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第4の異世界ーはるか遠くの銀河で戦う少年

第66話 ヨトゥナの名門サーミット家の女

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 デュロリアンで下の町に降りた俺たち3人は、とりあえず食事でもと手近な飲食店へと入る。町の光景が珍しい俺は、料理そっちのけで窓から外を眺めていた。

「ここは俺の生まれた世界には無いものがたくさんあってすごいなー」

 人間の形をした機械が歩いていたり、毛むくじゃらの生き物が歩いていたりする。まるで夢でも見ているような世界だった。

「そうなんですか? そんなに珍しいものはないと思うんですが」
「あ、そ、そう? ははっ……まあ俺はその、田舎で生まれ育ったから」

 怪訝そうなルカの顔を見て、俺は慌てて言い繕う。

「ふむ。それよりもルカよ」

 食事を終え、コーヒーをすすって一息ついたツクナがルカへと目をやる。

「相談もせず、お前を使役するなどと決めてすまなかったの」
「いえ。しかし私などで偉大なサミオン様のお役に立てるかどうか……」
「役には立つ。ツクナたちの目的は、お前の不幸な人生を修正してやることじゃからの」
「あ、それはハバンさんにも聞きましたけど、どういう意味なんですか? なぜサミオン様が一介のナイトである私のことなどを?」
「一介のナイトか」

 ツクナはなにか含んだように微笑む。

「お前には目的がある。そうじゃろう?」
「えっ? あ、そ、それは……」
「ツクナたちはその目的が達成されるのを手伝ってやろうというのじゃ。それがお前の不幸な人生を修正することにつながるからのう」
「偉大なサミオン、もしやあなたは……」
「なにも話さんでいい。ここでするような話でもないじゃろうしの」
「は、はい」

 やや焦ったような表情で頷くルカ。

 彼の目的はオーディアヌ帝国の皇帝を倒すことだったか。
 それは聞いたが、しかしここで話すようなことではないというツクナの言葉と、焦るルカには違和感を感じた。

「偉大なサミオン、どうやらあなたにはすべてお見通しのようですね。やはりあなたは予言のお方なのかもしれません」
「予言?」
「はい。ヨトゥナには初代最高師範ドゥアン・セットカラン様が残された『幼き女、思考深き者により闇のナイトは払われ、ヨトゥナと宇宙に平穏をもたらす』という予言がありまして、私はそれがツクナ様ではないかと考えているのです」
「幼き女、思考が深い……」

 確かにそれはツクナに当てはまるが、

「うんでも、それならゼナイエ様もそうじゃないの?」
「ゼナイエ様は……ご自分でもおっしゃられていたのですが、予言の者ではないと」
「そうなの?」
「はい」
「ヨトゥナは今、あやつの存在が原因で分裂しかかっておる。恐らく、あやつもツクナが予言の者だと思ったから、サミオンのクラスを与えたのじゃろう」
「なるほど」

 いくらツクナの力が優れていることを知ったからといって、いきなりナイトの最高位を与えるのは妙だとは少し思ったが、理由を知って納得できた。

「けどその、ゼナイエが原因でヨトゥナが分裂しかかっているってどういうこと?」
「あ、はい。その、分裂の原因は……」

 と、ルカが話そうとしたとき、なにかに気付いたかのように彼の視線は店の入口へと向く。

「うん?」

 俺もそちらへ目をやると、なにやら女性の集団が入って来ていたのが見えた。

「あ、あれ、ペイナー様だ」
「えっ? ほ、本物? あれがペイナー・サーミット様……」

 店内の客たちがざわざと騒がしくなる。

 集団は10人くらいで、格好からして彼らはナイトだろう。
 先頭を歩く背の高い金髪の若い女が目立っており、彼女が集団のリーダーであろうと俺はなんとなく思った。

「知り合い? あの背が高い人?」

 背が高いと言っても女性にしてはなので、俺よりはだいぶ低い。

「ええ。あの方はサミオンのペイナー・サーミット様です」
「へー。偉いんだ」
「はい。ペイナー様はナイトの名門サーミット家のご当主で、祖父母も父母もサミオンというエリートの出自なんです。それゆえヨトゥナでも強い影響力を持っておられる上、外見も美しく、社交的な方なので、あのようにナイトや民衆にも人気が高いのです」
「ふーん」

 店内の客たちが好意的にペイナーについて話していることからして、民衆に人気があるというのは事実のようだ。

 長い金髪を後頭部で束ねたその女性、ペイナー・サーミットは笑顔のように目が細く、高貴な雰囲気のある美麗な顔で周囲のナイトと会話をしていた。

「女性に人気があるんだな」
「そうですね。ペイナー様は背が高いですし、男性的な美しさをお持ちの方ですから」

 確かに張り出した胸が無ければ男性に見えなくもない。

「彼女、良い人そうだけど……君はあまり良く思っていないみたいだね」
「えっ?」
「彼女のことを話す君の表情が暗いからなんとなくそう思ったんだけど、違ったかな?」
「いえ……」

 なにやら事情がありそうだ。

 俺がそれを聞こうと思ったとき、

「おや? ルカ君じゃないか」

 こちらに気付いたらしいペイナーが集団を連れてこちらへ来て声をかけてきた。
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