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第3の異世界ー死にたい魔王
第31話 もうひとつの才能
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「おっと」
上体を反らすと、寸前の虚空を白刃が縦に通り過ぎた。
「ちっ、避けやがったか」
「偶然だよ」
そう言って俺は後方へ跳び退る。
本当に偶然だ。目にはまったく見えず、勘で避けたに過ぎない。
この男は品が無い上に悪い奴だけど、剣の腕前は本物だ。恐らく、イケメン高身長、引き締まった肉体という外見が、剣の才能を引き出しているんだろう。
剣では勝てない。しかし俺にも才能はある。それを使って勝つ。
「うん?」
俺は剣を振り上げ、デムーロニーの動きを注視する。
「なにをする気だ? ふん。まあ、なにをしたって俺には勝てないだろうがなっ!」
ふたたびデムーロニーが動く。
しかし今度は消えない。しっかりと奴の動きが見えていた。
「それはどうかな?」
まるで時間がゆっくりと流れるようにデムーロニーがこちらへ向かって来る。
俺はしっかりとデムーロニーの動きを捉え、
「えいっ!」
剣を投げた。
「んがっ!?」
額に柄頭が当たって仰け反ったデムーロニーの身体が勢いよく転がり回って部屋の壁に激突する。
「うん。うまく当てられた」
ちょっと不安だったけど、思い通りに当てられてよかったと胸をなでおろす。
「やったーっ! ハバンさんの勝ちだーっ!」
「おっと」
走り寄ってきたきたリュアンを抱き止める。
「まあ、わたしは勝つってわかってましたけどー」
「結構、あぶなかったけどね」
最初の一撃を受けていたらたぶん死んでいたか大怪我を負っていた。
「うむ。よくやったぞハバン」
「ツクナ」
「けれどよくあんな素早い動きを捉えて剣をぶつけることができましたね? 魔法ならどうとでもできますけど、あんな素早く動く人に剣をぶつけるなんてすごく難しいですよ」
「あ、うん。それは俺もちょっと驚いてる」
デムーロニーの動きは信じられないほど素早く、最初はまったく捉えることができなかった。しかし剣を投げの体勢で構えた瞬間、奴の動きがゆっくりとしたものになったのだ。
「ツクナが言うには、俺には射撃、それと投擲の才能があるから、剣を投げ武器として使用すれば、勝つことができるって。だから奴の動きが遅く見えたのかな」
「そ、そうなんですかー?」
「うむ。奴には剣の才能があった。ハバンの持つ投擲の才能がそれを上回ったのは、優れた外見がその才能を引き出したからじゃろう。外見が劣っているか同じ程度であったならば、恐らく負けておった」
「な、なるほどー。つまりハバンさんのほうが男として容姿が優れてるから勝てたってことかー」
「そういうことじゃな」
別に奴より容姿が優れているなんて俺は思っていない。思っていないけど、ツクナが言うならそうなんだろうと納得をした。
「それよりデムーロニーはちゃんと約束を守ってくれるかな?」
素直に約束を守るような男には思えないのだが。
「だ、大丈夫デニー?」
仲間の女たちが倒れているデムーロニーのもとへ集まっている。
「やっば、これ死んでるんじゃない?」
「あ、大丈夫ですわ。呼吸してますもの」
そんな会話が聞こえる中、俺たちもデムーロニーの側へと行く。
「平気? 怪我はどう?」
「あ、大丈夫大丈夫っ。こいつ勇者で丈夫だから」
と言って、仲間の女はデムーロニーの額をぺちぺち叩く。
まあ実際、呼吸をしているから平気だとは思う。
「う、ううん……」
「あ、起きそうじゃぞ」
呻きつつ、デムーロニーは薄っすらと目を開いた。
いきなり飛びかかってきたりしないだろうか?
ちょっと警戒する。
上体を反らすと、寸前の虚空を白刃が縦に通り過ぎた。
「ちっ、避けやがったか」
「偶然だよ」
そう言って俺は後方へ跳び退る。
本当に偶然だ。目にはまったく見えず、勘で避けたに過ぎない。
この男は品が無い上に悪い奴だけど、剣の腕前は本物だ。恐らく、イケメン高身長、引き締まった肉体という外見が、剣の才能を引き出しているんだろう。
剣では勝てない。しかし俺にも才能はある。それを使って勝つ。
「うん?」
俺は剣を振り上げ、デムーロニーの動きを注視する。
「なにをする気だ? ふん。まあ、なにをしたって俺には勝てないだろうがなっ!」
ふたたびデムーロニーが動く。
しかし今度は消えない。しっかりと奴の動きが見えていた。
「それはどうかな?」
まるで時間がゆっくりと流れるようにデムーロニーがこちらへ向かって来る。
俺はしっかりとデムーロニーの動きを捉え、
「えいっ!」
剣を投げた。
「んがっ!?」
額に柄頭が当たって仰け反ったデムーロニーの身体が勢いよく転がり回って部屋の壁に激突する。
「うん。うまく当てられた」
ちょっと不安だったけど、思い通りに当てられてよかったと胸をなでおろす。
「やったーっ! ハバンさんの勝ちだーっ!」
「おっと」
走り寄ってきたきたリュアンを抱き止める。
「まあ、わたしは勝つってわかってましたけどー」
「結構、あぶなかったけどね」
最初の一撃を受けていたらたぶん死んでいたか大怪我を負っていた。
「うむ。よくやったぞハバン」
「ツクナ」
「けれどよくあんな素早い動きを捉えて剣をぶつけることができましたね? 魔法ならどうとでもできますけど、あんな素早く動く人に剣をぶつけるなんてすごく難しいですよ」
「あ、うん。それは俺もちょっと驚いてる」
デムーロニーの動きは信じられないほど素早く、最初はまったく捉えることができなかった。しかし剣を投げの体勢で構えた瞬間、奴の動きがゆっくりとしたものになったのだ。
「ツクナが言うには、俺には射撃、それと投擲の才能があるから、剣を投げ武器として使用すれば、勝つことができるって。だから奴の動きが遅く見えたのかな」
「そ、そうなんですかー?」
「うむ。奴には剣の才能があった。ハバンの持つ投擲の才能がそれを上回ったのは、優れた外見がその才能を引き出したからじゃろう。外見が劣っているか同じ程度であったならば、恐らく負けておった」
「な、なるほどー。つまりハバンさんのほうが男として容姿が優れてるから勝てたってことかー」
「そういうことじゃな」
別に奴より容姿が優れているなんて俺は思っていない。思っていないけど、ツクナが言うならそうなんだろうと納得をした。
「それよりデムーロニーはちゃんと約束を守ってくれるかな?」
素直に約束を守るような男には思えないのだが。
「だ、大丈夫デニー?」
仲間の女たちが倒れているデムーロニーのもとへ集まっている。
「やっば、これ死んでるんじゃない?」
「あ、大丈夫ですわ。呼吸してますもの」
そんな会話が聞こえる中、俺たちもデムーロニーの側へと行く。
「平気? 怪我はどう?」
「あ、大丈夫大丈夫っ。こいつ勇者で丈夫だから」
と言って、仲間の女はデムーロニーの額をぺちぺち叩く。
まあ実際、呼吸をしているから平気だとは思う。
「う、ううん……」
「あ、起きそうじゃぞ」
呻きつつ、デムーロニーは薄っすらと目を開いた。
いきなり飛びかかってきたりしないだろうか?
ちょっと警戒する。
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