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第3の異世界ー死にたい魔王

第46話 勝ったけど嬉しくない

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 ツクナが言うなら、ソシアを水面に落とす方法は必ずある。

 考えろ。一体どうすればいい?

「でたらめ。そんな方法があるわけないじゃんっ」

 高速で移動してきたソシアの拳を右腕で……

「おあっ!?」

 受け止めるも、さっきより強い力で殴打されて身体が後方へ激しくあとずさっていく。

「ま、まずいっ!」

 足場から落ちるっ!?

 焦る俺だが、ぎりぎりのところで足は止まって水面への落下は免れた。

「あぶなかった……」

 もう少し身体が軽ければ足場の外まであとずさって水面に落下していただろう。身体を鍛えて体重を増やしていたことが功を奏したようだ。

「うん。慣れてきて一瞬でもかなり強い身体強化ができるようになったよ。次はそのやたら頑丈な腕ごとぶっ飛ばすからね」
「くっ……」

 今のはなんとか耐えられたが、次はわからない。

 どうする? どうすればいい?

 横目でツクナのほうに目をやると、彼女はさり気なく手首の腕輪に触れた。

 腕輪……? あ……そ、そうかっ! そういうことかっ!

 ツクナの言った「方法」に気付いた俺だが、しかし簡単ではないため、それを実行するにはどうしたらいいか考えを巡らせる。

「さて、次で終わりになるけど、どうする? わたくしの男になるなら助けてあげてもいいけど?」
「ふっ、助けてもらいたいために、考えを変えるような安い男をお前はほしいと思うのか?」
「……さすがはハバン様」

 少し寂しそうに笑ったソシアが、高速の足で接近をしてくる。

「これで終わりだよっ! ハバン様っ!」

 向かってくる拳。先ほどよりも鋭く、速さは増していたが、

「あれ?」

 顔面へくるとわかっていた俺は、寸前で腰を落としてぎりぎりかわす。そして、

「うわっとっ!?」

 ソシアの腹へ抱きつき、足場の端まで押し込んでいく。

「あははっ! ここからわたくしを投げて落とすの?」
「だったらどうする?」

 と、俺はソシアの身体を持ち上げて足場の外へと投げ飛ばす。しかし彼女の身体が水へ落ちることはなく、水面の上で仰向けに止まっていた。

「ハバン様って、わたくしが考えていたより頭が悪い? こうするに決まってるじゃん」
「だろうな。けれどこれで終わりだ」

 魔法を無効化する腕輪をはずしていた俺は、それをソシアの胸へと投げつけた。

「えっ? ちょっ!?」

 腕輪は彼女の大きな胸の谷間へと沈む。と

「うあっ!? こんな……」

 飛行の魔法を無効化されたソシアの身体が水中へ落ちた。
 瞬間、水面は元の色に戻る。そこにソシアの姿はなかった。

 どこか別の異世界に飛ばされたのか?
 ツクナの言う通りならば、そうなのだろう。

 大切な幼馴染が沈んで消えた水面を凝視しつつ、俺は大きく息を吐く。

「ソシア……」

 勝ちはしたが、嬉しいという気持ちはない。なんとも虚しく、心が痛かった。
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