルマイムに残っていたのです」
「言われてみれば、ここのところは他のナイトを見かけなかったような……。というか、5人で大丈夫だったのかな?」
「十分ですよ。最高師範のゼナイエ様にサミオンのツクナ様とグライド様、それとハバンさんがいらっしゃったのですから。ゼナイエ様が言うには、この4人でヨトゥナの戦力半分らしいですよ」
「そ、そう」
ナイトって確か1000人はいるらしいけど、他の996人と4人が同等とゼナイエは考えているのか。他にもサミオンや強いナイトはいるだろうに、ずいぶんと大胆な考察である。
「本当は私も開催日の前に会場へ行くよう命令が下る予定だったのですが、私がハバンさんに鍛錬をつけてもらっていると知ったゼナイエ様が特別に私にも待機を命令してくださったのです」
「ああ、そうだったんだね」
おかげでずいぶんとルカを鍛えることができた。
この場で何事かが起こるとは考えたくないが、仮になにかあったとしても今の彼ならばこれまでよりも十分に戦うことはできるだろう。
「俺たちがこっちへ来てヘルマイムには2人しか残ってないけど大丈夫かな?」
「ゼナイエ様がおりますから、ヘルマイムを心配する必要はありませんよ」
「そっか」
幼くても彼女は最高師範だ。ルカの言う通り心配する必要は無いのだろう。
「じゃあ他のナイトは全員、先にここへ来ていて警備にあたってるってこと?」
「いえ、他にも任務はありますのでさすがに全員ではありませんが、300人のナイトが開催準備の初めからスペースコミットの警備に入っていますよ。他にもアズベルヘイムの軍隊も会場周辺に配備されております」
「へー万全なんだな」
しかしイベントだというのにずいぶんとものものしい。まあ、戦争中に催しなど行うのがそもそも間違っているのだが。
「こんなときでもイベント行うなんて、よっぽどマンガは大切な文化なんだな」
「もちろんです。漫画はアズベルヘイムの……いえ、この宇宙すべてで大切にされるべき文化なのです。オーディアヌ帝国でも、そうあるべきでしょう」
「ん、そうだな」
暗い表情で俯いたルカの横顔を傍目に、俺たちは会場へと入る。
そのまま奥へ進むと、中では大勢の人が忙しく動いている姿が見えた。
「なにをしてるんだろう?」
広い場所に机がたくさん並べられており、その上に書物が平積みで置かれている。
あれは前に書店で見たマンガという書物だろうか?
しかしあのとき手に取った書物よりだいぶ薄い。
「あれは同人誌を売る準備をしているんじゃ」
「同人誌って?」
「個人が執筆から編集発行までを手掛けて作る本のことじゃ。同行の士が集まって雑誌を制作されることから同人誌と呼ばれておるが、ひとりで制作しても同人誌と呼ばれておるな」
「書店で売ってた書物とは違うの?」
「書店で売っているものは出版をする会社が編集と発行を行っている。そういう本は執筆で儲けている人間の本じゃ。ここで売っている本は出版する会社が関わっていない、儲けよりも趣味に重きを置いて個人が作って売っている本じゃな」
「そうなんだ」
マンガにもいろいろあるんだな。
「ん? あれ? そういえばルカ君がいない?」
さっきまで隣を歩いていたルカ君がいなくなっている、
どこへ行ったんだろうと周囲に首を巡らす。と、
「ありがとうございますっ!」
声が聞こえた方向でルカ君が誰かと机越しに握手をしていた。
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